一人暮らしをしている人の中には、「なかなか貯蓄ができない」と悩んでいる人もいるでしょう。
しかし、一人暮らしをしている間は自分で支出をコントロールできるため、絶好の貯蓄チャンスでもあります。今回は一人暮らしで貯蓄をするために、家賃と交通費のバランスや生活費の見直しについて考えていきましょう。
目次
一人暮らしには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。総務省が実施している家計調査によると、一人暮らしの生活費平均額は以下のとおりです。
<平均生活費の内訳>
住居費 | 3万525円 |
食費 | 4万235円 |
水道光熱費 | 1万405円 |
通信費 | 8,673円 |
交通費 | 1万4,665円 |
交際費・雑費・その他 | 6万4,463円 |
合計 | 16万8,966円 |
※総務省 『家計調査・家計収支編2020年・1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)』より
ただし、これらはあくまで全国平均であり、住居費は住む場所や物件によって大きく変わるため注意が必要です。
物件や生活スタイルによっては、家賃以外に以下のような費用がかかることがあります。
<家賃以外の住居関係費(月額)>
共益費 | 共同設備の維持や施設の運営などに使われる費用 | 家賃の5~10% |
駐輪場使用料 | 敷地内の駐輪場を使う場合の賃料 | 無料~数百円程度 |
駐車場使用料 | 敷地内の駐車場を使う場合の賃料 | 無料~近隣相場程度 |
駐車場を無料としている物件もありますが、その分が家賃に上乗せされていることがあるため注意が必要です。
給与の手取り額における家賃の割合は、「1/3」や「25%まで」といわれています。しかし、重要なのは「家賃を支払った後、いくら残るのか」です。
-支払う額よりも、手元に残る額をチェック
20代前半の手取り給与平均額は、約18万円です。1/3にあたる6万円を家賃として支払う場合、水道光熱費や食費、雑費などの生活費を残りの12万円でまかなわなければなりません。給与が増えて30万円になれば、10万円を家賃に回しても生活費は20万円、給与が40万円になれば13万円の家賃を払っても27万円残ります。
給与が少ないうちは手元に残る金額も少なくなりますが、最低限の生活費は簡単に削ることができません。
家賃を決めるときには、「給与額の1/3」ではなく、「給与額-生活費」の残金から捻出できる範囲で考えるほうがよいでしょう。
全国賃貸管理ビジネス協会が調査している都道府県ごとの平均家賃を見てみましょう。一人暮らしをする地域が首都圏かどうかで、大きな差があることがわかります。
<全国平均家賃 間取り別・1部屋>
最高値地域(東京都) | 6万9,464円 |
最安値地域(鳥取県) | 3万8,180円 |
全国平均 | 5万260円 |
※1部屋=1K・1DK・1LDK
※全国賃貸管理ビジネス協会『全国家賃動向』2021年4月調査より抜粋
「節約するためには首都圏を避けるべき」と思うかもしれませんが、交通費にも注意が必要です。
-家賃と交通費のバランスが重要
例えば、隣県から職場に通うことで家賃が1万円安くなったとしても、交通費が1万円増えてしまったら意味がありません。
また、JR、私鉄、地下鉄ではそれぞれ初乗り運賃がかかるため、乗り継ぎにも注意が必要です。例えば、20分かけて鉄道会社3社を乗り継ぐルートよりも、40分かけても1社で移動できるルートのほうが安い場合があります。
駅から遠い物件の場合は、バス代や駐輪場代が別途必要になることもあるでしょう。定期の割引率なども会社によって異なるため、ルートについては慎重に検討するべきです。
交通費とのバランスを考えても家賃を節約できるなら、思い切って引っ越してもよいでしょう。賃貸住宅は定期的に契約更新があり、多くの場合2年ごとに家賃1ヵ月分相当の更新料を支払うことになるため、更新のたびに転居する人も少なくありません。
ただし、引っ越しにはお金がかかります。また、新しい物件を借りるための初期費用もかかることに注意が必要です。
これから一人暮らしを始める人は、月々の家賃や生活費以外に初期費用の準備も必要です。一般的に、30万~60万円かかるといわれています。
-当月分と次月分の家賃 家賃1ヵ月分+日割額
契約内容にもよりますが、家賃は前払いのところが多いため、例えば4月から入居予定で3月に契約する場合は、4月分の家賃を3月中に支払うことになります。月の途中で入居する場合は、日割家賃が発生します。
<契約月に必要な家賃>
前家賃 | 契約月の翌月分として充当される家賃 | 家賃の1ヵ月分 |
日割家賃 | 契約した月に充当される家賃 | 家賃1ヵ月分の日割額 |
家賃の前払いや日割家賃がないフリーレント物件もあります。ただし、「日割家賃分がフリーレント」「翌月分はフリーレントだが、翌々月分の家賃を前払い」など、物件によって期間や条件が異なるためよく確認しましょう。
-敷金・礼金・仲介手数料 家賃の3~6ヵ月分程度
新しく賃貸契約を結ぶときは、敷金や礼金、手数料などがかかります。諸費用が無料の物件もありますが、通常は一括で支払うことが多いため、まとまった資金が必要です。中には、クレジットカードを利用して分割払いにできる不動産会社もあります。
<新しく賃貸契約をする際に必要な費用>
敷金 | 家賃滞納時の充当金や退去時の修繕・クリーニングなどに使うために預けるお金。未使用分は、退去時に返金される。 | 家賃の1~2ヵ月分 |
礼金 | 大家に対する謝礼 | 家賃の1~2ヵ月分 |
仲介手数料 | 仲介不動産会社に支払う手数料。法律で「上限は家賃1ヵ月分」と定められている。 | 家賃0.5~1ヵ月分 |
保証料 | 家賃保証会社を利用する場合にかかる費用。連帯保証人がいない場合に必要。 | 家賃+共益費0.5ヵ月分 |
火災保険料 | 不動産会社が指定する保険に加入するのが一般的だが、入居者が加入する保険を選べる場合もある。 | 約1万5,000~2万円 |
この他に、鍵の交換費用を負担する場合もあります。鍵の形状などによって変わりますが、数千円~2万円程度が相場です。
関西では習慣が異なり、礼金や敷金(敷引き)、更新料などを含む契約費用として「保証金」を納めます。保証金は家賃の4~7ヵ月分が相場で、使われなかった分は退去時に返金されます。
-引っ越し費用 3万~10万円程度
引っ越しを運送会社に依頼をした場合、単身者用プランだと4万~10万円程度かかります。ただし、荷物の量や移動距離、作業人数によって料金は変わります。また、3~4月の繁忙期や土日などの割増料金、早期予約割引などでも料金は変動します。
自力で引っ越しをする場合は、荷物の量を把握した上で協力者を募ることになります。車両をレンタルして、協力者に3万~4万円程度の謝礼を支払った場合の引っ越し費用は6万円程度です。
-最低限の家具・家電
生活をするためには、家具や家電も必要です。すべて揃えるとそれなりに費用がかかりますが、中には家具や家電付きの物件もあります。
長く住む場合は、自分の好みや生活スタイルに合わせた家具・家電を購入するほうが暮らしやすいでしょう。数年程度で移るつもりなら、家具・家電付きの物件を選ぶことで初期費用を節約できます。
通勤時間を短くしたいのか、多少時間がかかっても座って通勤したいのかによっても、選ぶ地域は変わります。プライベートの時間を充実させるためには、休日に行動しやすい路線や駅前が栄えているところよいかもしれません。
家賃や生活費とのバランスを考えて、自分なりの優先順位を決めて選びましょう。
一人暮らしをしている間は自分で支出を管理しますが、家族を持つと自分一人で支出を決めるのは難しくなります。今のうちに、しっかり貯蓄をしておきましょう。
節約を考えるときは、まず固定費の削減を検討します。家で過ごす時間が短いなら、水道光熱費の基本料金や通信プランを見直すことで節約できるでしょう。
-光熱費の契約プランは、一度見直すと効果が長く続く
光熱費の契約プランの見直しは、担当者の話を聞いたり、変更手続きが必要だったりするため、面倒に感じるかもしれません。しかし、一度見直せば節約効果が長く続くというメリットがあります。
物件によっては電力会社やガス会社が指定されていることもあるため、まずは確認してみましょう。
-自炊は冷凍保存を活用するのが○
一人暮らしの場合、自炊はかえってお金がかかってしまうことがあります。しかし、最近は保存容器のバリエーションが増えており、ネットや書籍などでも賢い保存方法などがたくさん紹介されています。
休日などに作り置きをして冷蔵・冷凍保存をうまく活用することで、金銭的・時間的な節約効果が期待できます。
-通信費とWi-Fi設備投資費を比較する
スマホなどの通信費用が高い人は、自宅にWi-Fiを設置することを検討するとよいでしょう。設備の初期費用や月々の通信プランによっては、大幅な削減が期待できます。
貯蓄をする場合は、まず「貯蓄」という支出項目を作り、生活口座とは別の口座に資金を移動しておくことをおすすめします。残った分を貯めるのではなく、先取りで貯蓄するのが成功のコツです。
貯蓄があれば、新しい部屋を探したり、自分好みのインテリアを揃えたり、夢の実現に向けて投資したりできるため、将来の選択肢が増えます。
充実した豊かな生活のために、しっかり貯蓄をしていきましょう。