投資や資産運用を始めるにあたって、「毎月安定した収入が欲しい」と考えている方もいるのではないでしょうか。さまざまな投資商品の中でも、投資信託では分配金を毎月受け取ることができるものもあります。実際に、投資信託で毎月10万円の分配金を得るには、どれくらいの資金が必要で、何に注意して運用したらよいのでしょうか。
目次
分配金とは、投資信託を保有する投資家に対して、信託財産(※)から支払う金銭のことです。分配金は決算ごとに、状況を踏まえて分配金の有無や金額が決まります。分配金があった場合、投資家は保有口数に応じた金額を受け取れます。
(※)投資家から集めた資金のこと。
普通分配金は、投資信託の運用益から支払われるものです。受け取った分がそのまま投資家の利益となるため、配当所得として課税されます。
一方で、特別分配金は投資信託の元本から支払われます。その分だけ元本が減少するため、投資家の利益には見なされず、非課税となります。
また、投資のタイミングによっても、普通分配金か特別分配金になるのかが変わります。購入単価が異なると分配金が同額であっても、特別分配金が全額になったり、普通分配金が全額になったりする可能性があります。分配金の中身が普通分配金と特別分配金で分かれている状況もあるでしょう。
分配金の種類 | 普通分配金 | 特別分配金 |
---|---|---|
利益の原資 | 運用益 | 元本 |
税法上の扱い | 投資家の利益 | 元本の払い戻し |
課税 | 20.315% | なし |
上記の違いを踏まえた上で、投資信託の分配金のタイプを確認しましょう。
ここからは、投資信託で毎月10万円の分配金を実現できるのかを確認していきましょう。
ここでは、 毎月10万円の分配金を得るためには投資資金がいくら必要なのかを3%と5%の利回りだった場合という前提で表にまとめました。 受取型の投資信託を想定しています。
投資資金 | 利回り3% | 利回り5% |
---|---|---|
100万円 | 年間:30,000円 毎月:2,500円 | 年間:50,000円 毎月:4,166円 |
500万円 | 年間:150,000円 毎月:12,500円 | 年間:250,000円 毎月:20,833円 |
1,000万円 | 年間:300,000円 毎月:25,000円 | 年間:500,000円 毎月:41,660円 |
2,000万円 | 年間:600,000円 毎月:50,000円 | 年間:1,000,000円 毎月:83,333円 |
3,000万円 | 年間:900,000円 毎月:75,000円 | 年間:1,500,000円 毎月:125,000円 |
4,000万円 | 年間:1,200,000円 毎月:150,000円 | 年間:2,000,000円 毎月:166,666円 |
(※上記は手数料や税金を考慮していない金額)
年間の利回りが3%~5%の場合、毎月10万円の分配金を得るためには3,000万円~4,000万円程度が必要になります。実際には手数料や税金が差し引かれるため、想定よりも必要な投資金額が大きくなるかもしれません。
あるいは逆に、もっと高い利回りを実現できると元本はより少ない金額でも毎月10万円を得られる可能性がありますが、投資信託は元本保証ではなく、投資先のリスクを取りながら資金を運用していることを理解しましょう。
ここからは、投資信託で毎月10万円の分配金を得るためのポイントを見ていきましょう。
投資を始める際は、最初に具体的な目標を設定することが大切です。いきなり大きな分配金を作ることは難しいので、まずは達成できる可能性が高い短期的なゴールを設定し、無理なく目標を達成できるようにしましょう。
例えば、「毎月1,000円の分配金を作る」「投資資金を100万円に増やす」などです。ゴールを達成したら新たな目標を設定することを続けることで、徐々に「毎月10万円の分配金」へと近づけるでしょう。
また、人によって目標は変わってくるため、ご自身の資産状況や給料水準、将来に貯めたい金額については正確に把握しておくことが大切です。
投資信託には、分配金を現金で受け取れる「受取型」と、自動的に再投資される「再投資型」のタイプがあります。それぞれ向いている人の特徴は、以下の通りです。
受取型が向いている人 | 再投資型が向いている人 |
---|---|
・安定した収入を得たい ・分配金を生活費に充てたい ・短期間で利益を実感したい | ・同一銘柄の数を増やしたい ・すぐに現金を必要としていない ・複利効果(※)を狙いたい |
(※)分配金を再投資に回すことで、利益が利益を生む状態になること。
受取型には、ファンドの運営方針によって「毎月分配型」や「年2回決算型」などがあります。ただし、どちらも分配や分配金額が保証されているものではないことには注意しましょう。
再投資型では、新たに購入する際のコストや手間も省けます。一つのファンドを継続して保有することで資産を増やせる見込みがあるのなら、再投資型の投資信託への投資を検討しましょう。
分配金は魅力的なリターンですが、多いからと言ってリターンが大きいファンドとは限りません。特別分配金は元本から支払われているため、値上がり益が出ていないと、投資家本人の資産が増えず、コストによっては損失が出る恐れがあります。そのため、投資信託を選ぶ際は「トータルリターン」に 目を向けましょう。
トータルリターンとは、値上がり益や分配金、運用にかかったコストなどを含めて「どれくらい利益を生み出したか」を表す指標です。分配金や 基準価額の推移だけではなく、トータルリターンを確認するようにしましょう。
余計なコストを抑えて資産運用をしたい方は、税制優遇制度である「NISA(ニーサ)」や「iDeCo(イデコ)」の活用を検討してみましょう。どちらの制度を活用して投資信託を購入しても、譲渡益や分配金にかかる税金を抑えられます。
-NISAの詳細
少額投資非課税制度とも呼ばれるNISAは、非課税投資枠の範囲内で全ての運用益が非課税になる制度です。投資家の年齢やスタイルに合わせて、3つの制度が用意されています(※2024年からは新NISAが開始)。
NISAの概要 | |||
---|---|---|---|
NISAの種類 | 一般NISA | ジュニアNISA | つみたてNISA |
対象者 | 日本在住の成人 | 未成年者 | 日本在住の成人 |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間80万円 | 年間40万円 |
非課税期間 | 5年間 | 20年間 | |
対象商品 | 上場株式、ETF、公募株式投信、REITなど | 長期積立や分散投資に適した投資信託 | |
買付方法 | 通常の買付、積立投資 | 積立投資のみ | |
投資期間 | 2023年まで | 2042年まで |
(※2023年から18歳以上は成人として扱われる)
ただし、通常の投資では利用できる損益通算(※)などが利用できないデメリットがあることには注意しましょう。
(※)1年間の利益と損失を相殺することで、税金を抑えることができる制度のこと。
-iDeCoの詳細
個人型確定拠出年金と呼ばれるiDeCoは、拠出した掛金や給付金も控除対象になり、運用益が非課税になる私的年金制度です。
ただし、原則60歳になるまで資産を引き出せないといったデメリットもあります。iDeCoを活用した資産運用を始める際は、途中で引き出さないといけない状況に陥らないように掛金を設定する必要があります。
iDeCoの概要 | |
---|---|
対象者 | ・自営業者等 ・厚生年金保険の被保険者 ・専業主婦(主夫)等 ・国民年金の任意加入被保険者 |
拠出限度額(毎月) | 自営業者:68,000円 サラリーマン:12,000円~23,000円 専業主婦:23,000円 国民年金の任意加入被保険者:23,000円 (※サラリーマンについては、勤務先の年金制度によって変動) |
対象商品 | 元本変動型:投資信託 元本確保型:預貯金や保険など |
運用方法 | 複数の商品:○ 商品の変更:○ |
払出し制限 | 原則60歳になるまでは受け取り不可 |
節税メリット | 拠出時:掛金が所得控除の対象 運用時:非課税 給付時:公的年金等控除または退職所得控除を適用 |
分配金を得ることを目的にして投資信託を運用する場合、投資資金を一括で投資する方法と、積立投資を行う方法があります。
一括投資は、積立投資と比べて短期間で大きなリターンを狙える反面、投資のタイミングが運用成績に大きく影響を与える恐れがあります。
それに対して、積立投資は投資タイミングを分散することで購入平均単価の水準を抑えることができますが、短期間で大きなリターンを狙いにくいといった特徴があります。このような特徴を活かして長期の積立投資を行うことで、高値で購入してしまうリスクを抑えることができます。
長期の積立投資のメリットとデメリットは、以下の通りです。
長期積立投資のメリット | 長期積立投資のデメリット |
---|---|
・細かい投資判断が不要 ・仕事などで忙しい人でも続けられる ・感情に左右されない ・購入単価が平準化される | ・短期間でのリターンが少ない ・購入時手数料がかさみやすい ・売却のタイミングが難しい |
購入時手数料がかかるなどのコストがかさむ点はデメリットですが、近年では手数料がかからない「ノーロード型」の投資信託も増えています。また、つみたてNISAの対象商品は全てノーロード型なので、手数料を気にせずに積み立てられるでしょう。
ここからは、分配金を得るために投資信託を運用する場合の注意点を2つ紹介します。
通常の投資と同じく、投資信託の分配金にも税金が課されます。2014年以降は一律で20.315%(所得税+住民税)の税率であるため、仮に1年間で100万円の分配金を受け取った場合は、203,150円の税金がかかります。
ただし、前述のNISAやiDeCoを利用した場合は、分配金や譲渡益が非課税になります。また、課税口座で取引をする場合は、以下の制度によって税負担を抑えられるケースがあります。
・損益通算:株式や投資信託の年間損益を相殺できる制度。
・繰越控除:控除額を超える損失が生じた場合に、その損失分を3年間繰り越せる制度。
上記の制度は、状況によっては必要になるので、確認しておきましょう。
相場や投資商品によっては、分配金を上回るリターンが期待できるものが出てくる可能性があります。また、常に分配金によってリターンが出るわけでもないため、その他の投資先も検討しておきましょう。
基準価額の変動によって資産が目減りするリスクや、途中からファンドの分配金に対する方針が変わる可能性、運用成績がよくなくて分配金の利回りが下がる恐れがあるため、必ずしも毎月安定した収入になるとは限りません。
そのため、ご自身の状況とファンドの特性を踏まえた上で、分配金を得ることを目的とした運用を行うか行わないかを判断しましょう。
※本記事は資産運用に関わる基礎知識を解説することを目的としており、資産運用を推奨するものではありません。