「ブロックチェーン・eコマース」の時代到来?広がる無限の可能性

さまざまな分野でブロックチェーン技術の活用が進む中、eコマース(Electronic Commerce/電子商法取引)でもさまざまな試みが行われています。ブロックチェーンがeコマース市場にもたらすと期待されている恩恵や活用事例から、今後のeマース業界の進展を予想してみましょう。

ブロックチェーンは「市場拡大ソリューション」となるか?

新型コロナウイルスの影響で、世界のeコマース市場は急成長しています。米市場調査企業Grand View Researchのデータによると、2020 年の市場規模は10 兆 3,600 億ドル(約1,137兆502億円)に達しており、2027 年の収益は27 兆 1,500 億ドル(約2,980兆892億円)に成長すると予想されています。

市場の拡大とともに、システムの効率化や透明性・安全性の向上、コスト削減に役立つ手法を模索する動きが加速し、その解決策としてブロックチェーン技術の活用が進んでいます。

活用のメリット・デメリット

ブロックチェーン技術は小売業者と消費者の両方に、以下のようなメリットをもたらすと期待されています。

トランザクション(取引データ)の透明性が向上する

すべての取引データは改ざん耐久性に優れたブロックチェーン上に記録されるため、透明性の高い取引が実現します。

品質管理の効率化が進む

注文情報だけではなく、サプライチェーンのトレーサビリティ(製品を追跡する仕組み)が実現することも大きなメリットです。原料調達から消費までの全プロセスを記録できるため、品質管理の効率化が進みます。

サイバー攻撃への耐久性がアップする

eコマースの重要課題の一つが、セキュリティ対策です。顧客の個人情報や金融情報を取り扱うeコマースは、常にサイバー攻撃の脅威にさらされています。ブロックチェーンは複数の参加者が分散してデータを保持するため、システム全体に障害が及ぶリスクを軽減できます。

コスト・労力の削減に役立つ

決済や各種管理業務、セキュリティ対策のコストを、従来よりも低く抑えることができます。在庫や注文の管理も効率化されるため、人的コストの削減にも役立つと期待されています。

一方で、以下のようなデメリットも指摘されています。

保存した情報を修正・削除できない

例えば注文情報に誤りがあった場合、従来のシステムのように修正・削除することができません。

処理速度と障害への耐久性を両立できない

中央管理者が存在しないP2P型のブロックチェーンでは、複数の第三者(参加者)が取引の承認を行います。そのため、注文や決済の完了までに時間を要することがあります。ブロック数を減らせば処理速度を上げられますが、障害への耐久性が下がるリスクを伴います。

ブロックチェーンを活用したeコマース活用事例

実際にどのようにブロックチェーン技術が活用されているのか、事例を見てみましょう。

「OpenBazaar」 分散型eコマースの先駆け

米スタートアップ、OB1が開発した分散型eコマースの先駆けです。仮想通貨決済に特化したマーケットプレイスプラットフォームを2016年から提供しており、世界30ヵ国以上の企業や小売業者が洋服やアート、音楽、ゲーム、食品など、さまざまな商品・サービスを販売しています。現在は、BitcoinやLitecoinを含む仮想通貨での決済が可能です。

「QuuBe」 アジア初のスマートコントラクトeコマース

欧米最大のマーケットプレイス型eコマース「eBay」がアジア圏で展開する「QOO10」がローンチした、アジア初のスマートコントラクトeコマース。イーサリアムベースのトークン「Q*coin」と専用のウォレットを使用して売買を行うため、安全で透明性の高い取引が可能です。

「KnowSeafood」サプライチェーンのトレーサビリティを実現

米シーフードオンラインショップ「KnowSeafood」は、サプライチェーンのトレーサビリティにブロックチェーンを活用しています。漁獲から加工、出荷までの流れをブロックチェーン上で管理することで、消費者からの信用向上を狙っています。

「アリババ(阿里巴巴)」グローバル・サプライチェーンモデルのパイロット運転

最近では、中国eコマースの巨匠アリババが国際コンサル企業PwC(プライスウォーターハウスクーパース)、ニュージーランドの乳業企業Fonterra、オーストラリアのサプリ企業Blackmoresと提携し、自社のB2C オンラインモール「Tmall(天猫)」の顧客に商品を出荷するためのブロックチェーンフレームワークを立ち上げました。今後、アリババグループの全e コマース市場に適用される可能性があります。

将来はユーザーIDのセキュリティ強化などにも採用?

また、楽天証券がブロックチェーンによる分散認証システム「セコムあんしんログイン」を導入したことも注目されています。認証キーをユーザーと金融機関、セコムトラストシステムズが分散して管理することで、不正ログインを防止することが目的です。今後、楽天市場や他のeコマースがユーザーIDのセキュリティ強化に向けて、同様のシステムを採用するかもしれません。

世界各国で成長し続けるeコマース市場においてブロックチェーンが普及すれば、より安全で低コストで、効率的なオンラインショッピングが実現するでしょう。それに伴って新たなアイデアや活用法が生まれ、ブロックチェーンの活用先が無限に広がっていくことが予想されます。ブロックチェーン技術をうまく活用し成長し続けている企業はどこなのか、今後のビジネスの流れを探り、投資の機会を見定めるためにもWealth Roadとともに未来のビジネスチャンスをリサーチしていきましょう。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

Recent Posts

  • マーケットビュー

弱含みか正常化か?大局的な視点で見る世界経済

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

FRBは景気後退を回避するために金融政策を再調整

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

日本:金融市場から見た石破新政権

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

中国:広範囲の金融緩和政策とその評価

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • お金の使い方

S&P500に100万円を投資! 10~30年後をシミュレーション

S&P500と連動する…

2か月 ago
  • 資産管理

新NISAのつみたて投資枠は貯金代わりになる? 5つの違いを解説

新NISAで安定運用を目指すと…

2か月 ago