AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、クラウドとともに、「5G(第5世代移動通信システム)を支える4大技術」としてブロックチェーンが注目されています。
ブロックチェーン技術と5Gを融合させた未来は、どのような社会になるのでしょうか。
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5Gの特徴は、4Gをはるかに上回る「高速大容量」「低延滞」「多接続」です。5Gの導入によって通信の信頼性が著しく向上し、社会のIoT化やICT(情報通信技術)化を加速させることが予想されます。
一方でブロックチェーンには「耐改ざん性」や「トレーサビリティ(追跡可能であること)」「透明性」といったメリットがあります。
この2つの技術を融合させることにより、以下のようなメリットがもたらされると期待されています。
5Gの普及は生活の利便性を向上させるというメリットがある反面、ワイヤレス通信データや情報量の急増につながります。その結果、既存のシステムでは対応できなくなり、システムの安全性が損なわれる可能性が指摘されています。
ブロックチェーン技術は、このような課題のソリューションとなる可能性を秘めています。
例えば、ブロックチェーン技術を分散型データベースシステムとして活用することにより、トランザクション(取引)に関するすべての情報を効率的に記録できます。また、プライバシーの保護や情報の検証に活用することにより、より強力なセキュリティシステムを構築できるでしょう。
5Gの普及があらゆるサービスの自動化を加速させる中、スマートコントラクトの需要拡大が予想されています。スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で契約に携わる一連のプロセスを自動的に実行する仕組みのことです。
特にデスクワークを自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)や人工知能(AI)プラットフォームなどのテクノロジーと組み合わせることにより、自動化の範囲が劇的に広がる可能性があります。
また、コストや時間、労力の削減効果も期待されています。
このような背景があり、世界中で5Gにブロックチェーン技術を役立てるための研究・開発が進んでいます。具体的な取り組みを見てみましょう。
テクノロジーの進化により、近年の車は走行中にクラウドやIoTなどを介して各種データを取得・解析・送信しています。あらゆるデータやシステムがネットワークと接続していることにより、ハッキングのリスクが高まります。
日本においても2020年に自動運転レベル3(条件付き運転自動化)が実質的に解禁されましたが、今後レベル4、5へと進化する上で、さらに膨大なデータの収集・分析が必要になります。
IBMはこのような課題に向けて、2019年に自動運転車のデータを管理するためのブロックチェーンシステムの特許を米国特許商標庁から取得しました。現在は他の自動車メーカーと共同で、運転手のプライバシーを配慮した通信システムの開発に取り組んでいます。
将来は自動車の識別や所持者履歴、保証、走行距離、整備・車検・点検サービスに関する情報など、あらゆるデジタル記録をブロックチェーンで管理できるようになるかもしれません。
韓国サムスンと大手モバイルキャリアのSKテレコムは2020年、ブロックチェーンベースのID認証システムを搭載した世界初の5Gスマホ「Galaxy A Quantum」を発表しました。
ブロックチェーン技術や5Gの普及率で世界トップを目指す中国においても、通信大手の中国電信が5Gブロックチェーン・スマホの実現を目指し、開発を進めています。
同社が2019年に発表したホワイトペーパーによると、ブロックチェーン対応の5G SIMカードに秘密鍵とユーザーIDを保存することで、高度なセキュリティプラットフォームや独立した本人認証システムなどの構築を目指しているとのことです。
実現すれば、暗号資産の転送がスマホから安全かつスピーディーに行えるなど、生活の利便性がさらに高まると同時に、金融サービスの多様化も期待できます。
5Gの導入により、スマートシティへの注目がますます高まっています。スマートシティとは、先端技術を用いて社会の効率化を図るために設計された「持続可能な都市」のことです。統計調査プラットフォームのStatista (スタティスタ)のデータによると、2020年5月時点で世界の174以上の都市でスマートシティ計画が進行しています。
韓国の世宗特別自治市は2020年、科学技術情報通信部や韓国インターネット振興院、LGグループの情報技術部門であるLG CNSなどと共同で、 5Gネットワークを利用した「自動運転車用分散型識別子(DID)検証ソリューションプロジェクト」を立ち上げました。
同自治市のスマートシティ・ソリューション計画の一環で、自動運転車と周辺システムのデジタルIDを検証するブロックチェーン・プラットフォームを開発し、高セキュリティかつシームレスな自走運転車走行環境の構築を目指します。具体的には、V2X(Vehicle-to-Everything)通信を利用して、他の車両や信号機などとの間で共有されるデータに複数の暗号化レイヤーを組み込み、安全性を維持したシームレスな情報共有の実現を目指しています。
世宗特別自治市の取り組みは、自動運転車とスマートシティ・インフラストラクチャ間の情報共有を巡るセキュリティ問題への対策の模範例となるかもしれません。
このように、ブロックチェーンのポテンシャルを引き出すためのさまざまなプロジェクトが世界中で進められています。ブロックチェーンは次世代の社会インフラを担うことを期待されている技術であると同時に、投資対象としても注目されている領域です。Wealth Roadでは今後も、ブロックチェーン市場の動向をレポートします。
※上記は参考情報であり、特定企業の株式や暗号資産などの売買及び投資を推奨するものではありません。