「高い洋服を着ても意味がない、コスパが一番いいのはファストファッション」という話をよく聞きます。しかし、洋服は、本当に安ければ安いほどいいのでしょうか。確かに洋服にはトレンドがありますが、毎年買い替えのたびに処分すると、お金や資源の「ムダ」につながるという見方もできます。一方、洋服は時に自分のイメージを高めるための武器にもなります。本当に「価値」のある洋服とは何なのでしょうか。
みなさんは洋服を選ぶ時、どういう基準で選ぶでしょうか。よくあるのが、「服は清潔に着られればいい。だから、安ければ安いほどいい」という考え方です。確かにコスパという考え方も大事です。しかし、服にはそれ以上の意味があるのではないでしょうか。
1つは、「イメージ戦略」です。人は多くの情報を目から入手します。実際、多くのビジネスパーソンは、身だしなみにお金をかけ、自己表現をしています。富裕層は、ファッションアイテムにお金をかけることに抵抗がない、という調査もあるほどです。多くの成功している人たちは、他人からどう見られているかをきちんと意識しているということです。
もう1つは、「好きなものを身に着けると、気分があがる」ということです。自分の好みに合う洋服やバッグ、小物などを持つことで、日々の生活や仕事へのモチベーションが向上する場合もあります。単純に、洋服のコスパは値段だけでは測れないと側面があると言えるでしょう。
では、価格だけではなく、価格と価値のバランスがとれた「コスパのいい服」とはどのようなものでしょうか。
1つは、「プラスの影響を与えるもの」です。他人にプラスの印象を与えるという意味では、TPOをわきまえた服でしょうし、自分の気分にプラスの影響を与えるという意味では、好きなブランドやショップの洋服かもしれません。この部分は、個人の趣味や想いが影響する部分になります。
もう1つは、「長く使えるもの」です。たとえば10万円のコートの場合、1年で着なくなってしまったら、1年あたりの価値は10万円ですが、10年着た場合は1年あたりの価値は1万円になります。もちろん洋服も靴も消耗品である以上、一生使えるものは多くありません。しかし、長く使うことで、1年あたりの値段は安くなります。こちらは、1年あたりの値段ということで考えれば、多くの人にとって有効な考え方ではないでしょうか。廉価品を使い捨てにするのではなく、高価格なものを長期間所有し使い続けることが本当のコスパと呼べるでしょう。
では、長く使える洋服とはどういう洋服でしょうか。端的にいうと、「老舗の定番品」です。
たとえば、バーバリーのトレンチコートやエドワードグリーンのストレートチップシューズなど、老舗と呼ばれるブランドには定番の名品があります。こういった名品は、マイナーチェンジをする場合もありますが、大きく変わることはなく、流行に左右されづらいもので、長く使えるものになります。
多くの人々に愛用されてきた名品は、過去、修理をしながら使うことを前提に作られてきました。そのため、メーカーに修理のノウハウが蓄積されている場合が多いのです。修理をすれば、買い替えるよりも安い値段で、長く使えることができるでしょう。
また、修理に対応するということは、顧客と長く関係を保つことを意味し、ブランドとして変わらぬ品質を提供し続けることを約束するものです。その部分のコストも反映されるため、初期の購入価格は比較的高くなります。購入顧客層が限定され、かつ購入者が長期間使用することから、ブランドはステータスシンボルとなります。ステータスシンボルは、所有する喜びと満足感を提供するもので、製品の価値がここにも見出されるわけです。
老舗の名品というのは、株式投資でたとえると大型優良株と言えるかもしれません。大型優良株というのは、誰もがその良さを知っています。購入単価は比較的高くなりますが、値崩れしづらく、株価の上昇や配当金が期待でき、安定的な利益が得られる銘柄と言えるでしょう。小型株などに比べると、大化けはあまり見込めませんが、長期的に見れば、リターンは小型株より高いかもしれません。
洋服のコスパを考える時、安くてある程度品質のいいファストファッションブランドを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、ビジネス・プライベート両面でのイメージ戦略やモチベーション向上、そして「1年あたりの値段」という軸で考えると、必ずしも安い服が、コスパがいいとは言えないのです。長く使える、本当に「コスパのいい」名品を、ワードローブに加えてみてはいかがでしょうか。