前回はアクティブ投信のメリットとデメリットについてお伝えしました。いざ投資信託(以下、投信)を購入する際、様々な情報を見て購入を判断するでしょう。その中でも「ランキング」を見る人が多いのではないでしょうか? 実はランキングには注意点もあります。今回は、ランキング情報の有益な見方を解説します。
目次
ランキングの種類とその内容
投資信託協会によると5,805本もの株式投信が存在しています(2020年9月末時点)。投資初心者が投信を選ぶのに迷うのも無理はありません、
そこで、金融機関や投資情報誌、比較サイトで「ランキング情報」を参照する機会も多いでしょう。代表的な比較軸として、「リターン、シャープレシオ、純資産総額、信託報酬、買付金額、アクセス数」などが存在します。以下ではそれぞれの項目が意味するところを解説します。
リターンランキング
一番気になるのはリターンランキングでしょう。1ヶ月、1年、3年、5年、10年などの期間別のファンドの運用成績が確認できます。リターンを確認する際、投信のカテゴリー別で見ることを意識しましょう。例えば、国内株と外国株、国内株でも大型株と小型株を一緒に比較しても投信運用の良し悪しはわかりません。カテゴリーや期間に注目して比較しましょう。
シャープレシオランキング
投資はリスクとリターンの見合いです。同じリスクを取った際、より多くのリターンを得ることができれば効率的な運用ができたと判断することができます。「シャープレシオ」は、リスクに対してどれくらい効率的にリターンを上げたかを図る指標です。
同じカテゴリーで同じリターンなら、シャープレシオが大きいほうが、効率的に運用ができており、運用成績が優れていると判断することができます。前述のリターンと合わせて、シャープレシオも参照しましょう。
純資産総額
純資産総額はファンドの運用資産残高を示したもので、そのファンドの規模を表します。注意点として「運用資産残高が大きい=基準価額」ではないということです。計算式で示すと「基準価額=純資産総額×口数」となります。
ファンドの規模で運用の良し悪しを一概に判断することはできませんが、2018年からスタートしたつみたてNISA(少額投資非課税制度)に関していえば、ラインナップに追加されるアクティブファンドの条件の一つとして純資産残高が「50億円以上」の基準が設けられています。資金流出が続くファンドの場合には意図した運用ができないなどの注意点もあるため、投資前には要確認です。
一定期間での買付額の純増ランキング、アクセス数のランキング
一定期間での買付額の純増ランキング、アクセス数のランキングは、投資家からの注目度が高まっているファンドです。
注目度の高いファンドや人気ファンドを常に知っておくことでどこに資金が流れているのか、自分が購入しようとしているファンドや保有しているファンドとのリターンの違いや運用方針などを比較する際の参考情報として付き合うのがいいでしょう。
信託報酬ランキング
中長期で資産運用をする上で外せないのが、運用会社等に支払う「コスト」です。特に継続的に発生する「信託報酬」は必ず確認しましょう。一般的に、国内資産より海外資産、インデックス型よりアクティブ型のファンドのほうが信託報酬が高くなる傾向にあります。ほかのランキングと同様に資産別で比較するようにしましょう。
ランキングを見る際の注意点
ランキングを見る際の注意点として、必ずしも「ランキング上位のファンド=良いファンド」ではない、ということを意識しましょう。
例えば、「リターンランキング」を見る場合、参照期間も確認しましょう。短期のリターンが高い場合、そのファンドの運用方針が市場環境とタイミングが合った要因が強く働いている可能性が高いです。「純資産総額」が多いファンドも、販売会社が売りやすい(販売注力している)投信であることから資産を伸ばしている、というケースも想定されます。
優秀なファンドとは、様々な期間、様々な市場環境において、安定的にリターンを出し、厳しい環境下では損失を防ぐようなファンドです。ランキングはあくまで、ファンドの運用成績の一面であり、ファンドの優劣を示すものではありません。
過去の上昇率が将来を保障するものではない
ランキングはあくまでも「過去のある一定期間」を示したものです。過去の実績が将来を保証するものではないことに留意しましょう。極端な話、過去に高リターンを上げたファンドのファンドマネージャーが代わってしまうこともあり得るのですから。
有益なランキングは?
リターン、純資産額、シャープレシオ、信託報酬、どれも有益なランキングです。ただ、これまでお伝えしてきたとおり、カテゴリー別で比較し、各指標を総合的に見ることが大切です。
ファンドの評価会社が、投信のレーティング(格付け)を発表しています。それぞれ年間の優秀ファンドの表彰もしています。レーティングは、カテゴリー別に重要指標を期間別に総合的に評価したものですから、ある程度参考になるでしょう。
別の切り口から紹介すると、投信情報を発信している投信ブロガーのサイトも有益な情報源です。投資家が自分たちにとって本当によいと考える投資信託を投票で選出する「投信ブロガーが選ぶ! ファンドオブザイヤー」のランキングを見ることも勉強になるでしょう。
ランキングが示す内容から投資戦略を見極める
投信のランキングのみを見て判断するのではなく、ランキングが示す内容から将来の相場展望などの投資戦略を考えて投資することが一番大切なポイントです。次回は、投資信託を購入する際、必ず知っておきたい注意点を解説します。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません