新NISAとiDeCo、どっちを最初に始める?

2024年1月から始まる新NISAと、個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は、いずれも一定の投資額までの運用益が非課税になる制度です。新NISAとiDeCoは併用もできますが、どちらの制度を先に始めれば良いのでしょうか。

本記事では、どちらの制度を優先して活用するのか考える際に参考となる「3つのパターン」を紹介します。

パターン1.積極的に運用したいなら新NISAから使う

積極的に資産運用をしたい方には、さまざまな金融商品を選べる新NISAが向いています。

iDeCoの対象商品は一部の投資信託や保険商品、定期預金などであり、金融機関には取扱商品の上限数が設けられています。商品ラインナップは3~35銘柄程度であり、この中に株式は含まれません。

一方で、新NISAの対象商品には投資信託やETF、国内外の上場株式も含まれます。

パターン2.投資のリスクと労力を抑えたいならiDeCoから使う

安定した運用を目指す場合や、情報収集・分析の手間を抑えたい場合は、iDeCoの利用から検討してみましょう。

iDeCoの対象商品には、元本が変動する投資信託や、元本確保型にあたる預金や保険もあります。元本確保型は元本割れのリスクが低いため、大きなリスクを抱えることがありません。その代わりにリターンが小さくなるという特徴があります。

また、iDeCoは対象商品や運用方法が限られるので、新NISAに比べると情報収集などの労力を抑えやすい制度といえます。

パターン3.余剰資金があっても少ないなら新NISAから使う

iDeCoのように引き出し制限のある制度では、投資した金融商品を換金して自由に使うことができません。手持ちの資金が少ないとライフイベントに対応できない可能性があるので、余剰資金が少ない場合は新NISAの利用から検討しましょう。特にマイホームなどの大きな支出を予定している場合は、自由に換金できる制度を選ぶことが重要です。

新NISAとiDeCoを4つの点から比較

ここからは4つの視点に分けて、新NISAとiDeCoの特徴を比較しました。運用方法や節税効果などの違いを確認して、どちらを優先的に活用したら良いのか考えてみましょう。なお、両制度の情報は2023年7月時点のものであり、今後変更される可能性があります。

1.対象商品の違い

新NISAとiDeCoの対象商品の違いは、以下の通りです。

新NISA iDeCo
対象商品 ・国内株式
・外国株式
・投資信託
・ETF
・J-REIT
・投資信託
・定期預金
・保険商品

新NISAは比較的リスクが大きい代わりに、大きいリターンが期待できる対象商品が多くなっています。iDeCoの場合は、新NISAとは反対にリスクが小さく、リターンも小さくなりやすい対象商品がそろっています。

実際には金融商品ごとに違いがあるので、リスクとリターンの関係を理解した上で運用するものを選ぶことが大切です。

2.年間投資額の違い

1年間に投資できる金額は、新NISAの方が高く設定されています。両制度の年間投資額の違いは、以下の通りです。

<新NISAの年間投資額>
つみたて投資額:120万円
成長投資枠:240万円

新NISAの場合、非課税で保有できる限度額は総枠で1800万円、成長投資枠は1,200万円になっています。

<新NISAの年間投資額>
・国民年金第1号被保険者の場合
→81万6,000円
・国民年金第2号被保険者の場合
→14万4,000円~27万6,000円
・国民年金第3号被保険者の場合
→27万6,000円
・国民年金任意加入被保険者の場合
→81万6,000円

新NISAでは2つの投資枠を併用できるため、年間では360万円までの金融商品を購入できます。一方で、iDeCoの年間投資額は職業や勤務先の年金制度によって異なり、最大の拠出額は81万6,000円となります。

3.節税効果の違い

iDeCoでは3つのタイミングで節税効果がありますが、新NISAの節税効果は運用時に限られます。両制度の節税効果の違いは、以下の通りです。

<新NISAの節税効果>
投資時:なし
運用時:全ての運用益が非課税になる
引き出し時:なし

<iDeCoの節税効果>
投資時:全ての掛金が所得控除の対象になる
運用時:全ての運用益が非課税になる
引き出し時:退職所得控除または公的年金等控除が適用される

iDeCoの受給方法には「一時金」と「年金」があり、一時金には退職所得控除が、年金には公的年金等控除がそれぞれ適用されます。

4.引き出し制限の違い

新NISAで投資した資金は自由に引き出せますが、iDeCoには以下の「引き出し制限」があります。

<iDeCoの引き出し制限>

60歳時点での加入年数 支給開始年齢
10年以上 60歳
8年~10年未満 61歳
6年~8年未満 62歳
4年~6年未満 63歳
2年~4年未満 64歳
1ヵ月〜2年未満 65歳

上記の通り、iDeCoでは原則60歳になるまで資産を引き出せません。支払いを停止すると加入年数が加算されなくなるため、毎月の掛金は継続して支払える金額に留めましょう。

運用方針に合った制度を選ぼう

新NISAとiDeCoは、投資金額や節税効果、換金のしやすさなどが異なります。どちらが優れているとは一概に言えないため、資産形成の目的やライフプランに合わせて制度を選ぶことが大切です。

※本記事は資産運用に関わる基礎知識を解説することを目的としており、資産運用を推奨するものではありません。

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