投資などには目もくれず、毎日がむしゃらに働いて貯金残高を増やす……。堅実な人生のお手本のようです。しかしこれを投資の視点で見ると、ご法度とされる「集中投資」と見ることもできます。このハイリスクな状況から脱却する方法を考えてみましょう。
厚生年金の受給額が減る?
現役のサラリーマンなら、「将来もらえる年金が実質的に目減りする」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、所得代替率が低下する可能性に着目したものです。
所得代替率とは、その時の現役世代の手取り平均年収に対する、年金受給開始時点の受給額の割合のことで、2014年は62.7%でした。働いて厚生年金を納めている人の給料がボーナス込みで平均35万円だとすると、この頃に年金をもらい始めた人の受給額は、その60%の約21万円ということになります。
年金の受給額は毎年変わります。基本的には物価上昇率や賃金上昇率に合わせて変動しますが、マクロ経済スライドによる調整もあります。年金保険料を納付する現役世代の人口減少や平均余命の伸びによって、給付水準を引き下げる仕組みです。
日本全体で年金をもらう人の数や働いている人の数によって、受け取る年金額は変わります。少子高齢化が進む日本では、所得代替率は低下していくと考えるのが自然です。
2014年に行われた財政検証では、経済成長率別で8つのケースが試算されました。経済成長率が最高のケースでも、2044年度の所得代替率は50.9%まで下がり、低成長のケースでは2058年に42%まで下がるというのです。
公的年金への加入は「日本国への集中投資」
厚生年金保険料率は、2019年度時点で18.3%です。半分は会社が負担しているので、加入者は額面給与の約9%を支払っていることになります。ところが、将来もらえる年金額は日本経済の状況次第です。これは、年収の1割近くを使って「日本」という金融商品に投資しているようなものです。
サラリーマンとして働き続けて給料をもらうことは堅実に見えますが、実は「日本への集中投資」というリスキーな投機でもあるのです。毎月収入の1割で、1社の会社の株式を買い続けることを想像してください。かなりハイリスクです。その会社の業績次第で、資産は大きく変動します。
貯蓄も同じです。株式や投資信託などの金融商品を買うのではなく、銀行の預金残高を増やしたほうが堅実に見えるかもしれません。しかし日本の経済や治安状況が低迷し、日本円の価値が下がったらどうなるでしょうか。国内の物価は上昇し、実質的に預金は目減りします。経済が混乱し、職を失って収入がなくなるかもしれません。
ある程度の預金は必要ですが、資産の一部を海外資産に換えておくことは、上記のリスクを回避することになります。
投資信託なら手軽かつ低リスクで海外に投資できる
お金を1つの国に集中させるのではなく、さまざまな国のさまざまな資産を持つことで、資産全体のリスクを抑えられます。ある程度の預金ができたら、海外の投資先を検討してもいいかもしれません。
実際に海外へ投資する方法には、FX(外国為替証拠金取引)や外国株式、外国債、海外不動産などがあります。しかしこれらはすべて取引の方法が異なり、それぞれに特有のルールがあります。初めて投資をする人は、戸惑うことが多いでしょう。
この点、投資信託は手軽かつ柔軟に国際分散投資ができます。特定の資産に投資するものや、1つの投資信託の中に複数の資産をバランス良く配分したパッケージ商品もあります。証券会社や銀行に口座を開設して注文を出すだけで手軽に海外投資がスタートでき、難しい作業はありません。「毎月一定額を積み立てる」「一定量を買い付ける」などといった要望に応えるサービスを提供する会社も増えており、柔軟に対応できます。
日本の将来を不安に思う人は海外資産を組み入れた投資信託を
サラリーマンは給与の9%を厚生年金保険料として支払うことで、将来年金の給付を受けられます。しかし、給付額は日本の経済状況によって変わるため、「日本への集中投資」とも考えられます。リスクを軽減させるために、投資信託を活用して海外に分散投資することを検討しても良いのではないでしょうか。