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金融引き締め政策の影響が焦点に

金融引き締め政策の影響が焦点に

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〔要旨〕

米連邦準備理事会(FRB):12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によれば、2023年の利下げを予想する参加者はいなかった

米雇用統計:12月の米雇用統計では、雇用が急速に悪化することなく、賃金上昇圧力が緩和されたことが示された

焦点が移り変わるか?:2023年は、市場の焦点がインフレから経済成長へ移っていくと予想

FRBのメッセージ:タカ派的だが希望も見える

米雇用統計に励まされた市場

米購買担当者景気指数(PMI)は、需要軟化を示唆

ユーロ圏経済に底堅さの兆し

国際通貨基金(IMF)は2023年が厳しい1年になると警告

経済成長へ焦点が当たる年に

今週の注目材料

2023年が始まりましたが、ある意味、まだ2022年の続きのように感じられます。結局のところ、中央銀行は依然として市場に大きな影響を及ぼしているのです。しかし、今年は中央銀行の引き締めサイクルが終わりに近づいている点が、2022年とは異なります。これまでの引き締め政策がインフレと経済成長の両方に及ぼした影響が明らかになりつつあります。そして、政策立案者だけでなく、市場もその結果を見定めようとしています。

FRBのメッセージ:タカ派的だが希望も見える

先週、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公開され、米連邦準備理事会(FRB)による政策対応の進捗(しんちょく)状況と今後の方向性に関する自己評価の一端が明らかになりました。

市場関係者は、議事要旨をタカ派的と受け止めています。しかし、私が見るところ、特段のサプライズはありませんでした。

  • まず、FOMC参加者は、これまでのインフレ緩和の進展を歓迎しつつも、インフレ緩和の「進展を示すようなより確固とした証拠」を求めていることが明らかになりました。
  • パウエルFRB議長が最近の講演で明言したように、住居費を除くサービス分野のインフレに対する懸念も表明されました。
  • 「正当な根拠もなく金融環境が緩和されれば…物価安定を回復するためのFOMCの取り組みを複雑化させかねない」と記載されている通り、金融市場が先走らないようにすることも含め、インフレ抑制が最優先であることが明らかになりました。
  • FOMC参加者は「(政策対応について)引き続き会合ごとに判断していく」ことで合意し、データに基づく判断にコミットすることを再確認しました。
  • 2022年の急速かつ積極的な引き締め政策により、景気後退のリスクが高まっていることを認めつつ、失業者が増えることで「最もぜい弱なグループに最大の負荷を及ぼす可能性」への懸念を示しました。こうした懸念は、経済データの悪化に伴ってより重みを増すと予想されます。

では、何がそれほどタカ派的とされたのでしょうか。議事要旨によると、2023年の利下げを予想する参加者はいなかったとのことですが、これは市場がもとより予想していたことでした。注目すべきは、週の後半のブラード・セントルイス連銀総裁のスピーチが、より前向きな内容だったことです。ブラード総裁は、2023年にインフレが大幅に緩和するだろうとの楽観的な見方を示し、希望的な論調を示しました。

米雇用統計に励まされた市場

市場にとって最も重要なのはデータですが、その点で米国の雇用統計は、まさに市場が求めていたものを提供してくれたと言えるでしょう。わたしはあえてこれを、「ゴルディロックス(過熱もせず冷え込みもしない、適度な状況)」に限りなく近い内容であったと言いたいと思います。

  • 12月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が22.3万人増と、堅調でありつつも、過去6カ月の平均を大きく下回りました 1
  • 最も重要なことは、賃金の伸びの減速が続いていることで、平均時給の上昇率は11月の4.8%から4.6%に低下しました 1 。これは、直近のピークである2022年3月の5.6%から大幅に改善したと言えるでしょう 1

私がこの結果を「ゴルディロックス」と呼ぶ理由は、雇用が急速に悪化することなく賃金上昇圧力が緩和されたことを示したためです。実際、12月の失業率はわずかに低下しました。

米購買担当者景気指数(PMI)は、需要軟化を示唆

先週は、米ISM製造業購買担当者指数(PMI)とサービス業購買担当者指数(PMI)が発表され、いずれも経済活動の悪化を示す結果となりました。

  • 12月の米製造業PMIは48.4となり、2カ月連続で好不況の分かれ目となる50を下回りました 2 。新規受注指数は45.2と、11月の47.2を大きく下回り、さらに深く縮小圏内へと入り込みました 2
  • 12月の米サービス業PMIは49.6となり、11月から6.9ポイントの大幅な低下となりました 3 。新規受注指数は11月の56.0から12月の45.2へとさらに10.8ポイントもの大幅な低下となりました 3 。この水準は2020年5月以来の低さであることは特筆すべき点でしょう。

これらの結果は、FRBが望む需要の軟化と物価状況の緩和を確実に示しています。それゆえ、市場は金曜日に発表されたサービス業PMIを歓迎しました。しかし、これらの統計報告の内容は、FRBがすでに米国経済に与え、今になって現れてきた負の影響の大きさへの懸念をも呼び起こしています。

ユーロ圏経済に底堅さの兆し

また、先週は、2022年の大幅な利上げ後のユーロ圏の経済状況についてもいくつかの示唆が得られました。S&Pグローバルの12月のユーロ圏PMIは、製造業PMIが47.8、サービス業PMIが49.8となりました 4 。両数値は依然として景気の縮小を示していますが、12月の数値は改善し、ここ数カ月で最も高い水準となりました。ユーロ圏経済は、これまでの積極的な引き締め政策にもかかわらず、むしろ底堅い状況となっています。

国際通貨基金(IMF)は2023年が厳しい1年になると警告

また先週、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は、2022年の大幅な引き締め政策によって生じたダメージについて言及しました。ゲオルギエバ専務理事は直近のインタビューで、2023年は世界経済にとって「厳しい」年になると警告し、「世界経済の3分の1が景気後退に陥ると予想している。その理由は、米国、EU、中国の3大経済大国が同時に減速しているからだ」と述べました 5

経済成長へ焦点が当たる年に

今後、インフレが緩やかになり、十分にコントロールされる兆しが見えてくれば、市場はそれほどインフレを重視しなくなるのではないでしょうか。その結果、中央銀行の動向がより明確になっていくでしょう。

私は、市場の関心が経済成長に移っていくと考えます。特に、欧米先進国での引き締め政策による負の影響がどの程度か、そして、経済が回復し始めるのはいつかについて見極めることに焦点が当たっていくのではないでしょうか。

中国については、ゼロコロナ政策の解除の効果がいつ出始めるかが焦点となります。現在、中国は再開による負の影響を短期的に受けています。例えば、中国国家統計局が発表した12月のPMIは、製造業が47.0、非製造業が41.6といずれも低調で、後者は縮小領域に大きく入っています 6 。しかし、2023年に入るにつれて中国の経済成長は改善すると予想しており、私は、今年は中国にとって好ましい1年になると考えています。

今週の注目材料

今週は、米消費者物価指数に注目が集まります。また、英国内総生産(GDP)も重要です。また、中国で経済活動が再開され、国民の「リベンジ生活」(これは単なる「リベンジ旅行」よりもはるかに大きい)が始まったことから、消費活動について何か最初の情報を得られるかどうかにも興味があるところです。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

  1. 出所:米国労働省労働統計局、2023年1月6日
  2. 出所:米サプライマネジメント協会、製造業PMI、2023年1月4日
  3. 出所:米サプライマネジメント協会、非製造業PMI、2023年1月6日
  4. 出所:S&P Global、2023年1月2日
  5. 出所:ブルームバーグニュース、“IMF chief Georgieva warns of ‘tough year’ for world economy”、2023年1月2日
  6. 出所:中国国家統計局、2023年1月1日

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