最近、ニュースで「SOR注文」がトピックとして取り上げられる機会が増えてきました。しかし、その仕組みはまだあまり知られていません。ここではSOR注文についてわかりやすく説明しつつ、SOR注文で利用される「ダークプール」や「PTS」についても触れていきます。
個人投資家なら、株式などの取引において有利な価格で売買したいと思うはずです。しかし買い値や売り値などの「気配値」は市場によって異なり、最も有利な価格で取引することは難しいため、最終的にはある程度の妥協が必要になります。
SOR注文は、このような個人投資家の潜在的なニーズを受け、証券会社がサービスとして展開している仕組みの一つです。「SOR」とは「スマート・オーダー・ルーティング」の略で、複数の市場から最も良い気配値を提示しているものを選び、売買を執行します。
ある株式のA市場での価格が5,000円、B市場での価格が5,050円だとします。SOR注文では、売りと買いそれぞれで最適な市場を証券会社のシステムが自動で判定します。A市場とB市場でそれぞれ100株を購入したとすると、約定代金に以下のような差が生まれます。
A市場:5,000円×100株=50万円
B市場:5,050円×100株=50万5,000円
50万5,000円-50万円=5,000円
この場合、SOR注文ではA市場で購入することになります。SOR注文を使わずB市場で株式を注文してしまった場合、5,000円多く支払うことになります。
株価の変動に比べれば軽微な差と思うかも知れませんが、長く株式取引を続けていくとこの差はどんどん大きくなっていきます。
SOR注文は、日本国内でも複数の証券会社が提供しています。SBI証券がその一つで、2019年はマネックス証券もSOR注文サービスを開始したことを発表しました。
マネックス証券では、「東京証券取引所」「ダークプール」「PTS」から最も有利な条件での約定が見込まれるものをシステムが判定します。
ダークプールは取引所を介さず証券会社が注文をマッチングさせる取引のことで、以前は機関投資家向けのサービスでしたが、2018年頃から個人投資家にも提供されるようになりました。ダークプールは流動性が公開されないため、戦略的な注文による株価の急変動が起きにくいという特徴があります。
PTSは「プロプライエタリ・トレーディング・システム」の略で、証券取引所を介することなく株式の売買ができる「私設取引システム」のことです。証券取引所の取引時間以外の夜間取引などができるもので、アメリカで普及した後日本でも広まっていきました。
このように複数の市場から最も良いものを選び、売買を執行してくれるのがSOR注文です。
SOR注文には、注意すべき点もあります。システムが最良の気配値を選択したとしても、その注文が市場に届くまでにはタイムラグがあるため、約定時点の価格が結果的に最良価格でないことがあるのです。これを踏まえて、SOR注文を利用する必要があります。
このように、証券業界でもさまざまなイノベーションが起きています。個人投資家は、このような最新情報を漏らすことなくキャッチアップして、より有利な取引を行う方法を模索し続ける必要があるでしょう。