iDeCo(イデコ)はお得な老後資産形成の方法です。控除のメリットを最大限に享受するために、受け取り方も工夫したいところ。人によって状況は異なるので一概にはいえませんが、iDeCoを受け取るときは「退職所得控除を活用するのが有効」といわれています。
そこで今回は、iDeCoの受け取り方を紹介しつつ、「iDeCoの受け取り方は退職所得控除を活用するのが有効」といわれている理由について解説します。
iDeCoの受け取り方は3種類
iDeCoの受け取り方は大きく分けて、一時金、年金、その併用(一時金+年金)の3種類があります。併用とは、例えば「半分を一時金として受け取って、もう半分を年金で受け取る」といったケースです(必ずしも半分ずつにする必要はありません)。
iDeCoの大きなメリットは、受け取る際に各種控除の対象になることです。具体的には、一時金として受け取る場合は「退職所得」に分類され、「退職所得控除」の対象になります。年金として受け取る場合は「雑所得」に分類され、「公的年金等控除」の対象になります。
ここからは雑所得と退職所得の計算式や、控除金額の計算方法について見ていきましょう。
退職所得の計算方法
退職所得の金額は、以下のように計算します。
(源泉徴収される前の収入金額-退職所得控除額)× 1/2=退職所得の金額
収入金額から差し引くことができる退職所得控除額は、以下のように計算します。勤続年数(iDeCoの場合は拠出年数)が長ければ長いほど、控除額が大きくなる仕組みです。
勤続年数(A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×A (80万円に満たない場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(A−20年) |
雑所得の計算方法(公的年金)
公的年金の雑所得の金額は以下のように計算しますが、計算結果がそのまま雑所得の金額になるとは限りません。雑所得の金額は、「公的年金等」「業務に係るもの」「その2つ以外のもの」の合計額だからです。
収入金額−公的年金等控除額=公的年金等の雑所得
公的年金等控除は、「65歳未満か65歳以上か」や「公的年金等の収入金額の合計額」によって控除額が異なります。また、「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額(以下、他の収入)」が1,000万円以下か、1,000万円超2,000万円以下か、2,000万円超か、によっても控除額が異なります。
例えば、65歳以上で他の収入がなく、公的年金等の収入金額の合計額が110万円以下の場合は、所得金額がゼロになるため税金はかかりません。公的年金の雑所得は、各人の状況によって当てはまる計算式が異なりますので、詳細は以下の国税庁ウェブサイトを参照して下さい。
なお、「公的年金等の収入金額の合計額」はiDeCoの年金受け取り額だけでなく、国民年金や厚生年金といった他の公的年金の収入も合算する必要があることに注意が必要ですので、全て合わせて控除額の範囲内なのであれば年金受け取りを選択しても良いでしょう。
また、iDeCoに使える「退職所得控除」の枠が残らないほど多くの退職金が出るという場合も年金受け取りを検討してみても良いかもしれません。
ただし、年金受け取りが終わるまで口座管理手数料や給付手数料がかかる点は注意が必要です。
iDeCoの受け取り方は退職所得控除を活用するのが有効?
iDeCoの受け取り方は一時金、年金、その併用(一時金+年金)とあり、退職所得控除を活用する(一時金として受け取る)のが有効といわれています。
前述のとおり、退職所得控除は勤続年数によって変動します。勤続年数が長い場合は、退職所得控除も大きくなります。例えばiDeCoに30年間加入していた場合、退職所得控除は800万円+70万円×(30年−20年)=1,500万円です。収入が控除額を超えるかどうかはそれまでの拠出金額や運用成績にもよりますが、それなりに大きな額を控除できることになります。
加えて退職所得の場合は公的年金の雑所得と異なり、源泉徴収される前の収入金額から退職所得控除額を差し引いた上で、さらに1/2にすることができます。所得税は原則として累進課税(所得が大きいほど課税される率が大きくなる)なので、1/2にする前に比べて低い税率が適用される可能性が高くなります。
また、退職所得は原則として、他の所得と分離して所得税額を計算(分離課税)します。累進課税において他の所得との合算で計算すると税負担が重くなりやすいため、この点でも退職所得は有利です。
これは国税庁ウェブサイトにも記載されていますが、退職金(退職金)は長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであることなどから、税負担が軽くなるよう配慮されています。したがって、退職金は一時金で受け取るほうが有利になりやすいといえます。
ただし、一時金受け取りには注意も必要で、退職所得控除の枠を退職金でほとんど使い切ってしまうような場合はiDeCoに使うことができません。ここで一時金受け取りを選んでしまった場合に退職所得が増える分、多くの税金を払わなければならなくなる恐れがあります。
この場合は退職年を60歳から65歳に遅らせるなど受け取りタイミングをずらすか、退職所得控除の枠内まで一時金にし、残りを年金にする併用での受け取りが良いでしょう。
自身の状況に合った受け取り方法を
ここまでiDeCoの受け取り方を紹介しつつ、「iDeCoの受け取り方は退職所得控除を活用するのが有効」といわれている理由について解説してきました。国税庁ウェブサイトにも記載されているように、退職所得控除を含めて退職所得は非常に優遇されています。しかし、退職金のタイミングなど考慮すべきこともありますので、ご自身の状況に合った受け取り方をよく確認しましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。