キャリアアップを図るうえで、何かと有利に働くのが学位や資格ではないでしょうか。春、新たな目標にチャレンジしたいという意欲が高まりやすいこの時期には、それらの取得を検討している人が増えているかもしれません。
そして、数ある学位や資格の中でも、ビジネスパーソンの間で注目されるのがMBAではないでしょうか。このMBAについて、取得に要する歳月や費用と、取得後の収入などのリターン、国内で取得する方法などについて紹介します。
目次
海外に留学しなくても、国内でMBAを取得できる時代
MBA(Master of Business Administration)の略で、日本では「経営学修士」と呼ばれており、経営学の大学院修士課程を修了すると授与される学位です。MBAのベースを確立したのは、1908年に設立されたハーバード・ビジネス・スクールだと言われています。
広く海外においても通用するMBAは、国際認証機関からお墨付き(認証)を得ているものに限られます。そして、世界的に名高い国際認証機関としては、米国のビジネススクールが中心となって発足したAACSB(The Association to Advance Collegiate Schools of Business)、英国に拠点を構えるAMBA(The Association of MBAs)、欧州経営開発財団が運営するEQUIS(The European Foundation for Management Development)の3つが挙げられます。
これら3つのすべてから認証を得ているビジネススクールはTriple Crown accreditation(トリプル校)と呼ばれており、まさに世界有数の名門校だと言えるでしょう。グローバルに高く評価される研究活動を行っているビジネススクールでなければ、こうした国際認証を得ることは困難であると言われています。
かつてMBAは、海外のビジネススクールに留学して取得するというのが主流のパターンでした。しかし、2000年代を迎えてから国内のビジネススクールでMBAの取得をめざす人が増えており、いまではさほど珍しいことではなくなってきています。
日本や米国のビジネススクールでは、MBAの取得には2年間を要するというのがスタンダードです。これに対し、欧州では1年〜1年半と、若干短期間で取得できるようです。
MBAの取得で、2,000万円以上も収入がアップした人も
MBAの取得は典型的な“自己投資”ですが、その成果としてどの程度のリターンを期待できるのでしょうか。AACSBとAMBAから国際認証を得ている名古屋商科大学ビジネススクールが、学位プログラム卒業生の追跡調査(卒後3年間)を行ったところ80%が昇格しており、5%が2,000万円以上の給与上昇、25%が300万円以上の給与上昇、これらを含む全体の80%が最低100万円の給与上昇となったそうです。
その評価基準に縛られたくないとの意図から、あえて国際認証を受けていないグロービス経営大学院が、2017年3月までの卒業生を2018年4〜5月に調査したところ、90.3%がMBA取得で社会人としてのキャリアに「ポジティブな変化を経験した」と回答していたそうです。
回答の内訳での最多は「年収が増加した」で、取得後の年収は平均で28%の上昇を示し、卒業から10年以上経過すると72%を超える増加となったとされています。回答者の83.9%がコストに見合ったリターンを得られていると実感しているようです。
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国内でMBAを取得できる主なビジネススクールは?
あらためて説明すると、一般的にビジネススクールと呼ばれているのは、MBAの取得プログラムを提供している大学院です。国内では先述した2校以外にも、様々なビジネススクールがそれぞれの強みを発揮しながら学位取得をサポートしています。
例えば、早稲田ビジネススクール(早稲田大学大学院経営管理研究科)はAACSBとEQUISから国際認証を得ており、単なるMBAの取得だけにとどまらず、国際的に活躍できる人材を育成する「全日制グローバル(2年間)」といった独自のプログラムに特色があります。そのカリキュラムに引かれて、起業家やファミリービジネスの承継者が数多く集ってくることでも知られています。
また大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学は、オーストラリアの名門私立大であるBONDとパートナーシップを結び、BOND-BBT MBAというプログラムをオンラインで学べる環境を提供しています。同プログラムは2001年の開設以来、1,000名を超える修了生を輩出し、AACSBとEQUISから国際認証を取得しています。
MBAの取得にはどの程度の費用がかかる?
先述したように大きなリターンも期待できそうなMBAですが、その取得にはどの程度の費用がかかるのでしょうか。ビジネススクールによって授業料などの設定に違いがあり、安いケースで百数十万円の負担ですが、高いケースでは数百万円に上っており、学費のみでみると、海外で取得する場合以上の費用に達するものもあります。
こうしたMBAの取得に関して、勤務先が資金的な援助を行ってくれれば、それに越したことはないでしょう。とはいえ、自費であっても将来的に大きなリターンとなって戻ってくる可能性は高そうです。
すぐにアクションを起こすのは予算的に難しいとしても、まずは来年、再来年に向けて貯蓄や運用に励み、学費の準備から始めてみてはいかがでしょうか。