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〔要旨〕
兆候を探して:今日、市場関係者は、経済や市場が今後どうなるか、特に株式市場の底打ちがいつになるかの兆候を探っている
フェデックスの発表により金融市場に暗雲が漂う:フェデックスがマクロ経済の低迷について発言したことを受け、市場は動揺、世界的な景気の落ち込みへの懸念が高まった
FRBに注目が集まる:米連邦準備理事会(FRB)の動きこそが、業績関連の警告やテクニカル指標よりも短期的な株式市場の動向に対する重要なシグナルとなるだろう
ベルウェザー銘柄
政策金利の引き上げ
株式のテクニカル指標
まとめ
未来に何が待ち受けているのか、その兆候を探し求めようとするのは人の常です。私の母の友人は、娘がいつか結婚する相手のヒントを求めて、お金を払ってまでしてタロットカード占いをしていました。また、以前に紹介したように、米連邦準備理事会(FRB)の次回会合の兆候を得ようと、当時のグリーンスパン議長のブリーフケースに注目が集まっていたことをよく覚えています。
今日、市場関係者は、経済や市場が今後どうなるか、その兆候を探しています。テクニカル指標、経済指標、ファンダメンタルズなどのさまざまな指標は、今、何を示唆しているのでしょうか。
ベルウェザー銘柄
良い手がかりの一つとして、「ベルウェザー銘柄(経済動向の先行指標としての役割を担う企業)」とされる企業の業績予想があります。これらの企業は、経済や市場、あるいは特定のセクターのパフォーマンス予測に役立つと考えられているため、その業績予想(または業績そのものや、株価のパフォーマンス)が、投資家心理をより大きく左右しうると考えられます。
興味深いのは、「ベルウェザー」が羊飼いの用語から来ていることです。羊飼いは、1頭の雄羊(しばしば「ウェザー」と呼ばれる)の首に鈴をつけ、羊の群れを先導させます。群れを率いるトレンド・セッター(先駆者)であるベルウェザーから、今後のトレンドのヒントを見つけようというわけです。
グローバルな事業展開と貨物輸送という事業の性質から、フェデックスは世界経済の健全性に関するベルウェザー銘柄と見なされています。先週末、フェデックスは、「2022年6-8月期の業績は、同四半期の終盤に加速した世界的な物流の弱含みによる下押し影響を受けました。フェデックス・エクスプレスの業績は、特にアジアにおけるマクロ経済の低迷と欧州でのサービスの課題による影響を受けました・・・ 1 」とコメントし、さらに「・・・マクロ経済の動向は、国際的にも米国内でも、同四半期後半に著しく悪化しました 1 。」と発表したことで、市場に動揺が走りました。これにより、世界的な景気の落ち込みへの懸念が高まり、株式市場に暗雲が立ち込めました。
そのおおもとの原因は何にあるのでしょうか?私は主に、インフレ対応のための中央銀行の引き締め政策に起因すると考えています。
政策金利の引き上げ
世界銀行は先週、各国のインフレ対策に関する調査結果を公表した際、「2022年に世界の多くの中央銀行が、過去50年間には見られなかったほど同期した形での利上げを行っています・・・ 2 」と述べました。世界銀行のマルパス総裁は、世界経済の成長の急減速に警鐘を鳴らしただけでなく、この調査結果に基づき、「低インフレ、通貨安定、より速い成長の達成に向け、政策立案者は消費を減らすことではなく、生産を増やすことに焦点を移してもよいのではないでしょうか。政策は、追加投資を生み出し、生産性・資本配分を向上させることで、成長と貧困削減を目指すべきです」と述べ、高インフレへの政策対応の転換を提唱しました 2 。
おそらくは、世界銀行の調査結果に耳を傾ける向きは少ないでしょう。しかし、今週開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)では、先週の株式市場下落の引き金となった最新の米消費者物価指数(CPI)だけでなく、たとえわずかでも、世界銀行やフェデックスからの警告が考慮されるかもしれない、という希望があります。
株式のテクニカル指標
株式市場の底打ちの兆候を多くの人々が探しています。重要な指標の1つはVIX指数(ボラティリティ指数)で、従来、同指数が40を超えると底入れの目安とされてきました。しかし現時点ではまだ26前後で推移しており、市場関係者が望む水準からは程遠い状況にあります。また、S&P500種指数は、先週金曜日に、重要な支持線とされる3,900を割り込みましたが、これも株式市場がまだ底を打っていない兆候の一つとみられています 3 。
では、近々株式市場が好転する見込みはあるのでしょうか。私の考えでは、2022年に中央銀行の動向、特にFRBによる引き締めがいかに金融市場に影響したかをみれば、答えは「イエス」です。私はまだ、FRBがよりタカ派的でない姿勢に転じることで、米国市場と世界市場が好転するきっかけになり得ると考えています。今週はその可能性は低いかもしれませんが、0.75%の利上げがほぼ既成事実化されている(むしろ「FRBによる既成事実」の方が適切かもしれません)状況を踏まえると、私はまだ、わずかにそうした転換の可能性は残っていると思います。今週水曜日のFOMCでは、利上げ決定、「ドットプロット(FOMCメンバーによる金利予測分布図)」、記者会見という「3連続」の発表が行われることを覚えておいてください。金融市場はこれから起こることの先を見据えており、利上げ決定自体より、ドットプロットや記者会見に注目が集まることは大いにあり得ます。ドットプロットが予想よりタカ派的でなかったり、よりあり得るのは、パウエル議長が記者会見でよりタカ派的でない表現をしたりする可能性です。こちらの方が、私にとっては、ベルウェザー銘柄の業績予想やテクニカル指標よりも、短期的な株式市場のパフォーマンスを占うはるかに重要なシグナルとなります。
まとめ
さて、タロットカードの占い師は、母の友人の娘が結局独身でいることを正確に当てられませんでした。羊飼いは、他の羊よりも上手に群れを導ける羊がいることを教えてくれるでしょうし、テクニカル指標は、ある市場環境ではより精度が高くなることもありますが、何よりそもそも、株式市場は短期的にはそれほど効率的ではなく、しばしば「計量機」というよりも「投票機」のような動きをします。
私が望むのは、「兆候」が何を伝えるものであれ、またFRBがそれとなく方向転換を行うか否かに関わらず、アセット・オーナーが長期の時間軸で、目下の市場環境の雑音や神経質さにとらわれず、3つの主要アセット・クラス(株式、債券、オルタナティブ資産)に投資し、かつ各アセット・クラス内で、十分に分散されたポートフォリオを維持することです。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
- 出所:出所:FedEx earnings guidance、2022年9月15日
- 出所:世界銀行、“Risk of Global Recession in 2023 Rises Amid Simultaneous Rate Hikes”、2022年9月15日
- 出所:ブルームバーグ、2022年9月19日
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MC2022-133