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「貯蓄の代わりに生命保険」という考え方の注意点

「掛け捨ての生命保険に入るのは、お金をムダにしているようでもったいない」と思い、貯蓄型の生命保険に加入する人は少なくありません。しかし、貯蓄代わりに保険を利用するという考え方には、注意すべき点があります。

生命保険のコスト構造はわかりにくい

加入している生命保険の保険料のうち、保険会社に支払っている費用はどれくらいかご存じでしょうか。

保険料は、「純保険料」と「付加保険料」に分けられます。純保険料は保険金の支払いに充てられ、付加保険料は保険会社に支払う手数料に充てられます。通常は、その割合は公表されません。

しかしネット生保の先駆者であるライフネット生命は、唯一(2018年同社調べ)内訳を公表しています。同社の保険料に占める付加保険料の割合は20~40%です(保険商品や保険金額、加入年齢、性別などによって異なる)。

ネット生保は店舗を持たずインターネットで申し込みを受け付けるため、人件費や店舗運用費用が抑えられることで、保険料が安いのが特徴です。そのライフネット生命でも少なくとも20%以上の手数料がかかっていることを考えると、生命保険が基本的に高コスト体質であることがわかります。しかし付加保険料の割合は公表されていないので、このことは知られる機会がほとんどないのです。

人気の低解約返戻金型終身保険が持つリスク

「貯蓄性のある生命保険」と聞くと、堅実なイメージを持つかもしれません。将来のために、資産運用の一環として加入している人もいるでしょう。特に最近は、払込期間中の解約返戻金が少ない代わりに保険料が安い、低解約返戻金型終身保険が人気です。

しかし、保険を資産運用の代わりにしようという考えは、注意が必要です。低解約返戻金型終身保険は保険料が安いとはいえ、掛け捨てのタイプと比べるとかなり高いです。たとえば35歳から60歳まで払い込む場合、保険金500万円につき月額保険料は1万円を超えます。

お子さんがいる家庭では、万一の際に学費や生活費に充てるため、2,000万~3,000万円の保障を準備することも珍しくありません。これを貯蓄型生命保険でまかなおうとすると、月数万円の保険料が家計を圧迫することになります。

毎月の保険料負担が重いと、解約せざるを得なくなることもあります。特にお子さんが大学に通っている間は、学費の捻出に苦労する家庭も少なくありません。やむを得ず解約し、解約返戻金が払い込み総額を大きく下回ることで大損してしまうおそれもあります。

メリットは強制的に貯蓄できることと節税

一方、毎月払いの生命保険は強制的に引き落とされるため、貯蓄が苦手なひとが資産形成をするのに適しています。同様の効果は金融機関の積み立て定期預金や財形貯蓄などにもあります。

生命保険特有のメリットとしては、所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されることです。この生命保険料控除には年間4万円の上限があり、他に死亡保障保険に入っていないのであれば、銀行に貯金するよりも有利になる可能性は高いといえます。

相続税の節税効果もあります。死亡保障の保険金は法定相続人ひとりにつき500万円までが無税です。相続税には基礎控除があり、課税されるケースは8%ほどですが、都内に一戸建てを構えているなどある程度の資産があれば課税される可能性はあります。その場合、生命保険は有効な相続対策となるでしょう。

保障と運用は分ける考え方もある

資産運用の鉄則には、「リスクに見合ったリターンを得ること」「同じような内容であればコストの低いほうを選ぶこと」「理解できるものにだけ投資すること」などがあります。

低解約返戻金型終身保険で、これらを守ることは難しいでしょう。低金利のため返戻率は低く、大きなリターンは期待できず、保険会社に支払うコストも高く、その内容を知ることもできません。生命保険の目的は、あくまでも保障です。資産運用をするなら、投資信託などの金融商品を購入したほうが合理的な場合もあります。

上記のメリットやデメリットなどを考慮し、「貯蓄の代わりに生命保険」がご自分に合わないと考えるのであれば、代替案として、保険料が安い掛け捨ての保険に加入し、別で投資信託を購入する方法があります。

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終身保険と投資信託を比べてみましょう。払込期間中に解約すると損をしやすい低解約返戻金型終身保険と違い、投資信託は基本的に時価で換金できます。

価格変動リスクはありますが、過去の値動きは明らかになっており、運用する資産も明示されているのでリスクを把握できます。たとえばリターンを追求するなら新興国株式に、堅実に運用したいのであれば債券ファンドに投資するといった選択ができます。

投資信託はコストも明確です。購入時にかかる販売手数料、保有期間に応じてかかる信託報酬、解約時にかかる信託財産留保額などは、目論見書や証券会社のホームページなどで確認できます。

販売手数料と信託財産留保額はかからないことも多く、前者は高くても3%程度です。後者は投資信託のタイプによって異なりますが、おおむね0%台前半~3%です。付加保険料の20%と比べるとかなり割安と言えるのではないでしょうか。

保障と資産形成は別で考えるというのも一案

貯蓄型の生命保険として低解約返戻金型終身保険が人気を集めていますが、保障と資産形成は別で考えたほうが合理的な場合もあります。投資信託のような金融商品で運用できるのであれば、掛け捨ての生命保険と併用することで、それぞれのメリットを活かすことができます。お金のことに手間を掛けたくないというのであれば、貯蓄型生命保険の加入も悪い選択肢ではありません。

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