『元国税局芸人が教える わかる、得する!超やさしい税金の教科書』より一部抜粋
(本記事は、さんきゅう倉田氏の著書『元国税局芸人が教える わかる、得する!超やさしい税金の教科書』=Gakken、2023年6月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
目次
❖「年収103万円の壁」ということばを聞いたことがあると思います。これは、配偶者控除にもかかわっています。
配偶者控除と配偶者特別控除は、配偶者の収入が一定金額以下のときに所得控除が受けることができる制度です。
「配偶者を養う行為が税を負担する能力を減らしてしまう」という考え方から、納税者の負担を調整するために設けられました。
配偶者控除には、次の要件があります。
①納税者本人と生計を一にしていること
生活費や学費、医療費などを納税者と配偶者が共有している状態です。単身赴任などでも仕送りなどがあれば「生計を一にしていること」になります。
②その年の12月31日時点で婚姻関係にあること
事実婚や内縁関係など戸籍上の夫婦でない場合は適用外です。
③配偶者の合計所得が48万円以下であること
パートやアルバイトなどの収入だけの場合は、年収103万円(基礎控除48万円+給与所得控除55万円)以下になります。
④納税者本人の合計所得が1000万円以下であること
平成29(2017)年度の税制改正により、世帯主に所得制限が設けられました。
納税者本人の合計所得額が900万円を超えると配偶者控除の金額は段階的に減り、合計所得金額が1000万円を超えると配偶者控除が受けられなくなったのです。
節税という観点では、世帯主の合計所得金額が900万円を超えると徐々に節税のうま味が薄くなり、パート収入などを103万円以内に調整して働く意味がなくなりました。
夫が外で働いてお金を稼ぎ、妻が専業主婦として家庭を守る生活が主流だった時代には、配偶者控除はとてもありがたい税制でした。
しかし、男女平等でともに働きながら家庭を築くスタイルが主流になってきたいまでは、「配偶者控除は時代にそぐわない」という声も聞かれ、将来的にどうなるのかその動向が気になります。
配偶者に48万円を超える所得があるため配偶者控除の適用を受けることができない場合でも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除を受けることができる可能性があります。この制度が「配偶者特別控除」です。
配偶者控除と配偶者特別控除のどちらを受けるかは、配偶者の所得金額によって自動的に決まります。
そのため、自分でどちらかを選んだり、両方の控除を受けたりすることはできません。
配偶者控除が適用されるのは配偶者の所得が48万円以下ですが、配偶者特別控除は配偶者の1年間の合計所得額が48万円超133万円以下の場合になります。
<著者プロフィール>
さんきゅう倉田
芸人。ファイナンシャルプランナー。1985 年神奈川県生まれ。
大学卒業後、国税専門官採用試験を受けて東京国税局に入局。同局退職後、吉本興業の養成
所 NSC に入学し、芸人となる。X(旧 Twitter)などで発信した税やお金の情報が話題とな
り、執筆や講演等の仕事を増やす。以来、芸人として活動しながら、現在は税理士会、法人
会などでの講演に加え、『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』『ダイヤモンド・オンライ
ン』『プレジデント・オンライン』『マイナビニュース』『税と経営』などでも税や経済につ
いての記事を執筆、好評を得ている。
2023 年東京大学文科二類に合格し、東京大学に在学中。
著書に『元国税局芸人が教える わかる、得する!超やさしい税金の教科書』(Gakken)の
ほか、『元国税職員のお笑い芸人がこっそり教える 世界一やさしいお金の貯め方増やし方
たった 22 の黄金ルール』(東洋経済新報社)、『元国税芸人が教える! フリーランスで生き
ていくために絶対知っておきたいお金と税金の話』(あさ出版)、『お金リテラシー超入門だ
まされて大損しないために! 15 歳から知っておきたい』(主婦と生活社)などがある。
『元国税局芸人が教える わかる、得する!超やさしい税金の教科書』