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FRBによる伏線が「テーパー・タントラム」の再来を防ぐ

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〔要旨〕

テーパリングに関するFRBの伏線:先週、多くのFRB高官がテーパリングについて伏線を張った

FRBが主役を演じる:FRB高官にとって伏線を張ることの利点は、その政策イベントを実現させるために自らが重要な役割を演じられるという点である

テーパリングが再びタントラムにつながるだろうか? :今年後半のテーパリングは既成事実だと考える。しかし、それが2013年のような「テーパー・タントラム」につながるとは考えない

FRBのテーパリングに関する伏線

FRBは今後の伏線として、何度も年内のテーパリング開始に言及

FRBが物語の主役を演じる

テーパリングは、再びタントラムにつながるのか?

2013年のテーパー・タントラムからの教訓を踏まえ、FRBはしきりに伏線を張っている

結論

今秋のテーパリング開始の発表は既成事実化しており、テーパー・タントラムにはつながらない

世界のあちこちで “バック・トゥ・スクール “の季節が到来していますが、私にとってはいつも温かい思い出です。私は高校時代、英語の授業をとても楽しみにしていました。多くの偉大な古典を読むことに加えて、文学における工夫についても学びました。その中でも特に好きだったのが「伏線」です。伏線とは、「物語の後半で何が起こるかを示す、あるいはヒントを与えるために使われる文学的な工夫」のことです。伏線は、サスペンスや不安感、好奇心、あるいは物事が見かけ通りではないかもしれないことを示すのに有効です。

伏線にはシンプルなものもあります。映画「ジョーズ」でサメの攻撃を予感させる緊張感のある音楽を思い浮かべてみてください。また、例えばシェイクスピアの劇中で魔女がマクベスの王への昇格を予言したように、直接的な伏線もあります。間接的な伏線もあります。例えば、カラスが空を飛ぶことで、視聴者に死を予感させることもあります。そして忘れてはならないのが、時に不正確な伏線もあるということです。あることが起こることを示唆しているように見えて、実際には何も起こらないという「おとり」があるかもしれません 1

FRBのテーパリングに関する伏線

FRBは今後の伏線として、何度も年内のテーパリング開始に言及

伏線は、本や映画に限ったことではありません。先週は、米連邦準備理事会(FRB)関係者の多くが量的金融緩和の縮小(テーパリング)について伏線を張っていました。まず先週の月曜日、ボストン連銀のエリック・ローゼングレン総裁が資産購入に関する見解を明らかにしました。「資産購入を続けても、その反応は主に価格に現れるだけで雇用にはあまり影響しません。資産購入が本当に雇用促進に望ましい影響を与えているとは思えません」 2 。 ローゼングレン氏は、「直近2回の(雇用)統計のように、給与所得者の雇用が大幅に増加すれば、私の考えでは、9月の会合までには前進の基準を大幅に満たすことになり、今年の秋のうちにテーパリングを開始することになるだろう」 2 と、近いうちにテーパリングを開始することを示唆しました。

カンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁も、先週の講演で、近いうちにテーパリングを行うことを予見しました。「今日の逼迫した経済は…金融引き締めが求められるほどのものではありませんが、当初の設定に戻る時期が来たことを示しています」 3 。 彼女は自分の見解に自信を持ち、「景気が回復しつつある今、例外的な金融緩和からより中立的な設定へ移行しなければならない」と述べました 3

これはFRB高官の最近のコメントのほんの一部です。その前週にはリチャード・クラリダ副議長が、経済に関する「ベースケース」の見通しが実現すれば、年内にテーパリングを発表することを支持すると述べました。

FRBが物語の主役を演じる

FRB高官にとって伏線を張ることの利点は、その政策イベントが実現するために自ら重要な役割を果たすことができるということです。政策について自分で投票するだけでなく、連邦公開市場委員会(FOMC)の同僚を説得して同じように投票させようとすることができるのです。先週、ダラス連銀のロバート・カプラン総裁は、「今から9月の会合までの間に経済が私の予想通りに展開すれば、9月の会合で計画を発表し、10月からテーパリングを始めることに賛成というのが私の考えです」 4 と、FOMCの他のメンバーからの発言を繰り返しています。「すぐにテーパリングを開始すべきだと言うのは、資産購入は需要を刺激するのに適していると考えるからです。しかし、今の経済に需要の問題はありません。むしろ早くアクセルから足を離してエンジンの回転数を下げたいと私は考えています。今のスピードを長く続け過ぎてしまうと、将来もっと積極的な行動を取らなければならなくなるでしょう」 4

テーパリングは、再びタントラムにつながるのか?

2013年のテーパー・タントラムからの教訓を踏まえ、FRBはしきりに伏線を張っている

私は、今年後半のテーパリングは “既成事実 ”だと考えています。しかし、それが2013年のような「テーパー・タントラム」につながるとは思いません。なぜなら、当時の経験からFRBは政策を正常化する前に、それをどううまく伝えるべきか学んだからです。

2013年を振り返ってみると、FOMC議事録によると、FRBは2013年1月の会合からテーパリングについて議論していました。4・5月の会合では、一部のFOMCメンバーが6月の会合でテーパリングを開始することに関心を示していましたが、その時点では何も公には伝えられていませんでした。そのため、2013年5月22日に当時のバーナンキFRB議長が議員からの質問に答える形で発したテーパリング発言は爆弾を落としたようなもので、事前に何の伏線も張られていませんでした。「第一幕の舞台上にライフルがあれば、第二幕か第三幕で絶対に爆発させなければならない」 5 と助言した劇作家のアントン・チェーホフも、市場と同様、バーナンキ氏の伏線のなさに失望したことでしょう。

今日に話を戻しましょう。今回も同じでしょう。FRBはテーパリングについて過度なほどに透明性を高めており、今年初めの時点ではテーパリングについて議論することすら議論していないと明らかにしていました。検討と審議が進むにつれ、私たちはテーパリングにまつわる「Fedspeak」というビュッフェに何度も連れ出されており、多くが「テーパリング話」に疲れ、もうこれ以上この話を聞かなくて済むよう、さっさと始めてもらいたいと思っています。また、FRB当局がテーパリングと利上げを分けて考え、2つの政策手段を全く別のものとして扱っていることを私は評価します。これも市場を落ち着かせるのに役立つと思います。

結論

今秋のテーパリング開始の発表は既成事実化しており、テーパー・タントラムにはつながらない

秋のテーパリングが9月までに発表されることが既成事実となっているように思います。多少のボラティリティ、もし新型コロナウイルスやその世界経済成長への影響に関するネガティブなニュースが重なれば短期的な急落さえ、あるかもしれません。しかし、FRB高官による強力な伏線のおかげで、市場はテーパリング決定に対して十分な準備ができており、2013年のテーパー・タントラムのような事態は避けられると思います。

1.出所:MasterClass, “Writing 101: Foreshadowing Definition, Examples of Foreshadowing, and How to Use Foreshadowing in Your Writing”
2.出所:CNBC、“Fed should begin slowing stimulus efforts by fall, Boston Fed’s Rosengren says”、2021年8月9日
3.出所:カンザスシティー連邦準備銀行エスター・ジョージ総裁の発言から抜粋
4.出所:CNBC、“Fed should announce bond taper in September, begin it in October, says Dallas Fed President Kaplan”、2021年8月11日
5.出所:Now Novel, “Chekhov’s Gun: What it is and how to use it like a pro”

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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