「サステナブルな空の旅」について考える!航空セクターの取り組み

飛行機は長距離の移動に便利ですが、乗客1人当たりの環境負荷が大きい交通手段の一つであることから、近年は航空セクターにおいても温暖化防止に向けた取り組みが加速しています。

2050年までにCO2排出量が2倍以上に増加?

非営利組織グローバル・チェンジ・データラボ(Global Change Data Lab)が運営する「アワ・ワールド・イン・データ(Our World In Data)」によると、航空セクター(国内・外線、旅客、貨物を含む)が世界のCO2排出量に占める割合はおよそ2.5%と、道路輸送などと比べて低い水準に留まっています。

その一方で、新型コロナウイルスが広がる以前はCO2排出量と乗客数が増加傾向にあったことから、マンチェスター・メトロポリタン大学の研究者は2019年の時点で、2050年までに排出量が2倍以上に増えると予測していました。社会全体が日常生活を取り戻し、世界中で旅行者が再び急増している現在、CO2排出量が増加する可能性は高いでしょう。

環境負荷要因はCO2だけではありません。

例えば、ジェット燃料から排出される粒子も地球温暖化に大きく影響していることが、近年の研究で明らかになっています。空の旅とサステナビリティを両立させるためには、より包括的かつ長期的な視点で「持続可能な航空セクターの在り方」を見直し、抜本的な対策を講じる必要があるかもしれません。

ネットゼロ実現に向けた取り組みが加速

このような背景から、多くの航空会社が2050年までにネットゼロ(※)の実現を目指し、「炭素排出量の削減」「低燃費化」「プラスチックの使用量・食品廃棄物の削減」など、さまざまな取り組みを進めています。

(※)大気中の温室効果ガスと大気中から削減される温室効果ガスのバランスが取れている状況のこと。

近年は、再生可能なバイオマスや廃棄物資源を原料とする「持続可能な燃料(Sustainable Aviation Fuel、以下SAF)」の開発・導入も活発化しており、次世代ジェット燃料として注目されています。SAFは従来の石油に近い性能を持ちながら、従来使われてきた化石燃料と比べて温室効果ガスの排出量を約80%削減できると期待されています。

「未来の空の旅」を提供する航空会社2社

以上のような取り組みに加えて、一歩先を行くサステナブルな空の旅を提供している航空会社2社の事例を見てみましょう。

ヴァージン・アトランティック航空

ヴァージン・アトランティック航空は、航空セクターの脱炭素化を支援する研究やテクノロジー、イノベーションに投資しています。

2012年には9万トン以上の燃料削減を図るソフトウェアや、燃費効率の高い新型機を導入しています。2018年にはSAFを使用した世界初の商用フライトを実施しました。同社は、2030年までに自社の航空機に使用する燃料にSAFが占める割合を10%に増やすという目標を掲げています。

このような取り組みは成果を上げており、2013年以降はフライト数が6%増加したにも関わらず、CO2排出量を36%削減することに成功しました。

アメリカン航空

アメリカン航空は、航空会社としては初めて「科学的根拠に基づくイニシアティブ」の承認を受けています。2023年には、世界の航空・輸送業界誌『エア・トランスポート・ワールド(Air Transport World)』の「Airline Industry Achievement Awards(航空産業の功績を称える賞)」で「エコエアライン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。

同社は、2020年にカーボンオフセットに特化した非営利団体「クール・エフェクト(Cool Effect)」と提携し、乗客が自分のフライトのCO2排出量を簡単に推定し、カーボンオフセット(※)を購入する機会を提供しています。

(※)CO2などの温室効果ガスの排出をできるだけ減らす努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについては、温室効果ガスの削減できるものに投資することによって、排出される温室効果ガスを埋め合わせる考え方のこと。

2022年には国際民間航空機関のカーボンオフセットおよび削減制度であるCORSIA認証(※)のSAFを、航空セクターとして初めて商業航空に導入しました。

(※)国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキームのこと。

「未来の空の旅」は安全で快適、かつサステナブル

今や空の旅は安全性や快適さに加え、環境への配慮も重要な評価基準となっています。安全で快適な空の旅を維持する一方で、いかにして効果的にサステナビリティへの取り組みを進めるかが、航空セクターの持続可能な成長のかぎを握っているのではないでしょうか。

Wealth Roadでは、サステナビリティと航空セクター市場の動向をレポートします。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。

Recent Posts

  • マーケットビュー

弱含みか正常化か?大局的な視点で見る世界経済

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

FRBは景気後退を回避するために金融政策を再調整

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

日本:金融市場から見た石破新政権

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

中国:広範囲の金融緩和政策とその評価

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • お金の使い方

S&P500に100万円を投資! 10~30年後をシミュレーション

S&P500と連動する…

2か月 ago
  • 資産管理

新NISAのつみたて投資枠は貯金代わりになる? 5つの違いを解説

新NISAで安定運用を目指すと…

2か月 ago