話題の次世代ネットワーク「5G(第5世代移動通信システム)」関連銘柄への投資に興味はあるものの、成長の可能性や投資価値に疑問を感じている人も多いのではないでしょうか。
専門家の意見を参考に、適切な投資時期や注意点を見ていきましょう。
目次
近年、インターネットユーザーの増加に対応するだけではなく、IoTを利用したスマートシティー化や自動運転車の実用化、ワイヤレスVR体験などで、新たなデータ共有ネットワークが必要とされています。
これらの課題を解決すべく、各国が競うように開発・導入に取り組んでいる「第4産業革命の中核的技術」が5Gです。
5Gがもたらす3大メリットは、「高速・大容量」「低遅延」「多接続」です。4Gと比較すると、通信速度は20倍、遅延は10分の1、同時接続数は10倍になると言われています。
消費者はよりきれいな画像や動画が楽しめるほか、ほぼリアルタイムの通信が実現し、IoT(モノのインターネット)機器への接続が大幅に向上します。
5Gは生活の質の向上に役立つだけではなく、ビジネスや経済の新たな収益源にもなります。
グローバル・モバイルサプライヤー協会の調査で、2019年4月時点で世界88ヵ国、224の事業者が5Gに積極的な投資を行っていたことが明らかになっています。韓国は、世界に先駆け広範囲で5Gネットワークを導入しています。
国際市場調査企業BISリサーチの調査によると、世界の5Gインフラ市場は2019年から2025年にかけてCAGR(年間成長率)75.09%で急成長し、2020年に25億5,000万ドル(約2兆7,538億円)、2025年までに420億ドル(約4兆5,356億円)を突破する見込みです。
またスマホの2割以上が5Gへ移行し、5Gネットワーク市場は26億ドル(約2,808億2,385万円)に成長すると考えられています。
IHSマークイットは、それにともなって5Gネットワークを利用した商品・サービスの購入も急増し、2035年までに12兆3,000億ドル(約1,328兆5,128億円)規模に達すると予想しています。
世界中が注目する技術ですが、5G市場には過去のデータがありません。
そこで専門家の見解をもとに、5G投資を検討するにあたって考慮すべき3つのポイントを紹介します。
5G市場への参入加速する中、専門家の間では「中国が市場をリードするのではないか」との見方が強まっています。
約8億5,000万人という世界最大のモバイルユーザー数を誇る中国は、2019年11月に北京や上海を含む国内50都市で「世界最大の5Gネットワーク」を始動させています。
世界のモバイル市場トップの座を韓国サムスンと争う中国のファーウェイの存在も、5G加速の起爆剤になりそうです。
ファーウェイは、子会社であるHiSiliconを通して独自の5Gチップを開発中で、中国移動通信を含む国内大手通信3社と取引を行うなど、中国における5Gネットワークの拡大に貢献しています。
多くの専門家は、5Gに秘められた「第4産業革命の中核的技術となる可能性」を肯定する一方で、広範囲で普及させるためにはクリアすべき課題が多く残されていると指摘しています。
最大の課題は、インフラの構築です。5G基地局の設置や機器の開発、メンテナンスなどに莫大なコストがかかるだけでなく、特に米国の一部の自治体で5G基地局の設置に反対する動きも見られます。
セキュリティに関する懸念も軽視できません。欧州委員会と欧州連合サイバーセキュリティ機関の支援のもと、5Gネットワークのサイバーセキュリティのリスク評価を実施したEU加盟国は、サイバー脅威に対する脆弱性を指摘しています。
また、「5Gの端末は4Gよりもかなり高額になる」と予想されており、普及に時間がかかる可能性もあります。
これらを踏まえると短期的な利益を期待せず、中長期的な視点で投資を行うべきでしょう。
投資の適切な時期については、専門家の意見が分かれます。
「一部の国で導入され始めた今こそが投資のチャンス」という意見もあれば、「普及するまで待ったほうがいい」という意見もあります。
2020年にはAppleをはじめとする大手スマホメーカーが5G対応機種を発売する可能性が高いことを考えると、「関連銘柄が急騰する前に投資しておく」という選択もあるでしょう。
一方、米国の大手電気通信企業ベライゾン・コミュニケーションズのハンス・ベストバーグCEOは、2020年に米国の5Gネットワークが本格的に始動するものの、「実際に国内人口の半分が5Gに移行するのは2024年になる」と予測しています。
このように、現時点における5G投資は判断が非常に難しいものの、5Gのメリットとリスクを理解し、積極的に最新の情報を収集することにより、答えが見えてくるかもしれません。