本記事は、大内一敏氏の著書『トヨタの営業マン「ざんねん」なヒトと「できる」ヒトの違い』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「土日のイベントのホット状況はどうだ?」「ちょっと厳しいですね」「そうか、ホット客、探してこいよ」「そうですね、今日明日でホット見つけてきます」
よく販社の職場でありがちな上司と部下の会話だが、よくよく考えると奇妙な会話である。
何を言いたいかというと、上司の「探す」という言葉と、部下の「見つける」といった言葉に、違和感を覚えた読者はいないだろうか。
営業活動は、お客さまと会って、車を買うのか、買わないのか、ご意向をお伺いし、買うというお客を「探し」「見つける」活動なのだろうか。
私は、そのような営業スタイルを「御用聞き営業」といっている。
経営学者のピーター・ドラッカー教授は、事業(仕事)の定義は「顧客の創造と維持である」としている。これをカービジネスに当てはめると、メーカーはマーケティングをすることによって顧客ニーズを把握し、魅力的な財やサービスを開発、製造することで、買いたいと思う顧客をつくることが顧客の創造である。
カーディーラーにおいては、実際に車を買うお客様をつくり、ご購入後も車検や点検等を継続して入庫してくださるお客をつくり、次回代替時も自社からご購入いただけるような固定客をつくることではないだろうか。営業活動の基本は、車を買うお客様をファインドアウト(探し出す)のではなく、クリエイト(創造)するものだ。
営業活動の基本をマンスリーで捉えると、次の図になる。不特定多数の対象客の中から、当月の活動対象と成り得るお客様を月初に選定、アプローチを掛ける。その中から、再訪問、テレコール等を実施し、(1)「継続フォロー客」をつくり、その中から、もしかしたら受注に結び付くかもしれない (2)「見込客」をつくり、更に商談を促進することで、やがて近日中に受注に至るであろう (3)「ホット客」をつくる。そしてホット客の中から、自動車販売を中核とした売上成果に結び付け最終的に (4)「受注客」とする。
これを時系列に整理すると、(1)継続フォロー客をつくり、(2)見込客をつくり、(3)ホット客をつくり、(4)受注客とする といったプロセスになる。このように各階層のお客様を探す(ファインドアウト)ではなく、つくる(クリエイト)とする。といった意識をもって営業活動に臨むことが重要だ。
読者の職場では「お客様を探す」という言い方をしていないだろうか。もし、していたとしたら今後は「お客様をつくる」と言い換え、顧客を探す営業スタイルから脱皮し、顧客を創造する営業スタイルに変革すべきである。
営業活動の基本は、買うお客様を探すの活動をするのではなく、不特定多数の活動対象にアプローチをかけることで、継続フォロー客をつくり、見込客をつくり、ホット客をつくり、最終的に売上成果に結び付ける活動である。
×「ざんねん」なヒト(売れないドツボ)
お客様を探す(ファインドアウト)する営業から脱皮できず、顧客を創造できない。
〇「できる」ヒト(売れるコツ)
お客様をつくる(クリエイト)することで、各階層のお客様を増やし実績を上げる。
<著者プロフィール>
大内一敏(おおうち・かずとし)
4年制大学卒業後、トヨタ系ディーラーで新車営業スタッフとして全国トップクラスの販売台数を上げ、金バッジ取得。販売マネジャーを経て、トヨタ自動車営業人材開発部インストラクターとして、提案型営業等、各種研修開発・担当。トヨタ系ディーラーで人材開発室長へ経て、2005年にスキル&モチベーション株式会社設立、代表取締役就任。新人・中堅・管理者・経営者等、幅広い階層に対し、現在まで延べ100,000人以上を対象に教育研修を担当。日刊自動車新聞にコラム連載、『カーディーラーの店長に読んでもらいたいドラッカー』は、35回連載後書籍化。