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目次
カナダ銀行の金融緩和縮小、バイデン政権のキャピタルゲイン増税、予想を上回る決算発表
〔要旨〕
カナダ銀行によるタカ派への転換:カナダ銀行は、金融緩和政策の縮小を発表
米国のキャピタルゲイン増税の可能性は?:バイデン政権がキャピタルゲイン増税を実施するとの観測から、株式市場が動揺
好調な決算発表:S&P500企業の決算ビート率は、過去最高ペースで推移
カナダ銀行が国債買い入れ額の削減を発表
カナダ銀行の金融政策の転換は、各中央銀行の金融政策に相違が見られる始まりであり、各国の中央銀行は、今後、独自の政策の方向性を示していくだろう
米国でのキャピタルゲイン増税の可能性は?
バイデン政権が提案した増税案がすべて実現する可能性は低く、2021年の増税は緩やかなものになると予想
ビットコインが大きく反発
ビットコインのボラティリティは今後も大きい見込み
新型コロナウイルスの感染状況の二極化が進む
インドで感染者の増加に歯止めがかからない一方で、イスラエルでは死者数が出ない日を初めて記録
米国では好調な決算発表が続く
現在までのS&P500企業のEPSのビート率は、2008年以降の過去最高に並ぶ
今週のイベント
FOMCや決算発表に注目
カナダ銀行が国債買い入れ額の削減を発表
カナダ銀行の金融政策の転換は、各中央銀行の金融政策に相違が見られる始まりであり、各国の中央銀行は、今後、独自の政策の方向性を示していくだろう
カナダ銀行(BOC、中央銀行)は、金融緩和政策の縮小に着手します。2020年7月からの新しい委員会メンバーの下、BOCは、先週、カナダの景気が大きく回復しインフレ率が上昇していると指摘し、その対応のために国債買い入れ額を25%削減することを発表しました 1 。
このBOCの決定は何を意味するのでしょうか?このニュースにより、2021年後半に多くの中央銀行が金融引き締めに転じるきっかけになると懸念する声が上がりましたが、私はそうは思いません。他の中央銀行もいずれは金融引き締めを開始する必要があるものの、私は、主要な中央銀行が2021年内にカナダ銀行の決定に続くとは考えていません。BOCは、伝統的に他の中央銀行よりも保守的であり、緩和縮小を先駆けて開始することについて違和感はありません。また、BOCは、現在の国債買い入れプログラムを通じて、流通している国債の40%を購入しています 2 。中央銀行として、債券市場でのそのような行き過ぎた役割から脱する理由を探しているのだと思います。
私は、今回のBOCの金融政策の転換は、各中央銀行の金融政策に相違が見られる始まりであると考えます。各国の中央銀行は、今後、独自の政策の方向性を示していくことでしょう。現状、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、FRBが長期にわたり緩和姿勢を維持することを表明しています。また、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、先週、ユーロ圏経済が2本の「松葉づえ(そのうちの1つは金融政策)」に支えられており、継続的な支援を必要としているとの考えを明確に示しました。ラガルド総裁は、特に短期的な下振れリスクが見られるため、金融刺激策の削減について議論することは「時期尚早」であるとの考えを強調しました。
米国でのキャピタルゲイン増税の可能性は?
バイデン政権が提案した増税案がすべて実現する可能性は低く、2021年の増税は緩やかなものになると予想
先週、複数の関係者は、バイデン政権が総所得100万米ドル超の富裕層を対象に、キャピタルゲイン税率の大幅な引き上げを検討していることを明らかにしました。これをきっかけに、米国株式市場は急落しました。
私は、米国上院の構成上、大規模な増税提案は否決されると考えます。バイデン政権がいくつかの増税を実現することはできるでしょうが、提案された全ての増税が実現することはないと考えます。今後、増税に関する議論が進むにつれて、株式市場はさらに変動する可能性があります。しかしながら、私は、2021年の増税は緩やかなものになるとの見方を維持しています。
ビットコインが大きく反発
ビットコインのボラティリティは今後も大きい見込み
先週は、暗号資産への課税や規制への懸念などを背景に、ビットコイン価格の下落が続きました。しかし、週末にかけて、電気自動車(EV)メーカーであるテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のツイートを受け、ビットコインは大きく反発しました。ツイートが価格動向にこれほど大きな影響を与えていることを考えると、ビットコインは今後も大きく変動すると思われます。
新型コロナウイルスの感染状況の二極化が進む
世界の新規感染者数の増加傾向が続く。インドで感染者の増加に歯止めがかからない一方で、イスラエルでは死者数が出ない日を初めて記録
世界の新型コロナウイルスの新規感染者数は、地域による二極化が鮮明になっています。先週は、新型ウイルスの世界的な大流行(パンデミック)が始まって以来、1週間の新規感染者数が過去最多を更新しました 3 。世界保健機関(WHO)は、1日当たりの新規感染者数が米国と欧州で減少しているものの、世界の多くの地域では増加していると警告しています。インドでは、26日に1日で最多となる35万人の新規感染者が確認されており、5日連続で世界最多を更新しています 4 。このような中、米国は、インドに対するワクチン接種の支援を表明しました。これは、インドだけでなく、米国や世界にとっても望まれる決定です。
その一方で、先週、イスラエルの1日当たりの新規感染者数はわずか38人でした。これは、過去1年以上において最少の人数です 5 。また、先週、イスラエルでは新型ウイルスによる死者がいない日を初めて記録しました 5 。イスラエルは、ワクチン接種の点で世界の指針となります。イスラエルにおける経過は、国民へのワクチン接種が成功したあらゆる国で、今後経験されるものと考えられます。米国は、人口の40%以上がワクチン接種を少なくとも1回完了しており、イスラエルの状況に近づいています 6 。
米国では好調な決算発表が続く
現在までのS&P500企業のEPSのビート率は、2008年以降の過去最高に並ぶ
米国の決算発表は、予想通り、好調が続いています。S&P500の25%の企業が既に決算を発表しましたが、うち77%が市場予想を上回る売上を、84%が市場予想を上回る1株当たり利益(EPS)を報告しています 7 。このEPSのビート率は、ファクトセット・リサーチがEPSビート率の公表を開始した2008年以降の過去最高に並びます 7 。
今週のイベント
今週、投資家が注目する重要な2つのイベントは以下の通りです。
• 米連邦公開市場委員会(FOMC):先週のカナダ銀行の発表後、FRBの決定に多くの注目が集まると予想されます。私は、FRBが、カナダ銀行のように金融緩和に着手するとは考えていません。パウエルFRB議長とFOMCメンバーからは、マックレムBOC総裁ではなく、先週のラガルドECB総裁による発言と同様の、金融緩和的な発言がなされると考えます。
• 決算発表:今週は、テスラ、アルファベット、マイクロソフト、フェイスブック、アップル、アマゾンなど、テクノロジー業界の大手企業をはじめ、重要な決算発表が予定されています。今週の決算も好調さが続くと考えており、また、より重要な先々の見通しにおいても、ポジティブな発表を予想しています。
1.出所:カナダ銀行。
2.出所:ブルームバーグ・ニュース、“Bank of Canada Set to Dial Back Bond Buying: Decision-Day Guide”、2021年4月20日。
3.出所:WebMD、“WHO: Worldwide COVID Cases Reached New Weekly Record”、2021年4月23日。
4.出所:ビジネスインサイダー、“India recorded more than 350,000 new COVID-19 cases in 24 hours, setting a devastating world record for the 5th day in a row”、2021年4月26日。
5.出所:タイムズ・オブ・イスラエル、2021年4月25日。
6.出所:ビジネスインサイダー、“Despite a few rich countries doing well, global COVID-19 cases are the highest they’ve ever been”、 2021年4月26日。
7.出所:ファクトセット・リサーチ・システムズ、2021年4月23日。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2021-080