生前贈与の現金手渡しはご法度?節税しながら贈与する3つの方法も紹介

生前贈与は節税をしながら親族に資産を渡す方法として、主にシニア層から注目されています。年間の贈与額を110万円以内に抑えれば、贈与税を発生させることなく資産を引き渡せます。この額を超える現金を手渡しした場合、申告漏れが発覚することはあるのでしょうか。

そこで本記事では、生前贈与の概要や気になるポイントを分かりやすく解説します。

そもそも生前贈与とは?

生前贈与とは、資産を保有している本人(贈与者)が生きているうちに、子や孫などに対して資産を渡すことです。年間110万円以内であれば非課税となるため、生前贈与は相続税を回避する手段として広く活用されてきました。

例えば、1,000万円の資産を保有している人が毎年100万円ずつ親族に贈与すると、税金を回避しながら10年間ですべての資産を引き渡せます。一方で、本人が亡くなった後に相続をするケースでは、その金額に応じて10~55%(※控除を除く)の相続税が課されます。

現金手渡しの生前贈与は問題ないのか?

生前贈与を行うにあたって、「少しなら現金手渡しでも問題ないだろう」と考える方も見られます。確かに、銀行口座を介した贈与や不動産の受け渡しなどに比べると、現金の手渡しによる贈与は発覚しにくいと感じるでしょう。

しかし、税務署はお金に関するさまざまな情報をチェックしているため、仮に少額の手渡しであっても申告漏れ・脱税を指摘されるリスクがあります。

税務調査が入りやすい2つのタイミング

税務調査が入りやすいタイミングには、「相続時」と「不動産登記時」の2つが挙げられます。

資産を持つ本人が亡くなった場合は、相続順位や遺言状に従って資産の相続が行われます。このとき、税務署は被相続人(故人)の資産や相続状況を確認し、過去を含めて不審な点が見つかった場合は税務調査を実施します。

また、マイホームなどを購入して不動産登記を行った際には、法務局から税務署にその情報が共有されます。このタイミングで資産状況に怪しい点(※)が見つかると、税務調査の実施リスクが高まります。

(※)収入や貯蓄額に比べて、物件の購入価格が高すぎる場合など。

いずれのケースにおいても、過去10年まで遡って確認される可能性があるため、不当な生前贈与を隠しきることは難しいでしょう。

過少申告や無申告が指摘されるリスク

贈与税の申告漏れが発覚した場合は、以下の罰則を科される恐れがあります。

無申告が発覚した場合の罰則一覧
・延滞税
・無申告加算税
・過少申告加算税
・重加算税
・不納付加算税 など

実際の罰則はケースごとに判断されますが、延滞税は最大で年14.6%、加算税は最大40%(※重加算税の税率)にまで上ります。特に悪質な場合は「脱税」とみなされる可能性もあるので、不当な贈与は避けるようにしましょう。

節税しながら生前贈与をする方法

現金手渡しの生前贈与はハイリスクですが、節税しながら親族に資産を渡す方法はほかにもあります。ここからは、法律やルールを守りながら節税する3つの方法を紹介します。

年間の贈与額を抑える

前述の通り、1月~12月までの贈与額を110万円以内に抑えれば、生前贈与をしても税金は課されません。ただし、このルールは資産を受け取る側の総贈与額が基準となるため、生前贈与の前には状況を確認しておく必要があります。

例えば、父方の祖父から年間60万円、母方の祖父から年間60万円を受け取る場合は、10万円分(60万円+60万円-110万円)に対して贈与税が課されます。

生活費の支援に留める

学生への仕送りや教育費、介護費など、社会通念上相当と認められるものは、贈与税の対象外になります。そのため、年間の非課税枠(基礎控除分)を超えそうな場合は、生活費の支援として渡す方法もひとつの手です。

なお、先を見越してまとまった金額を渡すと、贈与とみなされるリスクが高まるので、生活費の支援は必要なタイミングでのみ行いましょう。

特例を利用する

贈与を行う時期によっては、一定金額まで非課税として扱われる特例を利用できる可能性があります。例えば、2013年からは祖父母等から教育資金の一括贈与を受けた場合に、1,500万円を上限として非課税になる特例が実施されています(※2023年3月まで)。

この他にも2022年5月現在では、住宅資金や子育て資金、結婚資金などの贈与に関する特例が実施されています。特例は大きな節税につながるので、贈与の前にはその時点で実施されている制度をチェックしておきましょう。

節税をしながらの贈与は法律・ルールを守ることが前提

生前贈与の現金手渡しは、贈与者が亡くなった後に発覚するリスクがあります。税務署は過去の資産状況まで細かくチェックするため、不当な贈与を行うべきではありません。最後に紹介した節税方法も参考にしながら、法律・ルールを守って贈与を進めていきましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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