リスクを抑えて米国株に投資する方法のひとつに、米国の株価指数に連動する投資信託を購入する方法があります。本記事では、米国の株価指数の中でも特に注目されているナスダック100(NASDAQ100)の概要や投資するメリット・デメリット、S&P500・NYダウとの違いなどについて解説します。
目次
ナスダック100とは
そもそも、ナスダック(NASDAQ)市場とは、全米証券業協会が運営する米国の新興企業向けの株式市場です。テクノロジー企業の株式などを中心に約3,000社で構成されています。
ナスダック100は、ナスダック市場の銘柄を使った米国の株価指数のひとつです。
株価指数とは複数の銘柄の株価を指数化した指標のことで、日本では日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などがよく知られています。構成銘柄の多くが値上がりすれば株価指数も上昇するため、株価指数は市場全体の動きを把握する際に役立ちます。
ナスダック市場の銘柄を使った株価指数には、ナスダック100のほかに「ナスダック総合指数」があります。ナスダック100とナスダック総合指数の違いは、指数化する構成銘柄の違いです。
- ナスダック100:ナスダック市場における時価総額上位の約100銘柄を指数化したもの
- ナスダック総合指数:ナスダック市場に上場しているすべての銘柄(約3,000銘柄)を指数化したもの
ナスダック100は、時価総額上位の約100銘柄(金融業の銘柄を除く)を指数化しているため、ナスダック総合指数に比べて、テクノロジー関連の動向をより的確に把握することができます。
米国の株価指数にはナスダック100のほかに、NYダウやS&P500などがあります。ナスダック100は、2020年から2021年にかけてS&P500を上回る好成績を残し、注目を浴びました。
ナスダック100(NASDAQ100)の構成銘柄
ナスダック100はその名の通り、ナスダック市場に上場する約100銘柄で構成されています。実は、ナスダック100の構成銘柄は定期的に変更がなされています。なぜなら常にその時点の影響力の高い銘柄を指標に加えることで、世の中の動向と指数の乖離を少なくできるからです。
2024年12月に行われた定期リバランスでは、ナスダック100からイルミナやモデルナなどの銘柄が除外され、マイクロストラテジーやアクソン・エンタープライズなどが追加されています。
特にビットコインの取り扱いを主に手がけるマイクロストラテジーがナスダック100の構成銘柄に追加された報道時には、「米国のビットコイン現物ETFの立ち上げに次ぐ2024年の2番目に大きな出来事」ともいわれたほどです。
このことからもナスダック100の銘柄が、いかに世界から注目されているのかがわかります。以下では、2024年12月末時点の、ナスダック100の構成銘柄の一部を紹介します。
アップル | コンピュータ機器 |
マイクロソフト | ソフトウェア |
アマゾン | インターネット通信販売 |
メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック) | ソーシャルメディア |
テスラ | 電気自動車 |
エヌビディア | 半導体 |
アルファベット(グーグル) | 検索エンジン |
ブロードコム | 半導体 |
アドビ | ソフトウェア |
ネットフリックス | 動画配信 |
コストコホールセール | 小売・卸売 |
ペプシコ | 食品・飲料 |
ペイパル・ホールディングス | 電子決済 |
インテル | 半導体 |
スターバックス | コーヒーショップ |
日本でも有名な企業が多いことがわかるでしょう。
ナスダック100に連動する投資信託
投資信託は、投資家から集めた資金を専門家が複数の投資先に投資して運用する金融商品です。ナスダック100との連動を目指す投資信託を購入すれば、間接的にアップルやマイクロソフトなどに投資できます。
投資信託には、パッシブ型(インデックス型)とアクティブ型という2つの運用方法があります。
・パッシブ型(インデックス型)
ナスダック100などの対象とする指数に連動した運用を行う方法のため、基本的に投資先は指数の構成銘柄が対象となります。銘柄を調査したり分析したりする必要がないため、運用や売買のコストも低く抑えられているのが特徴です。
・アクティブ型
指数に連動するのではなく、それを上回る運用成績を目指した運用を行います。例えばファンドマネージャーが「グロース株や配当の高い株に投資する」などといった運用方針を決め、それに沿った銘柄に投資します。運用や売買のコストは、銘柄を調査したり分析したりする必要があるため、パッシブ型と比べて高くなる傾向です。
では、ナスダック100に連動した投資信託はパッシブ型とアクティブ型のどちらが多いのでしょうか。ナスダック100に連動した投資信託の多くは「パッシブ型」です。
またナスダック100に連動した投資手法として投資信託以外にもETFがあります。ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことです。投資信託が1日1回算出される基準価額をもとに取引を行うのに対し、ETFは証券取引所に上場しているため、リアルタイムな価格で取引を行うことができます。
ナスダック100に投資するメリット・デメリット
ナスダック100に連動した投資は、投資信託やETFなどさまざまな商品があり、その中から自分の投資目的に合ったものを選ぶことが可能です。しかし投資する際は、次のようなメリットとデメリットを把握しておく必要があります。
ナスダック100に投資するメリット
ナスダック100は、高い成長性が見込める銘柄や革新的な企業に投資できることがメリットです。ナスダック100には、イノベーションなどを積極的に行う革新的な企業が多く含まれています。高い成長性が見込めたり、利益も増加している企業が多かったりすることからハイリターンが期待できるでしょう。
ナスダック100に投資するデメリット
ナスダック100は、高いボラティリティや特定セクターへの偏りが懸念されることがデメリットです。ボラティリティとは、簡単にいうと価格変動の度合いを指します。つまりボラティリティが高い場合は、価格変動も大きくなるため、リスクも高くなるというわけです。
またナスダック100は、構成銘柄がテクノロジー関係などの特定セクターへ偏りがあるため、その業種全般の景気が悪くなると利益が上がりにくいリスクがあります。
ナスダック100への投資は、短期間で大きなリターンを狙える代わりに、リスクも高いものとなっています。しかし短期的に業績が悪くなることがあっても、長期的には成長を継続できる地力のある企業が多い傾向です。そのため「短期的にハイリターンを狙いたい」「長期投資を考えている」という人に向いています。
ナスダック100とS&P500の違い
ナスダック100とS&P500は、米国の株価指数の中でも有名で人気があるので、どちらをベンチマークとする投資信託を選べばよいか悩む方もいるでしょう。そこでS&P500と比較しつつ、ナスダック100の特徴を解説します。
米国の代表的な取引所に、ニューヨーク市場とナスダック市場があります。ニューヨーク市場は世界1位の規模を誇り、上場には厳しい基準が設けられています。一方でナスダック市場は、ニューヨーク市場ほど上場基準が厳しくありません。そのため、新興企業が多く上場しているという特徴があります。
S&P500は、ニューヨーク市場・ナスダック市場に上場する米国企業500銘柄で構成されます。四半期連続黒字や時価総額82億ドル以上など、厳しい基準を満たす銘柄が採用されます。
ナスダック100はナスダック市場に上場する銘柄のうち、時価総額上位100銘柄(米国企業以外も含む)で構成される株価指数ですが、金融セクター(銀行や保険など)は除外されています。業種で見ると、S&P500と比べて情報技術系の銘柄の比率が高いのが特徴です。
ナスダック100は2008年のリーマンショックで大きく下落しましたが、2010年頃からはS&P500よりも良い成績を残しています。また、過去30年間の上昇率でもS&P500を大きく上回ります。
ナスダック100の急成長には、GAFAM(ガーファム)と呼ばれる米国の巨大IT企業が影響しています。GAFAMはアルファベット(グーグル)、アップル、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフトの総称です。
アップルの株価は、約30年で335倍に成長しました。 このような巨大IT企業の成長が、情報技術系の銘柄の比率が高いナスダック100の成長を支えてきたのです。
ナスダック100とNYダウの違い
ナスダック100と比較される指数としてよく挙げられるのが、NYダウ(ダウ・ジョーンズ工業株価平均)です。NYダウとは、ナスダックだけでなくニューヨーク証券取引所に上場している株式の含め、米国を代表する株式を30銘柄抜き出して計算された指数のことを指します。
NYダウは、もともと工業株を中心に構成されていた昔からある株価指標のひとつです。「ダウ平均」や「ダウ工業株30種平均」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
NYダウの構成銘柄の選定基準は、明確に公表されていませんが、以下のような内容が考慮されているといわれています。
- 米国で企業が設立されている
- 米国に本社がある
- 売上の多くが米国で生み出されている
- 長期的な業績や成長性 など
そのため米国の国内向きの指標ともいえるでしょう。世界的な企業が多く含まれる「ナスダック100」と、老舗指標の「NYダウ」のどちらも注視することで、米国の景気を総合的に見ることができます。
世界情勢にも注目しながら投資先を決めよう
投資信託を通じて米国市場に投資したいと考えているなら、目覚ましい成長を遂げるナスダック100をベンチマークとする投資信託は、有力候補となるでしょう。
ただし、これまでナスダック100が好成績を残してきたからといって、今後も成長が保証されているわけではありません。投資である以上、下落することも想定しておく必要があります。
米国市場の動きをウォッチするとともに、巨大IT企業のニュースにもアンテナを張り、情報収集に努めましょう。自分なりに仮説を立て、長期的な予測を立てながら、投資先や投資のタイミングを決めることが大切です。
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。