「ArtTech」が創造する、近未来のアート投資とは?

アートへの投資というとクラシックでアナログな印象がありますが、実際は急激にテクノロジー化が進んでいる分野です。ブロックチェーン技術などを活用したArtTech(アート×テクノロジー)によって、アート投資の未来がどのように変わっていくのかを予測してみましょう。

アート市場の成長を阻む「非効率性」「不透明性」

世界最大のアートイベント「アート・バーゼル」とスイスのプライベートバンクUBSが共同発表した市場調査レポートによると、2018年の国際アート市場は前年比6%増の674億ドル(約7兆2,860億円)に達し、過去10年で2番目の売上を記録しました。

この市場規模にも関わらず市場構造は閉鎖的で、作品価値の評価や価格設定、所有者や取引の履歴、取引プロセスなどの面で非効率性と不透明性が指摘されています。

過去にはアート作品の売買が大規模なマネーロンダリングに利用され、ニューヨークの老舗画廊ノードラー商会が何十年もの間、偽作品を販売していた事件が発覚し、アート市場の信用を著しく低下させました。

投資家からの信用を回復すると同時に、より幅広い層にアート投資の魅力をアピールするためには、プロヴェナンス(作品などの出所)やオーセンティシティ(信頼性)の向上が必要になるでしょう。

若年層を魅了するデジタルアートの台頭

デジタルアートの台頭も、昨今のアート投資の新たなトレンドです。コンピューターで作られたグラフィックやイラスト、一眼レフのデジタルカメラで撮影された写真など、デジタル作品が現代アート界を席巻しています。歴史が浅いため市場価値はまだ低いですが、すでに確固たる地位をアート界で確立しており、高額で取引される作品もあります。

2018年に最も高額で取引されたデジタルアートは、アイルランドのアーティスト、ケビン・アボッシュのデジタルフォトグラフィー「Forever Rose(永遠の薔薇)」。100万ドル相当の仮想通貨で落札されました。

また、ビットコインに代表される仮想通貨を題材にしたデジタルアートも、一部の投資家の間で話題になっています。これらの作品の多くはコンピューター・グラフィックで作られており、14万ドル(約1,513万円)でオークションに出された作品もあります。クラッシックアートには関心の薄い、若い世代のアート投資家を市場に取り込むことにも一役買っています。

ブロックチェーンがリードするArtTech

時代の変化と課題に対応すべく、急速に進歩し活用されるようになったのがArtTechです。特にブロックチェーン技術は、プロヴェナンスやオーセンティシティの検証ツールとして市場の透明性の向上に役立つほか、アート収集の新たなアプローチ法あるいは作品そのものとして、「アート産業に多大な影響を与える技術」と注目されています。

例えば、ジュネーブのファイン・アーツ・インスティテュート(FAEI)が2014年に発表したレポートで、調査対象となったアート作品の50%以上が偽物、あるいは別のアーティストの作品であったことが明らかになりました。

データの永久保存性や改ざん耐性、分散型タイムスタンプといったブロックチェーンの特徴を活かし、作品・作者・取引情報などを追跡できるようにすることで、さらに顧客の信頼を得ることができるでしょう。

2大オークションハウスも参戦

世界的に有名な2大オークションハウスであるクリスティーズとサザビーズも、伝統とテクノロジーの融合に向け、積極的にArtTechに取り組んでいます。

どちらもオークションをデジタル化し、世界中どこからでも参加できる環境作りに力を入れているほか、ブロックチェーン技術を活用し、贋作による詐欺の防止や高級不動産取引のトークン化も目指しています。

クリスティーズは、アートとテクノロジーの未来について議論する「ArtTech Summit」を開催し、「AI(人工知能)がアート産業に与える潜在的な影響」といった興味深いテーマも取り上げています。

デジタル・トランスフォーメーションが投資に与える影響

アート作品の真の価値や真贋鑑定は、専門家であっても難しいものです。無名アーティストの作品となると、さらにハードルが高くなります。

ArtTechが展開するデジタル・トランスフォーメーションは、敷居が高い伝統的なアート投資のイメージを変え、透明性や信頼性、効率性の高い投資環境の構築に貢献することが期待されています。それによって、ここ数年で急増しているインターネットを利用したオークションや作品の売買も、今後さらに加速すると考えられています。

ArtTechは新たなビジネスモデル生み出し、世代や嗜好を超えた次世代のアート投資を創造することでしょう。関連するデジタル表現やブロックチェーン技術の進化と、その活用を図るアート業界やフィンテック企業の動向に、注目しておきましょう。

※上記文中の個別企業はあくまで事例であり、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

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