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「つみたてNISA」は年末調整や確定申告が必要? 非課税口座で賢く資産形成

金融庁によると2021年3月末時点での「つみたてNISA」の口座数は360万超。Wealth Roadの読者にもつみたてNISAで資産形成をしている(もしくは検討している)」という方は多いでしょう。

中には、「つみたてNISAは便利な資産形成方法だと思うが、年末調整や確定申告が必要になるのだろうか」と心配な方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、つみたてNISAの概要やメリット・デメリットを紹介した上で、年末調整や確定申告、課税されるケースなどについて解説します。

つみたてNISAとは何か

まずは、つみたてNISAの概要をおさらいしておきましょう。つみたてNISAは、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度で、2018年1月にスタートしました。非課税期間は20年間で、新規投資額の上限は毎年40万円(非課税投資枠は20年間で最大800万円)です。

つみたてNISAのメリット

つみたてNISAには、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下のとおりです。

利益が非課税になる

本来、金融投資(有価証券への投資)で利益が出た場合は、20.315%の税金がかかります。100万円の利益を出しても、20万3,150円は税金で取られてしまうということです。しかし、つみたてNISAでは非課税期間は20年間、新規投資額の上限は毎年40万円(非課税投資枠は20年間で最大800万円)という制限はあるものの、口座内で生じた利益は全額非課税です。

100万円の利益を出しても税金がかからず、100万円が丸々手元に残る(手数料は考慮せず)というわけです。税金が発生しないということは、売却金額や分配金収入をすべて次の投資に回すことができるため、税金が取られる通常の口座に比べて、資産運用において重要な「複利効果」がより高まるのです。

金融庁がある程度まで投資対象を絞ってくれている

つみたてNISAで購入できる金融商品は、金融庁が事前に選定したものだけです。2021年6月18日更新の「つみたてNISA対象商品届出一覧(運用会社別)」を見ると、指定インデックス投資信託が173本、指定インデックス投資信託以外の投資信託が19本、ETFが7本の合計199本で、この中から投資先を選ぶことになります。

なお、上記は金融庁が選定している数であり、すべての金融機関で199本から選べるわけではありません。金融機関によって取扱数に差があり、大半をカバーしているところもあれば、少ししか取り扱っていないところもあります。つみたてNISA口座を開設する金融機関を選ぶ際は、取扱数を判断基準にしてもよいでしょう。

選定基準を一言でいうと、「長期・積立・分散投資に適したもの」です。具体的には、手数料がゼロ(ノーロード)であること、信託報酬が一定水準以下であること、分配頻度が毎月でないこと、などの条件を満たしたものがラインナップされています。

世の中には多くの投資信託やETFがあるので、金融庁が一定数まで絞ってくれているのは、ひとつのメリットといえます。特に投資初心者は自分で選定するのが難しいため、嬉しいポイントです。

少額から始めることができる

中には「投資を始めてみたいが、まとまったお金が手元にない・・」という人もいるでしょう。つみたてNISAであれば、少額から始めることができます。前述のとおり、つみたてNISAは少額からの積立投資を想定して作られた制度だからです。

新規投資額の上限は毎年40万円なので、12ヵ月で割ると毎月約3万3,333円を投資できることになります。

なお、必ずしも毎月約3万3,333円を投資しなければならないわけではありません。最低購入金額は金融機関によって異なりますが、基本的には無理のない積立金額を設定することができます。

つみたてNISAのデメリット

では、つみたてNISAにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。主なデメリットは以下のとおりです。

損益通算と繰越控除ができない

つみたてNISA口座で保有している金融商品が値下がりし、売却して損失が出た場合でも、他の口座(一般口座や特定口座。詳細は後述)で保有している金融商品の利益との損益通算はできません。また、3年間の繰越控除も認められていません。つみたてNISA口座では、売買損失はなかったものとされることに注意が必要です。

まとまった金額を投資することができない

前述のとおり、新規投資額の上限は毎年40万円で、非課税投資枠は20年間で最大800万円です。この金額をどう感じるかは人によると思いますが、資産をたくさん持っていたり、投資余力が大きかったりする人には投資枠が小さく、あまり魅力がないかもしれません。いずれにせよ、まとまった金額を一度に投資することができないことはデメリットといえるでしょう。

定められた投資信託以外には投資できない

前述のとおり、つみたてNISAで購入できる金融商品は、金融庁が事前に選定したものだけです。投資初心者にとっては選びやすいかもしれません、もっと広い選択肢の中から商品を選びたい人にとってはもの足りないでしょう。定められた投資信託やETF以外に投資できないこともデメリットといえます。

つみたてNISAは年末調整や確定申告が不要

つみたてNISAを利用した場合、年末調整や確定申告は必要なのでしょうか。結論からいえば、「つみたてNISAは年末調整や確定申告が不要」です。その理由を説明する前に、年末調整や確定申告について、改めて制度を確認しておきましょう。

そもそも年末調整とは

「年末調整」とは、給与の支払者(会社)が本来徴収すべき1年間の所得税の総額を再計算し、源泉徴収済の金額と比較した上で「過不足額の精算(調整)」することです。「源泉徴収」とは、会社が給与や賞与を支払う時にあらかじめそこから所得税を徴収し、従業員に代わって納税する制度です。本来徴収すべき所得税よりも多く徴収されていた場合は、年末調整によって税金が還付されます。

そもそも確定申告とは

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得の金額とそれに対する所得税及び復興特別所得税の額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算するための手続きのことです。

ただし、一般のサラリーマンは「年末調整は毎年行っているが、確定申告は行っていない」という人が多いでしょう。これは、給与所得が2,000万円以下、1箇所からのものであり、給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告が不要(年末調整を行うだけでよい)とされているためです。

確定申告のルールは複雑で、「自分が確定申告をしなければならないかどうか」は慎重に判断する必要があります。詳細は、以下の国税庁ウェブサイトを参考にして下さい。それでも判断がつかない場合は、税理士や最寄りの税務署員に相談するとよいでしょう。

国税庁ウェブサイト 確定申告が必要な方

証券口座の4つの種類

なぜ「つみたてNISAは年末調整や確定申告が不要」なのでしょうか。つみたてNISAはどれだけ利益が出ても非課税なので納税が発生しないため、納税のための手続きである年末調整や確定申告も不要だからです。

それを踏まえて、証券口座の4つの種類について確認していきましょう。4種類の違いがわかると、さらに理解が深まるはずです。

・一般口座
特定口座やNISA口座で管理していない上場株式等を管理する口座のことです。原則として、投資家自らで年間の譲渡損益を計算し、必要に応じて確定申告を行う必要があります。

・特定口座(源泉徴収あり)
特定口座とは、上場株式等の譲渡益に対する所得税、住民税の納税を簡易な納税申告手続きで完了することができる口座のことです。1つの証券会社につき1口座しか開設できませんが、証券会社ごとに特定口座を開設することは可能です。開設時には、源泉徴収あり・なしを選択する必要があります。源泉徴収ありの場合は金融機関が所得税・住民税を源泉徴収し、代行して納付するため、原則確定申告が不要になります。

・特定口座(源泉徴収なし)
源泉徴収なしの場合、金融機関が作成した「年間取引報告書」を利用することで、簡易な確定申告で納税が可能です。

・NISA口座
毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる口座のことです。つみたてNISAの他に、一般NISAとジュニアNISAがあります。

したがって、原則として年末調整と確定申告が不要になるのは「特定口座(源泉徴収あり)」と「NISA口座」の2つです。つみたてNISAは「NISA口座」の一種なので、つみたてNISAも年末調整や確定申告が不要ということになります。

つみたてNISAで課税されるケースはある?

つみたてNISAでは、確定申告の必要がありません。しかし、「課税されるケース」はあります。それは、配当金等の受け取り方法を「株式数比例配分方式」にしていない場合です。

ただし、配当金等の受け取り方法を株式数比例配分方式にしていない人は少なく、またつみたてNISAでは上場株式を購入することができないため、上記はかなり稀なケースでしょう。

株式数比例配分方式とは、各証券会社に預けている上場株式等の数量に応じて、配当金や分配金を証券会社の口座で受け取ることができる仕組みのことです。NISA口座で購入した上場株式等の配当金等を非課税にするためには、株式数比例配分方式である必要があります。

NISA口座で保有する株式の配当金やETF・REITの分配金(以下「株式の配当金等」)が、証券会社の口座で受け取る「株式数比例配分方式」ではなく、郵便局や指定の銀行口座で受け取る「配当金領収証方式」や「登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式」になっていると、株式の配当金等は非課税にならず、20.315%の税率で源泉徴収されます。かつ利益が20万円を超えている場合は確定申告を行う必要があります。

具体的には、2つの選択肢があります。1つは総合課税(各種の所得金額を合計して所得税額を計算すること)を選択して、配当控除の適用を受けることです。もう1つは申告分離課税(他の所得金額と合計せずに分離して税額を計算すること)を選択して、特定口座や一般口座で保有する株式等の譲渡損失との損益通算や繰越控除をすることです。「つみたてNISAは損益通算や繰越控除はできない」と述べましたが、この場合は例外です。

つみたてNISAで資産形成始めてみては?

ここまで、つみたてNISAの概要やメリット・デメリットを紹介した上で、つみたてNISAは年末調整や確定申告が必要かどうか、課税されるケースなどについて解説してきました。

ごく稀なケースは存在するものの、つみたてNISAは年末調整や確定申告が不要です。躊躇していたという方もこうした制度を活用し老後の資産形成を考えていきましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。

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