投資信託は何パーセント値動きで売り時?利益確定と損切りラインを考えよう

金融商品によって売り時の目安は変わりますが、投資信託は何パーセントが売り時になるのでしょうか。投資信託で資産運用する場合は、利益確定や損切りのラインを考えることが大切です。実際にはどのような基準があるのか、売り時の考え方を解説していきます。

投資信託が何パーセント値動きすると売り時になる?

投資信託の売り時は、投資している金額や目標、保有している銘柄などによって変わります。一概に言うことはできませんが、値動きを基準とする場合はどのような考え方があるのでしょうか。

マイルールで売り時を決めておく

1つ目は、「資産が〇〇パーセントまで増えたら売却」のように、明確なマイルールを決めておく考え方です。たとえば、20パーセントの値動きを基準とする場合は、投資金額に合わせて以下のように売り時を判断します。

投資金額 利益確定の目安 損切りの目安
100万円 資産が120万円 資産が80万円
200万円 資産が240万円 資産が160万円
300万円 資産が360万円 資産が240万円
400万円 資産が480万円 資産が320万円
500万円 資産が600万円 資産が400万円

上記のような基準があれば、予測が難しい相場状況でも慌てずに取引ができます。

リスク許容度から逆算して売り時を考える

想定していた以上に損失が膨らむと、日々の値動きに不安を感じたり、日常生活に支障がでたりする可能性があります。そのため、投資信託の売り時は「リスク許容度」を意識することも大切です。

リスク許容度とは、「どれくらいの損失なら許容できるか」を数値化したものです。リスク許容度にも様々な考え方がありますが、一般的には以下の要素から判断します。

<1.年齢>
現在の年齢によって、投資信託を運用できる期間やこれから得られる収入は異なります。年齢が若い人は運用期間が長く、今後の収入によって損失をカバーできる可能性があるため、リスクをとりやすい傾向があります。

<2.投資経験>
資産運用の知識や経験がない人は、リスク許容度を下げることが望ましいでしょう。一方で、損失を最小限に抑える運用方法を知っていれば、リスクを正確に把握した上で、大きいリターンが期待できる投資をやってもいいかもしれません。

<3.年収や保有資産>
年収や保有資産が多い人は、資産運用で多少の損失が発生しても生活に支障がないかもしれません。一方で、家計状況に余裕がない場合は、日常生活への影響を防ぐためにリスク許容度を下げることが大切です。

<4.将来の支出>
将来的に大きな支出(マイホームや自動車など)を予定している人は、購入資金を失わない範囲で投資をすることが大切です。また、「子どもが何人いるか」「介護が必要な身内はいないか」などの家族構成も、将来の支出に関わるポイントです。

<5.性格>
家計状況や損失幅が同じであっても、人によって捉え方は異なります。損失に対して大きなストレスや焦りを感じる人は、日常生活への影響を防ぐためにリスク許容度を下げましょう。

上記の要素をひとつずつ深掘りすると、「いくらまでの損失なら耐えられるか」が明確になります。許容できる損失幅が分かったら、その金額をもとに売り時を判断してみてください。

基準価額が何パーセント値動きするか計算してみる

投資経験が長い人であっても、投資信託の基準価額を正確に予測することはできません。「標準偏差」と呼ばれる指標を使うと、おおよその値幅を計算できると言われています。

標準偏差とは、値動きのばらつきを表した指標です。1年間の平均リターンを5パーセントとした場合、おおよその値幅は以下のように計算できます。

1年間の平均リターン+標準偏差=値動きのプラス幅
1年間の平均リターン-標準偏差=値動きのマイナス幅

標準偏差 プラス値幅 マイナス値幅
10% +15% +5%
20% +25% -15%
30% +35% -25%

たとえば、実際の基準価額が「値動きのプラス幅」に達したタイミングを売り時にすると、高値で売却できる可能性があります。ただし、標準偏差は過去の運用状況によって変動するため、特定期間における値幅を保証するものではありません。

目標の利益額に到達したら売る

「資産が150パーセント増えたら売る」「3,000万円に達したら売る」のように、目標金額を基準にする方法もひとつの選択肢です。必要な生活資金などが貯まったら、無理にリスクを負う必要はありません。投資の目的を明確にした上で、最終目標となる利益額を計算してみましょう。

PERやPBRなどを基準に売り時を考える

主要な株価指数に連動する投資信託では、PERやPBRから売り時を判断できます。たとえば、ベンチマークとしてよく使われている日経平均株価はPERやPBRが算出されています。

<PER(株価収益率)>
「株価÷1株あたりの純利益」で計算される指標です。純利益に対する株価の割安度を表しており、PERが高い銘柄は割高と判断されます。

<PBR(株価純資産倍率)>
「株価÷1株あたりの純資産」で計算される指標です。純資産に対する株価の割安度を表しており、PBRが高い銘柄は割高と判断されます。

構成銘柄のPERやPBRが比較的高いときは、本当に割高で今後値上がり余地がないのか、分析する必要があります。また、PERやPBRの傾向は会社規模や業界、地域によって異なるため、目安となるデータは事前に確認しておきましょう。

類似のファンドの状況を調べる

投資信託の判断材料となるデータ(標準偏差など)の多くは、過去の実績をもとに計算されます。そのため、運用開始から十分な年月が経っていない場合は、情報収集や分析が難しいこともあります。

このような投資信託については、類似のファンドを参考に売り時を判断しましょう。たとえば、日経平均株価に連動するファンドを見つけた場合は、同じく日経平均株価をベンチマーク(※)とするファンドの情報を確認すると、値動きの幅などを予測しやすくなります。

(※)投資信託などの金融商品が、運用の目安や指標としている指数のこと。

値動き以外で投資信託の売り時を決める要素3選

「何パーセントの値動き」以外にも、投資信託の売り時を判断する基準はいくつかあります。以下では代表的なものに絞って、売り時を決める3つの要素をご紹介します。

ポートフォリオの資産構成比率を整えるとき

ポートフォリオとは、具体的な投資先の配分比率を表したものです。ご自身のポートフォリオを把握すると、「どの資産を多く保有しているか」が可視化されるため、今後の運用方針を考えやすくなります。

<ポートフォリオの例>
【1】国内株式50%、外国株式50%
【2】国内債権30%、外国債券70%
【3】国内株式20%、外国株式50%、国内債券30%

ポートフォリオの資産構成比率を整えるには、新たに金融商品を購入するか、保有している銘柄を売却する必要があります。たとえば、上記【1】の例で外国株式を売却すると、その量に応じて国内株式の配分比率が増えます。

投資の目的やリスク許容度などから適切なポートフォリオを作成し、そのポートフォリオから大きく外れた場合は、構成比率が高い銘柄の売却を考えましょう。

保有中のファンドへの投資する理由がなくなったとき

ご自身の状況や経済動向などの変化により、保有中のファンドに投資する理由がなくなることもあります。実際にどのようなケースがあるのか、いくつか例をご紹介します。

<投資する理由がなくなる例>
・ライフプランの変更に伴って、投資の目標金額が下がった
・相場状況が変わり、中長期的な値上がりを期待できなくなった
・大きく値下がりしたことで、保有を続けても目標達成が難しくなった

投資する理由がなくなった場合は、無理に保有を続ける必要はありません。売却した資金を生活費の足しにしたり、別の金融商品を購入したりなど、状況に合わせて保有資産の利用方法を変えていきましょう。

保有中のファンドよりも魅力的なものが見つかったとき

より魅力的なファンドが見つかったときも、投資信託の売り時を考えるタイミングです。たとえば、保有中のものより今後の値上がりを期待できるファンドや、類似のポートフォリオを持つコストが比較的安いファンドなどが見つかったときに売り時を検討してみましょう。

利益確定と損切りの考え方の違い

利益がある場合と損失を抱えている場合とでは、売り時の考え方が異なります。「何パーセント」という基準だけで投資信託の売り時を判断すると、計画通りの運用が難しくなるかもしれません。

ここからは「利益確定」と「損切り(※)」に分けて、売り時の考え方をご紹介します。

(※)損失を抱えている状態で、保有中の金融商品を売却すること。

利益確定の場合

利益確定の場合は、「これ以上の値上がりを期待できるか」を考えましょう。

基準価額が大幅に上がっても、同じ状況がそのまま続くとは限りません。たとえば、PERやPBRから割高と判断できる場合は、値下がりに転じることも考えられます。

このようなケースでは、保有中の投資信託を売却し、ほかのファンドに投資した方が相対的にリターンを期待できる可能性があります。全ての保有銘柄を売ることに不安を感じる場合は、一部を利益確定させることも検討してみましょう。

損切りの場合

損切りの場合は、「今後も下落が続くか」に目を向けることが大切です。

しばらく下落が続くと予想した場合は、ほかの投資先に切り替えることでリターンを期待できる可能性があります。また、信託報酬の安いファンドを選び、日々の保有コストを減らす選択肢もあるでしょう。

一方で、PERやPBRが割安で今後値上がり余地があると判断できたときなど、保有を続けることが望ましいケースもあります。慌てて損切りをするのではなく、まずはほかの金融商品も含めて情報収集や分析に取り組みましょう。

投資信託を売却するときの注意点

投資信託の売却方法を誤ると、余計なコストがかかったり、望んだタイミングで売却できなかったりする場合があります。ここからは、投資信託を売却するときの注意点をご紹介します。

売却益には税金がかかる

通常、投資信託の売却益には20.315%の税金(所得税や住民税など)がかかります。仮に1年間で50万円の利益を受けとった場合は、10万1,575円(50万円×20.315%)の税金を納めなければなりません。

また、以下のいずれのケースにも該当する人は、翌年3月に確定申告を行うことが必要です。

  • 源泉徴収なしの特定口座を利用している
  • 投資信託の売却益を含めて、給与以外の年間所得が20万円を超えている

なお、税制優遇制度であるNISA(新NISAやつみたてNISA)や、確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)の枠内で取引をする場合は、全ての運用益が非課税になります。ただし、これらの制度では対象商品が限定されることもあるので、目的のファンドを取引できるかは事前に確認しておきましょう。

クローズド期間中は売却できない

投資信託のなかには、運用を安定させる目的で「クローズド期間」が設定されているファンドもあります。クローズド期間中は原則として解約が禁止されるため、自由なタイミングで売却することはできません。

例外的に売却が認められるケースもありますが、基本的にはクローズド期間が明けるまでは保有を続けることになります。特に短期間で売却する可能性がある人は、目論見書などでクローズド期間の有無を確認しておきましょう。

リアルタイムでの現金化はできない

投資信託で売却を申し込むタイミングは自由に選べますが、実際の約定(取引の成立)までには時間がかかります。また、現金の受け渡しまでには2~5営業日ほどかかるため、すぐに現金化をすることはできません。

特に注意したいのは、申し込み当日または翌営業日以降の引け後に算出される基準価額をもとに、実際の売却価格が計算される点です。約定までの間に基準価額が動く可能性もあるので、状況次第では希望する価格で売却できないことがあります。

株式のようにリアルタイムの価格で取引したい場合は、証券取引所に上場されている「ETF(上場投資信託)」が選択肢になります。ただし、一般的な投資信託に比べると銘柄数が少ないため、取引できる商品は入念に確認しておきましょう。

投資信託は売り時の基準を決めておこう

ただ漠然と投資をすると、リターンが膨らむ前に利益確定をしたり、損失に慌てて売却したりする可能性が高まります。そのような人は投資信託の売り時を整理することで、より効率的な資産運用ができるかもしれません。

投資信託の売り時を判断する際には、日常生活や家計も含めて計画を立てることが大切です。ほかの人を参考にするのではなく、ご自身に合った判断基準を見つけましょう。

※本記事は投資信託に関わる基礎知識を解説することを目的としており、特定ファンドの売買や投資を推奨するものではありません。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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