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お金の価値を考えてみよう! インフレの状況で現金保有は最低限にした方がいい理由とは?

お金の価値を考えてみよう! インフレの状況で現金保有は最低限にした方がいい理由とは?

近年、モノの値段が上がり、日々の生活を圧迫するインフレですが、インフレは物価が上がる以上に僕たちの資産運用に大きな影響を与えます。この記事では、インフレ下では「現金で保有することは確実に購買力を下げてしまう」ということをお話しします。

インフレはお金の価値を下げる

インフレとはモノの値段が上がる現象ですが、言い換えれば「モノの値段が上がる≒お金の価値が下がる」ということでもあります。今年10万円で買えたものが来年には11万円になるということは、10万円の価値が下がったため、さらに1万円多く払う必要があるとも考えることができます。

お金の価値が下がるというのは直感的には理解できないかもしれませんが、インフレ下において物価上昇率と同程度の運用ができなければお金の価値、つまり購買力は低下していきます。

物価上昇率3%だと24年で物価は2倍になる

3%の物価上昇が続くとおおよそ24年後には物価は2倍になります。つまり、24年後の老後に2,000万円あれば生活できると思っている人は、3%の物価上昇が続く場合には4,000万円準備しておく必要があるということです。

インフレ下で重要なことは実質金利

デフレ下では銀行などの金利を見る際には、表示されている金利(これを名目金利といいます)を素直に受け取っても問題なかったのですが、インフレ下においては名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利で判断することが重要となります。

例えば、現在メガバンクの普通預金は金利0.2%(2025年9月時点)が多いですが、これは実質金利で見ればどうでしょうか?

最近のインフレ率はおおよそ3%で推移しています。つまり、普通の預金の実質金利はマイナス2.8%(0.2%−3%)となります。金利がプラスだとお金は増えていき、たくさんモノを買えるわけですが、金利がマイナスということは、お金の価値が下がっていき、購買力が低下していきます。

つまり、物価上昇率より銀行預金の金利が低い時は、お金の価値は下がり続けていくので、購買力を維持するためには資産運用が大切となってきます。

借金も実質金利で見ると、見え方は変わる

銀行預金とは、僕たちが銀行にお金を貸しているわけですが、逆にお金を借りる側からすると実質金利がマイナスであることはどういう意味になるでしょうか?

実は、実質金利がマイナスの場合、借金の負担は相対的に小さくなります。直感的に理解が難しいと思うので、例を使って考えてみましょう。借金をして購入するもので代表的なものは住宅ですので、住宅ローンを使って考えてみましょう。

2025年9月時点のフラット35の金利は1.890%です。(借入期間21~35年、団信あり、自己資金10%以上)

かつて1%を切っていたことを考えると高く感じますよね。しかし、インフレ率が3%であることを考えれば、実質金利はマイナスとなります。では仮に住宅ローンを返済している期間インフレ率が3%で推移するとどうなるでしょうか?

月の支出総額が30万円で、内訳が住宅ローン返済10万円、それ以外の生活費20万円だったとしましょう。住宅ローンは固定金利ですから、インフレ率がどうであれ返済額は10万円で固定されます。しかし、生活費の20万円は物価上昇の影響を受けます。

物価が3%上昇すると、翌年は20.6万円(20万円×1.03%)となります。さらに翌年は20.6万円の生活費は約21.2万円となります。このように住宅ローンの返済額が変わらず、生活費だけ上昇していくと支出総額に占める住宅ローン返済額の割合は小さくなっていきます。

支出総額30万円のうち10万円が返済額だった場合、住居費の割合は約33.3%です。しかし、20年目ではインフレの影響で生活費は約36.1万円となっています。しかし、住宅ローン返済額は10万円のままですので、支出総額に占める住居費の割合は約21.6%まで低下します。

インフレ率3%が続くかは不確実なので、あくまで一例ですが、このようにインフレ下では名目の数値ではなくインフレ率を加味した実質金利で見なければ、正しい判断ができないことを理解しておきましょう。

年数 >0年目 >1年目 >2年目 >3年目 >4年目 >5年目 >10年目 >20年目
支出総額 300,000 306,000 312,180 318,545 325,102 331,855 368,783 461,222
生活費 200,000 206,000 212,180 218,545 225,102 231,855 268,783 361,222
住宅ローン 100,000 100,000 100,000 100,000 100,000 100,000 100,000 100,000
住居費割合 33.33% 32.68% 32.03% 31.39% 30.76% 30.13% 27.12% 21.68%

購買力を維持するための資産運用をしよう

これまで見てきたとおり、インフレ下においては、これまでの運用の考えや借金の考え方とは異なります。これまでは、運用が怖いから現金で保有しておくことは合理的な部分がありましたが、インフレ下において現金保有は確実にお金の価値を下げる選択肢となります。

だからこそ、インフレから資産を守るためには資産運用をする必要があります。株式のみのハイリスクな運用は不要ですが、せめてインフレ率より高い利回りが期待できる資産配分で運用することを意識しましょう。

さらに、運用時間が短い場合はインフレによる購買力低下以上に運用による損失の影響が大きいこともありますので、生活防衛資金(生活費の1年分程度)などは運用するべきではありません。また5年以内に必要な資金については、極力リスクを抑えた資産で運用するなど時間軸で考えることが重要です。

インフレ下において資産運用はお金を増やすこと以上にお金の価値を守るために必要であることを覚えておきましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。


著者:井上ヨウスケ
役者から転身した異色のファイナンシャルプランナー。演劇で培った「伝える力」を活かし、「誰よりもわかりやすく」をモットーにお金の知識を発信。27歳でFP資格を取得し、独立系FPとして講演や相談業務を展開。動画講座やYouTubeでも活動し、「どこでも働ける」を実現。投資や保険の知識に加え、価値観を軸にした柔軟なお金の使い方も提案する。現在は高知県在住。

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