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投資家からの5つの質問への回答

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新型ウイルスの感染者数の増加、遠のく米国の財政出動、米大統領選挙での異議申し立ての可能性などについて

〔要旨〕

●現在、投資家は経済と市場の先行きに不安感を持っている
●①新型ウイルスの感染者数の増加、②米国大統領選挙の異議の申し立ての可能性―などが懸念材料

1. 新型ウイルスの第2波が到来した場合、何が起こりますか?
大規模なロックダウン実施の可能性は低く、株式市場への影響は限定的な見込み

2. 追加の財政出動が実施されない場合、米国経済にどのような影響を与えるでしょうか?
米国では経済成長が鈍化しており、景気刺激策は引き続き重要

3. FRBの行動は株式市場に何をもたらすでしょうか?
今後の資産購入に対する柔軟性を高めたことが、リスク資産をサポート

4. 米大統領選挙で異議申し立てがなされた場合、どうなりますか?
大統領選が落ち着くまでは、株式市場ではボラティリティが高まり、金と国債が好調に推移すると予想

5. これらが意味することは何でしょうか?
大統領選挙の年は雑音が多いが、投資家はこれらを無視するように努め、長期の目標を見据えことにより注力するべき

投資家からの質問に対する私の回答

最近の投資家からの質問より、市場に不安感が漂っているのがうかがえます。「現在の株価水準に割高感はありますか?」といったごく一般的な質問も増えていますが、より深い懸念を示す質問もあります。中でも、大統領選挙に関する質問の多くは、私のキャリアの中でも初めて聞くものです。本稿では、投資家からの5つの質問について、お答えします。

1.新型ウイルスの第2波が到来した場合、何が起こりますか?

大規模なロックダウンの実施の可能性は低く、株式市場への影響は限定的な見込み

欧州や北米の多くの国で感染者が急増しています。大きな第2波が生じないことを望みますが、その可能性は十分にあると考えられます。ただし、ウイルスへの対処法については知識が積みあがってきているので、第2波が起きたとしても、入院期間は短くなり、死亡者数は減少すると考えています。そして、入院状況が悪化しない場合、第1波で実施されたような大規模な封鎖(ロックダウン)は実施されないでしょう。一部の人が自主隔離することにより人の移動・行動量の低下が見込まれるものの、経済への悪影響は比較的小さいと予想しています。(もちろん、必ずしもそうとは限りません。イスラエルは、第2波の発生に対し、ロックダウンを開始しました。)しかし、ほとんどの国が大規模なロックダウンを回避できる場合は、世界経済への悪影響は比較的小さいはずです。そして、感染者数の増加は株式市場を混乱させるものの、大規模なロックダウンが実施されない限り、反応は一時的なものになるでしょう。

2. 追加の財政出動が実施されない場合、米国経済にどのような影響を与えるでしょうか

パウエル議長は追加の財政主導の必要性を強調

追加の財政出動が実施されないことは、米国経済における懸念材料です。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、景気回復のスピードは予想よりも速かったものの、先行きは依然として非常に不透明であり、財政出動の欠如は経済に打撃を与えると強調しました。前週、同議長は、上院銀行委員会での証言で、失業者が1100万人いるので、その対応にはまだ多くの仕事が必要であることを述べています 1

米国では経済成長が鈍化しており、景気刺激策の重要性は引き続き高い

人々の移動・行動量データから、米国では経済活動が横ばい状態になっていることが確認できますが、これは、経済成長が鈍化していることを示します(そして、感染者が増加した場合は悪化する可能性があります)。経済成長の鈍化は、最近の経済指標から確認することができます。たとえば、米国の8月の耐久財受注額は4カ月連続で増加したものの、勢いは鈍化しました 2 。ワクチンが開発されるまでは、経済成長が大きく加速することは困難でしょう。パンデミックが終えんするまで、景気刺激策は経済を動かし続けるライフラインであり、州政府や地方自治体など、支援を必要とする部門は数多く存在すると考えます。

経済成長の底堅さが確認されれば、株式市場もネガティブに反応しないだろう

私は、米国では追加の景気刺激策が、選挙前に実施される可能性もあると考えます(米国政府は最近、米上院共和党が提出した法案よりも強力な刺激策を受け入れる可能性を示唆しました)。ただし、株式市場は、大統領選挙前に追加の景気刺激策は実施されないという見方であると考えられます。このことから、発表される経済指標が安定さえしていれば、追加の刺激策が発動されないことに対して株式市場がネガティブな反応を示すことはないと見込んでいます。

3. FRBの行動は株式市場に何をもたらすでしょうか?

今後の資産購入に対する柔軟性を高めたことが、リスク資産へ強力なサポートを提供する見込み

FRBのインフレターゲット政策の変更は非常に重要な進展であることが、市場関係者にさらに明確になると考えられます。簡潔に言えば、FRBの金融政策はさらに緩和的になり、2023年まで政策金利がゼロ近辺で維持されるとの予測から、金利がより長期間、低い水準で推移すると見込まれます。前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBが量的緩和(QE)の買い入れ額を増やさなかったことに株式市場は失望しましたが、必要な場合、FRBはいつでも資産購入の増額を行うことができます。実際、FRBは、その論理的根拠を広げることで、将来のQE拡大を容易にしました。今までは、「円滑な市場機能」を維持するためにQEを拡大すると述べていましたが、2020年9月のFOMCで、「緩和的な金融状況の促進を支援する」ためにも資産購入を増やすことを明らかにしています。これにより、FRBの今後の資産購入に関する柔軟性が高まります。買い入れ額を増やさなかったとしても、その金融政策の環境は株式などのリスク資産を強力にサポートしています。

4. 米大統領選挙で異議申し立てがなされた場合、どうなりますか?

2016年米大統領選直後の市場の混乱は選挙結果への異議申し立てへの懸念が要因

11月の米国大統領選挙で選挙無効の異議申し立てがなされる可能性を考える際、2016年の大統領選挙当日の夜の出来事が、よい指針になると考えられます。2016年の大統領選挙の翌日、米国株式市場は急落し、金価格は緩やかに上昇しましたが、翌日には株価は回復しました。当時、市場関係者がトランプ氏の勝利を恐れていたために、このような動きが見られたと考えられていました。しかし、私は、ヒラリー・クリントンが翌朝まで敗北を認めず、市場関係者が異議申し立てを懸念したために株価が下落した、という可能性が高いとみています。

大統領選までは、株式市場ではボラティリティの高まりと短期的な株価の急落が見込まれ、金と国債が良好に推移すると予想

市場関係者は異議申し立てがなされる可能性をすでに懸念しており、今秋の選挙でも同様の反応が起きると思います。選挙までの数週間は、株式市場ではボラティリティの高まりや株価の短期的な下落が見込まれ、このような環境では、金と国債の良好なパフォーマンスが予想されます。実際に選挙で異議申し立てがなされた場合、決議が出るまで、そのような市場環境が続く可能性があります。投資家はその可能性に備える必要があると思いますが、実際にはどう向き合えばよいでしょうか。最後の質問で、投資家が取るべき態度をお答えします。

5. これらが意味することは何でしょうか?

十分に分散されたポートフォリオを維持することが重要

長期的な投資目標に着目し、短期的な雑音やボラティリティを無視するように試みることが大切で、そのためには、株式、債券、オルタナティブ資産などの主な資産クラス全体にバランスよく投資し、各資産クラスでも十分に分散されていることが重要であると考えます。世界金融危機の際に多くの投資家が学んだ最大の教訓の1つは、恐れのために株式への投資を放棄すると、損失が確定し、運用目標の達成を逃してしまうということでしょう。米国株式はすでに大きく売られているため、魅力的な投資機会を提供している可能性があるとみています。前回にお伝えしましたが、特にテクノロジーセクターは、FRBの行動や新型ウイルスのパンデミックから恩恵を受けると考えています。

市場とは、短期においては「期待の投票」であり、長期的においては「価値の計測」である

短期的な雑音と長期的なファンダメンタルズの間にある緊張は目新しいものではありません。経済学者のベンジャミン・グレアム(1894-1976)はかつて、市場とは、短期においては「期待の投票」であり、長期的においては「価値の計測」であると述べました。言い換えれば、株価は長期的には企業のファンダメンタルズの尺度を反映しますが、短期的には流れるニュース、経済指標、さらには噂に対する投資家の変化する感情的な反応を映し出すものです。選挙の年には、大統領候補者の政策発表と投票結果に関する日々(あるいは絶え間ない)のニュースがあるため、市場には「期待の投票」の雰囲気が増します。そのため、投資家は、どのような困難に直面しても、雑音を無視して目標を見据えことにより注力する必要があります。

1.出所:MarketScreener、“Mnuchin Says Fed Lending Programs Have Done All They Can”、2020年9月22日。
2.出所:The Wall Street Journal、“U.S. Durable-Goods Orders Rise for Fourth Straight Month”、2020年9月25日。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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