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グローバル市場:7月の注目点

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〔要旨〕

  • 米国のインフレ:FRBにとって、頑強なコアインフレは依然として大きな懸念点。残念なことに、賃金の伸びが比較的力強いことが、こうした懸念を悪化させている
  • 中国の景気刺激策:中国でさらなる金融刺激策や、的を絞った財政刺激策が実施されても驚かない。こうした施策は、中国株にとって前向きなきっかけとなる可能性
  • 欧州経済:ECBによるさらなる利上げが予想されるなか、ユーロ圏経済がどの程度底堅さを維持できるか見極めたい。

米国のインフレは頑強に高止まりするか?

FRBは7月に利上げを行うか、それとも据え置くか?

さらなる利上げに欧州経済はどう反応するか?

英国はどうか?

中国による追加刺激策が行われれば、株価の後押しにつながるか?

日銀はいつまで金利水準を保てるか?

決算シーズンから何が分かるか?

個人投資家のセンチメントは株式にとってどのような意味を持つか?

結論

2023年4-6月期が終了しましたが、これはなんと重要な期間となったことでしょうか。

米国を含む多くの国々で、債券利回りが上昇しました。地方銀行のストレス緩和により、米国株は大幅に上昇しました。利回りの上昇にもかかわらず、人工知能への期待から、比較的少数のテクノロジー株が米国株式市場の上昇を支えました。日本株も、経済への楽観的な見方や日銀の金融政策に支えられ、堅調に推移しました。カナダと欧州の株式は、2023年4-6月期は比較的小幅な上昇となりましたが、中国市場については、経済再開のもたらす力強さが期待外れであったことから出遅れました1 。しかし問題は、今後どうなるのかということです。以下では、今後数週間、市場を乗り切っていく上で役立ついくつかの注目ポイントについて述べてみたいと思います。

米国のインフレは頑強に高止まりするか?

今週、米国では消費者物価指数(CPI)が発表されますが、中でもコアCPI(食品、エネルギーの価格を除いたもの)に注目が集まるでしょう。米連邦準備制度理事会(FRB)にとって、頑強なコアインフレは依然として大きな懸念点です。残念なことに、賃金の伸びが比較的力強いことが、こうした懸念を悪化させています。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)に近い日程で発表されることから、市場はCPIを非常に重視しており、CPIが予想を上回るかどうかで株価が上下する可能性があります。しかし私は、一歩引いて大局を見る必要があると考えています。直近の米雇用統計では、6月の平均時給が予想を上回ったものの、賃金の伸びはこの1年で緩やかになっており、雇用創出が冷え込んでいることを考慮すれば、さらに緩和する可能性が高いでしょう。加えて、他のデータもサービスインフレ圧力が緩和していることを示しています。6月の米供給管理協会(ISM)の調査によると、サービス業購買担当者景気指数(PMI)の支払価格サブ指数は54.1となり、5月の56.2からさらに低下しました2 。コアインフレはこの1年で緩和しており、さらに大幅に低下すると私は考えています。

以前にも申し上げたように、ディスインフレのプロセスは不完全であり、時にがっかりさせられることもありますが、それでも確実に進行しています。残念ながらこうした状況は、FRBに利上げの一時停止を7月も継続させるにあたって十分ではないかもしれません。今後さらに、注視していく必要があるでしょう。

FRBは7月に利上げを行うか、それとも据え置くか?

7月26日のFOMCがどうなるかに注目が集まっていますが、利上げが行われると予想する向きがほとんどです。特に、最近の(ミシガン大学とニューヨーク連銀の両方の)消費者調査で、短期のインフレ期待は大幅に低下しており、長期のインフレ期待はよく安定していることから、私は7月の会合で、FRBがより慎重で用心深い姿勢を取り、じっと動かないことを期待しています。さらに6月のFOMC議事要旨によれば、ほとんどのFOMCメンバーが、金利を据え置くことで、より時間をかけて、最大雇用と物価安定というFOMCの目標に向けた経済の進捗を評価することができるようになるだろう、と述べたとされています。前回から今回のFOMCまでの間に評価対象となるデータがそれほど出ていないことから、私は、7月のFOMCでもそのような見解が維持されることを期待しています。

しかしながら、先週行われたダラス連銀のローガン総裁の発言には、驚きを禁じ得ませんでした。同総裁は、「FOMCが過去1年半の間に行った利上げの遅行的な影響から、さらに多くの冷え込みが待ち受けていると言う人もいる」としながらも、「この経路による大きな追加的な影響が出る可能性については懐疑的だ」としました3

私は同総裁に敬意を表しつつも、この発言には同意しかねます。金融政策の決定と実体経済への影響の間には大きなタイムラグがあり、米国経済への影響の多くは、今日、依然として表れていないと私は考えています。FOMCメンバーのほとんどがローガン総裁の見方に同意せず、既に実施された引き締めによる経済的ダメージが、今後さらに表れてくることを理解し、慎重に政策を進めてくれることを願うばかりです。

さらなる利上げに欧州経済はどう反応するか?

先週のPMI調査では、ユーロ圏経済の減速が続いていることが示されました。総合PMIは5月の52.8から6月は49.9に低下しました。製造業PMIは43.4となり、37カ月ぶりの低水準となりました。サービス業PMIは52.0と、依然として拡大領域にあるものの、5月の55.1からは大幅に低下しました4。欧州中央銀行(ECB)によるさらなる利上げが予想される中、ラガルドECB総裁は先週、「やるべきことはまだある」といつものフレーズを繰り返しましたが、ユーロ圏経済がどれだけ底堅さを維持できるか見極めたいと思います。

ECBと投資家にとって重要な課題は、力強いサービスセクターと弱体化する製造業セクターからなる不均衡な経済を、どう取り扱うかということです。欧州の大国(特にドイツ、またイタリア、フランスも)は主要な財輸出国でもあります。例えば米国や英国などよりも、これらの国々の成長は、中国を含むグローバルな財需要に大きく左右されます。様々な点を考慮すると、私たちは引き続き、ECBはタカ派的な利上げを継続し、当面はサービス業がユーロ圏経済を押し上げるだろうと考えています。

英国はどうか?

米国、ユーロ圏ともに、成長鈍化、インフレ上昇、タイトな労働市場という状況にありますが、英国の状況は、欧米主要国の中で最も不可解といえるかもしれません。ほとんどの人が、長期にわたって英国の成長には弱気な見解でした。しかし成長、インフレ率ともに、合理的に予想されたよりもはるかに力強いことが示されてきています。

英国は、米国と同様に労働需要が極めて旺盛で、特に観光/レジャー/ホスピタリティ部門の労働供給が不足しており(おそらくブレグジットの影響による)、食品およびコアインフレも高くなっています。イングランド銀行は、おそらく他の主要国の中央銀行よりも、はるかにやるべきことが多いでしょう。これは、他の英国の債券や株式よりも、ポンドにとってプラスに働く可能性が高いでしょう。英国の例は、各国のマクロ面や景気サイクルがかなり異なることから、各国のマクロ面にさらに注意を払い、さまざまな国への資産配分をより選択的に行うことの有効性を示しているといえます。

中国による追加刺激策が行われれば、株価の後押しにつながるか?

中国の民間調査である財新PMIの6月の調査結果によると、製造業PMIは50.5、サービス業PMIは53.9で、5月の57.1から低下しました5 。どちらも数字の上では拡大領域にありますが、成長は明らかに減速しています。加えてインフレ率は非常に低く、デフレ圧力さえ示唆される部分もあります。私たちは、中国人民銀行によるさらなる金融刺激策や、的を絞った財政刺激策が実施されたとしても驚きません。こうした施策は、ここ数カ月下押し圧力にさらされてきた中国株が、前向きになるきっかけとなるかもしれません。

日銀はいつまで金利水準を保てるか?

日本株は今年、非常に緩和的なスタンスを取る中央銀行に助けられ、力強いパフォーマンスを見せてきました。問題は、これがいつまで続くかです。私は、中期のインフレ期待が依然として安定していることから、日銀は今後も利上げを控える可能性があると考えています。7月下旬に日銀の金融政策決定会合が開かれますが、そこで、10年ぶりの新総裁としてわずか数カ月前に就任した植田総裁が率いる新体制で何がなされるのか、より深い洞察が得られるでしょう。インフレ率は賃金とともに明らかに上昇していますが、夜明けのように日本のインフレがようやく始まると思ったら、そうならなかったという状況を避けるため、日銀が主要中央銀行の中で、最もハト派的な姿勢を維持する可能性はまだ十分ありそうです。

決算シーズンから何が分かるか?

2023年4-6月期の決算シーズンは、銀行の決算発表が始まる今週後半から開始します。多くのテクノロジー企業の発表は、7月後半に予定されています。コンセンサスでは、S&P500種指数企業の4-6月期の1株当たり利益は7.2%減少すると予想されています。3月31日時点では、4-6月期の利益は4.7%の減少にとどまると予想されていました6 。今期は、利幅が圧縮される可能性が高そうです。

欧州の見通しはここ数カ月で低下しましたが、米国に比べて利益の縮小幅は小さいと予想されています。いつものように、私が注目するのは決算発表と今年下半期のフォワード・ガイダンスです。

留意すべき重要な点は、サイクルの中でこの時期は、通常利益が減少するということです。しかし株価を支える対抗力となりうるのは利回りの低下で、これは通常、PERマルチプルの拡大を促します。

個人投資家のセンチメントは株式にとってどのような意味を持つか?

米個人投資家協会(AAII)投資家センチメント調査は、一般的に逆張り指標として見られていますが、強気センチメントが46.39%となり、2021年11月以来の高水準を示しました7 。通常、強気センチメントのピークと谷は、市場の谷とピークと密接に重なっています。例えば、強気センチメントが19.22%(その年の最低値)を記録した3月は、力強い上昇の始まりと一致しました8 。現在の高い強気センチメントは、センチメントが弱まりつつあることから、戦術的投資家が、短期的に慎重になることを検討した方が良いかもしれないことを示唆しています。

結論

私は欧米先進国の現在の環境を、弱々しいものの雇用はしっかりしている景気減速、と呼んでいます。これはグローバル金融危機後の、弱々しく雇用なき景気回復と、違うようで似ている部分もあります。インフレが低下し、成長が鈍化するにつれて紆余曲折が生じる可能性が高く、その動向には細心の注意を払いたいと思います。私たちは、株式、債券、オルタナティ ブに十分に分散投資した状態を維持すると同時に、各国の景気サイクルがより多様化する中で、地理的にも十分に分散投資した状態を維持することを選好します。

With contributions from Arnab Das.
(執筆協力:アーナブ・ダス)

1.出所:MSCI(MSCI USA Index、MSCI Europe Index、MSCI Canada Index、MSCI China Index、MSCI Japan Index、MSCI United Kingdom Indexに基づく)、2023年6月30日
2.出所:米供給管理協会、2023年7月6日
3.出所:ダラス連銀講演録、2023年7月6日
4.出所:S&PグローバルHCOB PMI調査、2023 年 7 月 3 日、 7 月 5 日
5.出所:財新グローバル、2023年7月5日
6.出所:ファクトセット業績見通し、2023年7月7日
7.出所:米個人投資家協会、2023年7月5日
8.出所:ブルームバーグ、S&P500種指数は3月16日の週の3891から7月6日の週には4446まで上昇した

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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