日本人は諸外国と比較して、投資より貯蓄性向が強いと言われています。日本銀行調査統計局が2019年8月に発表した「資金循環の日米欧比較」という資料によると、株式や投資信託などの資産が多い米国・ユーロエリアに対し、日本では現金・預金が5割を超えています。
戦中戦後から国主導で行われてきた貯蓄政策が背景にあると思われますが、戦後70年経った今、私たちは資産の捉え方を変えるべき段階に来ているのかもしれません。少なくとも投資の必要性を理解し、実際に投資を行う意義を知る必要があるでしょう。
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日本の現状を鑑みても、投資が必要なのは明らかです。厚生労働省による2019年の財政検証では、経済成長と労働参加が進まない最悪のケースにおいては、厚生年金の所得代替率が50%を下回ると試算しています。具体的には、「2052年度に国民年金の積立金がなくなり完全賦課方式に移行。その後、保険料と国庫負担で賄うことができる給付水準は、所得代替率38~36%程度」になるといいます。
つまり、将来は現役世代の手取り収入額の3割強しか年金を受給できないかもしれないということです。現在でも年金だけで生活することは難しいことを考えると、不足分を補填するための準備は不可欠です。そのためには、これまでのような貯蓄を中心とする資産管理から脱却し、資産を増やすための投資も視野に入れる必要があるでしょう。「貯蓄から投資へ」は、今すぐにでも考えるべき課題なのです。
このような現状を踏まえ、あらためて投資の“現代的意義”について考えてみましょう。私たちはなぜ、「貯蓄から投資へ」を考えるべきなのでしょうか。投資には、金融市場や資産運用、そのリスクや複利効果などについて知ることができるというメリットがあります。
中長期投資が計画に沿って行われるように、私たちの人生もまた中長期的な視点で捉えることが大切です。計画性がないと場当たり的な行動を繰り返すことになり、結果的に自分が望む人生を実現しにくくなります。したがって投資計画をきちんと立て、お金を適切に管理しつつ、人生を設計していくことが求められるのです。
計画的な人生設計を実現するために、貯蓄によってお金を管理しようと考える人も多いでしょう。しかし、貯蓄だけではお金がほとんど増えないのが現状です。投資をする姿勢を持つことで、よりシビアな資産管理ができるようになります。大切なのは、「自分のお金を自分で増やす」という意識を持つことです。
投資において特に重要なのは、「リスク」と「複利効果」という概念です。ここでいうリスクとは、単なる「危険性」ではなく、「リターンを得るために必要な不確実性」のことです。得られるリターンを踏まて、どの程度まで不確実性を許容できるかを考えれば、自分に合った投資を選択できます。また、投資で得た利益を再投資していくことで、利益が利益を生む複利効果を得ることもできます。
このように貯蓄だけでなく投資も行うことで、厳しい時代を生き抜くための学びを得ることができます。“投資思考”を身に着けることができれば、お金が増やすことをイメージしやすくなり、リスクにも対処しやすくなります。未来の生活に備えるために、投資の現代的意義を意識しつつ、中長期的な視点を持って投資を始めてみてはいかがでしょうか。