売れる営業マンはなぜ「一匹狼」が多いのか。できる営業と残念な営業の3つの違い

本記事は、大内一敏氏の著書『トヨタの営業マン「ざんねん」なヒトと「できる」ヒトの違い』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

一匹狼で活動する

ポイント:売れる営業スタッフは一人で活動する

一匹狼(いっぴきおおかみ、英語: lone wolf)は、群れから離れ単独で活動するオオカミである。訪問型の営業活動は基本的に孤独なものだ。もちろん店舗型の営業活動で上司に同席してもらうなど、組織で対応することもあるが、日々の訪問活動では「行ってきます」といって、店舗から一歩外に出れば、基本的に営業スタッフは1人で活動することが常だろう。

「営業スタッフは自己管理ができるようになれば一人前」というように、外出したとき、自分自身を律し、自己管理ができるかどうかが、営業実績を決める大きな要素でもある。

ある日公園の裏通りの路地で、営業スタッフのものと思しき車が数台駐車していて、昼寝をしている営業スタッフ、煙草を吸っている営業スタッフ、雑誌を目にしている営業スタッフなどがいた。

私がたまたまその前を通りかかったとき、若い営業スタッフの1人が煙草を吸いながら「朝から晩まで、売上げ! 売上げって! やってられないっすよ」と、先輩らしき営業スタッフにぼやいていると、先輩らしき営業スタッフも「分るよ、その気持ち、今朝、おまえ、ガンガン絞られてたもんな、あの課長、ああいう言い方しかできねぇんだよ」と、どうやら上司に対する不平不満を言いあっていたようだ。

これは私の勝手な想像だが、たぶん、あの場にいた営業スタッフは、あまり売れない営業スタッフの集まりではないかと思う。だいたい売れる営業スタッフは、上司の誹謗中傷など、そんなくだらん会話に時間を費やすような馬鹿なことはしないで、一人黙々と営業活動しているだろう。

売れない営業スタッフほど「つらいよな」「うちの会社はブラック企業」「分かるよその気持ち」などとお互いに「売れない病」の傷口の舐め合いをして慰めあっている。愚かなことだ。

●〝大内流〟営業実績向上の極意

売れる営業スタッフは、1人で行動するが、売れない営業スタッフは売れない仲間で集い、不平不満を漏らしながら互いの傷を舐めあう。営業スタッフは和して同せず。強い信念を持って営業活動に取り組むことだ。

×「ざんねん」なヒト(売れないドツボ)

売れない営業スタッフで群れ、無為な時間を過ごす。

〇「できる」ヒト(売れるコツ)

寸暇を惜しみ、営業活動を実施し、高実績を上げる。

ロールモデルがいる

ポイント―売れる営業スタッフはロールモデルが存在する

私がトヨタディーラー人材開発室にいたとき、営業力向上のため、あるシンクタンクとタイアップして自社営業スタッフのコンピテンシー(高実績者の行動特性)を抽出するために、自社のハイパフォーマー(高実績者)とローパフォーマー(低実績者)、それぞれ10名程を対象に、専門家によるインタビュー調査を行ったことがある。

その結果、売れる営業スタッフのコンピテンシー(高実績者の行動特性)項目の1つに「ロールモデル」の存在の有無があった。

「ロールモデル」を直訳すると「模範・役割・手本」であり、自分自身を向上させるために模範すべき対象となる逸材のことである。

そして高実績者にはロールモデルがいて、そのロールモデルを意識し、その影響を受けているという。

当時実施した調査によると、高実績者に対して「あなたが営業スタッフに成りたての頃、お手本としている上司や先輩はいましたか?」と質問すると「はい、います」と答えた。「その人は誰ですか」と訪ねると「課長の山田さんです」「3年先輩の佐藤さんです」といったように「ロールモデル」が実在する。

更に「その人のどこをお手本にしたいですか」と訪ねると「お客さまと短時間で親しくなり自分のファンのようにしてしまうことです」「商談が上手くて迅速なところです」といったように具体的なコンピテンシーを抽出することができる。

それに対して低実績者に同じ質問を投げ掛けても「模範にしたい上司、先輩ですか、特にいません」といった回答であり、更に「誰かいるでしょ」とフォローしても「思い付きません」といった調子である。

もちろん、すべての高実績者と低実績者に該当するわけではないが、シンクタンクの調査結果として「ロールモデルの存在の有無」がコンピテンシー項目の1つとして抽出された。

「学ぶは真似ることなり」というように「真似る」は「真に似る」と書く。つまり、優秀なロールモデルと同様な実績を上げられるように、ロールモデルの言動をよく観察して同じことができるように、真に似ればよいのである。

もちろん、中堅からベテランスタッフの域になれば、その人独自の営業手法や個性を活かした活動があっても良いとは思う。

だが、てっとり早いのは、高実績者の行動特性であるコンピテンシーの中で自分にもできそうなこと、自分に合っていると思われる行動を、とりあえず真似てみることだ。

これは自己成長の1つの方法であることは間違いないだろう。

因みに世界最大の小売企業ウォルマート創業者であるサム・ウォルトン氏は、「他社から学ぶことこそ成功への近道。私がやったことの大半は、他人の模倣である」と言っている。

●〝大内流〟営業実績向上の極意

売れる営業スタッフは身近なロールモデルを見い出し、そのロールモデルの良いところであるコンピテンシーを真似ながら自己成長するが、売れない営業スタッフは、たとえ身近なところにロールモデルがいたとしても、その存在に気づかない。もしくは気づいたとしてもそのロールモデルから何かを得たいという意欲に乏しい。自己成長するためにも、自分に合ったロールモデルを見い出すことから始めよう。

×「ざんねん」なヒト(売れないドツボ)

身近にロールモデルがいない、見い出せないので、成長が止まる。

〇「できる」ヒト(売れるコツ)

身近なロールモデルを見出し、良いところを見習うことで、自己成長する。

オン・オフの切り替えができる

ポイント―売れる営業スタッフは仕事のオン・オフの切り替えが上手く、売れない営業スタッフはが下手

もう昔のテレビCMだが大正製薬の栄養ドリンクのキャッチコピーに「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」というのがあった。私はこのコピーがとても好きで、自分もできることなら、このように時間を活用したいと思っていた。

昨今ワーク・ライフ・バランスという言葉が浸透してきたが「work–life balance」の意味は「仕事と生活の調和」と訳される。労働者1人ひとりが、やりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて、多様な生き方を選択・実現できることを目指す概念である。

正に冒頭に示した「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」のエッセンスを体現するための概念のように思う。

実際、私の知っている売れる営業スタッフは、仕事と遊びのオン・オフの切り替えが実に上手く、仕事をきっちりこなしながら確実に実績を上げ、休日は自分の趣味や家族との触れ合いの時間に当てるなど、ワークとライフのメリハリをつけ、しっかりバランスをとっている。

それに対し、「怠け者の節句働き」という言葉があるが、忘年会など会社の行事のときに限って「これから商談がありますので」などと言って、遅刻してくるのは売れない営業スタッフであることが多い。

そして、忘年会に遅れてきた営業スタッフに「商談結果は?」と訊くと、「駄目でした!」と答える。想定したしたとおりの回答だ。

1年に一度の忘年会なので、全員が出席できるように、1ヵ月以上も前から日程を決めているのにもかかわらず、時間調整できない営業スタッフに効果的なタイムマネジメントや自己管理はできないだろう。

このように、仕事のオン・オフの切り替えができない営業スタッフには、元来、怠け者で自己管理ができないタイプが多いようだ。

逆に真面目すぎて切り替えのできないタイプがいる。実績が上がらず、自分がチームの足を引っ張っているというコンプレックスから、休日でも出勤し、なんとなく仕事を続けてしまうタイプだ。

このようなタイプは一見熱心で責任感が強いイメージもあるが、真に実績を上げたいという気持ちよりも、上司や職場のメンバーに対して「私は一生懸命やってますよ」ということをアピールするためのスタンドプレーであることが多いようだ。実績を上げることではなく、スタンドプレーが目的になってしまっているため、当然、活動自体も見せかけなので、実績に結びつかないことが多い。

人間が一日に集中出来る時間は限られている上、きちんと休養が取れないと、後々の仕事や精神衛生にも悪影響を及ぼす。そのためミスが増えるなど、結局のところ更に仕事の効率を低下してしまうケースが多いようだ。このようなことにならないため、次のことが求められる。

当日すべき活動を明確にして、活動を終えたら速やかに帰宅する等、だらだら仕事を続けず、メリハリを付け、明日の仕事に向かう為のエネルギーを蓄積する習慣を持つこと。加えて3Rの実践だ。

3Rはストレスの対処の手法である、(1)レスト(Rest)休息、睡眠、(2)リラックス(Relax)音楽鑑賞、ストレッチ、(3)レクリエーション(Recreation)趣味、運動等々である。カウンセリング協会におけるメンタルヘルスでも効果が認められいるので是非実践して頂きたい。

●〝大内流〟営業実績向上の極意

売れる営業スタッフは、仕事のオン・オフの切り替えが上手く、確実に実績を上げるが、売れない営業スタッフは、だらだらと仕事を引きずり低迷する。仕事とプライベート、しっかりメリハリをつけ、ワーク・ライフ・バランスを保つことが重要だ。

×「ざんねん」なヒト(売れないドツボ)

だらだら仕事を続け、ストレスを蓄積し、ワーク・ライフ・バランスを乱す。

〇「できる」ヒト(売れるコツ)

仕事のオン・オフの切り替えが上手く、リフレッシュしながらワーク・ライフ・バランスを保つ。

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<著者プロフィール>

大内一敏(おおうち・かずとし)
4年制大学卒業後、トヨタ系ディーラーで新車営業スタッフとして全国トップクラスの販売台数を上げ、金バッジ取得。販売マネジャーを経て、トヨタ自動車営業人材開発部インストラクターとして、提案型営業等、各種研修開発・担当。トヨタ系ディーラーで人材開発室長へ経て、2005年にスキル&モチベーション株式会社設立、代表取締役就任。新人・中堅・管理者・経営者等、幅広い階層に対し、現在まで延べ100,000人以上を対象に教育研修を担当。日刊自動車新聞にコラム連載、『カーディーラーの店長に読んでもらいたいドラッカー』は、35回連載後書籍化。

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