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(画像=TY/PIXTA)

クルマを売るより人を売れ。トヨタが社員に語り続ける理由

本記事は、大内一敏氏の著書『トヨタの営業マン「ざんねん」なヒトと「できる」ヒトの違い』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

車を売るより人を売る

ポイント―売れる営業スタッフは車を売るより人を売る

自動車ユーザーでも、同じメーカー、同じディーラーの車種だけを代替するタイプのお客様と、代替するたびに、他メーカーの車に買い替えるお客様もいる。

JDパワーアソシエイツの調査によると、お客様が車を代替する際、重視点のひとつにボディーデザインがあるという。昨今、各メーカーとも一部車種を除き、性能に大きな差がない中、デザインが代替時の大きな要因になるのは確かに頷ける。

しかし、デザインは個々人の好みであって、モデルチェンジをしたとき、新型車のデザインが、そのお客様の好みに必ずしも合致しているとは限らない。このことは営業職でさえ、自社扱いの車より他メーカーの車のスタイルが良いな、思うことがあることからも推察できるだろう。だが、売れる営業スタッフは、モデルチェンジで、どのようなデザインになろうとも、デザイン等にあまり影響されることなく、恒常的に販売実績を維持できるケースが多いようだ。

それに対して商談後「今回の新車、どうもお客様がお気に召さないようで…」などと上司に弁解するのは、だいたい売れない営業スタッフが多かったように思う。

つまり売れない営業スタッフは、車のデザインや性能等によって販売実績が左右される。

売れる営業スタッフは、車そのものよりも、顧客との揺るぎない人間関係や信頼関係で営業活動をしているので、デザインの良し悪しに、さほど影響されないように思えるのだ。

実際、同一メーカー、同一ディーラーから購入しているお客様に、どうして毎回同じメーカーの同一車種を購入するのか理由を訊くと、メーカーブランド、車の性能、デザイン等について触れるお客様も勿論いるが、大概は「もう営業の〇〇さんとは長いお付き合いだし、まめにいらっしゃるから、他のメーカーの車はね…」といった回答が多いものだ。

更に事例を挙げると、今まで、5年サイクルで代替していたお客様がいたとする。売れない営業スタッフが引き継ぐと代替サイクルが7年8年と伸びてしまったり、競合他社に買い替えられたりすることがある。

逆に優秀営業スタッフが引き継ぐと代替サイクルが早まり、3年目の初回車検到来時に必ず代替するようになった。というように、営業スタッフによって、代替サイクルが長くなったり、短くなったりするものだ。このように、車を恒常的に販売するためには、新規でご購入してくださる顧客数を増やすか、同じ顧客数であれば代替サイクルを早めるかのどちらかである。しかし成熟した自動車業界においてパイは固定化しているので、これ以上全体の保有台数を増やすのは困難な状態だ。

したがって車を増販するためには代替サイクルを早めるのが得策だ。そのためには、車の良し悪しやモデルチェンジにも左右されないように、営業スタッフとお客様との関係性を強化する顧客関係管理手法であるCRM(Customer Relationship Management)に徹することが求められる。

私が新入社員のとき、直属の上司から「車を売るより人を売れ」と良く言われたものだが、今でも私にとって営業における座右の銘になっている。

●〝大内流〟営業実績向上の極意

売れない営業スタッフは車を売り、売れる営業スタッフは車を売るより自分を売る。

×「ざんねん」なヒト(売れないドツボ)

人を売らずに、車を売っているので、車がお客様の好みでないと販売できない。

〇「できる」ヒト(売れるコツ)

車を売るより人を売っているので、車のスタイルに関わらず継続的に販売できる。

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<著者プロフィール>

大内一敏(おおうち・かずとし)
4年制大学卒業後、トヨタ系ディーラーで新車営業スタッフとして全国トップクラスの販売台数を上げ、金バッジ取得。販売マネジャーを経て、トヨタ自動車営業人材開発部インストラクターとして、提案型営業等、各種研修開発・担当。トヨタ系ディーラーで人材開発室長へ経て、2005年にスキル&モチベーション株式会社設立、代表取締役就任。新人・中堅・管理者・経営者等、幅広い階層に対し、現在まで延べ100,000人以上を対象に教育研修を担当。日刊自動車新聞にコラム連載、『カーディーラーの店長に読んでもらいたいドラッカー』は、35回連載後書籍化。

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