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大統領候補者の討論会への投資家向けガイド

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候補者が取り組むべき最重要事項について

〔要旨〕

●注目が集まる第1回の米大統領候補者討論会
●①米国の新型ウイルス対策、②対中政策―などが議題になるだろう
●大統領候補討論会では、両候補者の最優先事項を知ることが重要

1. 注目すべき重要なトピック
①新型コロナウイルス感染症、②対中政策、③税制、④インフラ―など

2. まとめ
討論会で両候補者の最優先事項が明らかになることに期待

 

注目される米大統領候補者による討論会

トランプ大統領とバイデン前副大統領の討論会は、11月3日の大統領選挙の前に3回行われる予定で、その1回目が9月29日に行われます。大統領候補者による最初の討論会では、特に野党の候補者について、有権者に忘れがたい印象を与えます。そして、多くの場合、この印象は討論の中身とは関連性があまりないもので、世論とプレゼンテーションに左右されます。要するに、バイデン氏は、有権者に対し彼が大統領として十分に力強く、有能であることを示す必要があります。討論会で、バイデン氏がトランプ大統領とどのように争うかは、選挙結果を大きく左右するでしょう。

しかし、経済と市場にとっては、重要なのはその内容です。本稿では、討論会で取り上げられると予想されるトピックを記しておきます。

注目すべき重要課題

1.COVID-19(新型コロナウイルス感染症)

トランプ大統領が「集団免疫」戦略の実施をほのめかす一方で、バイデン氏は大規模なロックダウンの実施の可能性を示唆

最も重要なのは、米国の新型ウイルス対策です。トランプ大統領は最近のタウンホール・イベントで、新型ウイルスが再び感染拡大した場合、「集団免疫」戦略を追求する可能性があることをほのめかしました 1 。一方、バイデン氏は、医療専門家の勧めがあれば、今春に実施したような大規模な都市封鎖(ロックダウン)の実施を受け入れることを示唆しています。討論会では、候補者が推奨するウイルス対策が確認され、今後どのようにウイルスと闘っていくプランをもっているのか、その詳細が明らかになるでしょう。韓国などの国々では、新型ウイルスが再度感染拡大した際には、強力な追跡システムによる小規模なロックダウンを迅速に実施しており、これはウイルスの抑制に非常に効果的です。バイデン氏が同様の対策を提案するかどうかは、興味深いところです。ロックダウンは小規模なものか、それとも大規模なものになるでしょうか?推進するのは連邦政府、または州になるのでしょうか?連邦政府は感染者とその接触者を追跡する強固なインフラを構築するのでしょうか?これらのアプローチは、経済活動に大きな影響を与えることが考えられます。さらに、ワクチンの治験が進むにつれ、それがどのように国民に配布されるかを注目したいと思います。

2. 対中政策

トランプ大統領が再選した場合、金融市場での混乱が懸念される

中国への対応策について、両候補の計画が注目されます。トランプ政権の中国への対応は金融市場を大きく不安定にしており、再選すればさらに場当たり的で攻撃的な対中政策が取られることが、懸念されています。トランプ大統領が自身のプランについてどのような発言をするのか、すなわち、再選した場合、二国間に注目した破壊的なアプローチを取り続けるのかを確認したいと思います。一方で、バイデン陣営が米中関係にどのような影響を与えるのかについては、読みにくい状況です。主な可能性は2つあります。1つ目は、バイデン氏が中国との関係で「リセット」ボタンを押すこと、2つ目は引き続き中国に対して攻撃的であるが、より練られた多国間的な対応を取るということです。バイデン氏のアプローチはどちらも市場に大きな混乱をもたらすことはないでしょう。2つ目については、いくつかの懸念を引き起こす可能性がありますが、多国間アプローチはトランプ陣営が実施したような二国間アプローチよりも効果的であると考えられます(そしてグローバル化へのステップとなります)。

3. 税制

バイデン氏の増税計画は市場へ影響を与える懸念事項

バイデン氏が大統領に選ばれた場合、市場に与える最大の懸念は増税の可能性でしょう。バイデン氏が公約として掲げている税制計画の詳細、そして、経済の状態が増税実施のタイミングに与える影響について確認したいと思います。バイデン氏は税率を上げる計画を示していますが、その実施はいつになるでしょうか?大統領就任後、ただちに増税すると決定した場合、それは企業への増税でしょうか、個人への増税でしょうか、あるいはその両方でしょうか?個人の税金が引き上げられた場合、その対象は富裕層の米国人のみでしょうか?景気回復は依然として非常にぜい弱であるため、2021年に増税がされる場合には大きな問題となるでしょう。

4. インフラ

両候補者のインフラ計画は現段階では不明

これは、両候補者がより多くの財政支出を投じると述べた分野の1つですが、その詳細はよく分かっていません。討論会は、各候補者のインフラストラクチャーへの支出計画の内容と金額、資金調達の方法、そして実施時期を確認できる機会です。1930年代には、インフラへの政府支出は人々を仕事に復帰させる手段となり、失業者を減らすことにより、米国経済の回復に役立ちました。今回も同様なことが起きると言えるのでしょうか?

5. その他の注目トピック

①テクノロジー、②ヘルスケア、③気候変動―も注目されるトピック

上記5つに加えて、市場や投資家のポートフォリオに影響を与える可能性があるトピックとして以下が挙げられます。

●テクノロジー:テクノロジーセクターは、投資家を混乱させている分野です。両候補者ともに、テクノロジー業界への規制に興味を持っているようですが、その対象は異なります。どちらの候補者の場合も、それは優先的な政策となるのでしょうか?これはテクノロジーに投資をしている投資家が知りたい重要な事項です。

●ヘルスケア:ヘルスケアに関する各候補者の計画も、不明瞭です。両候補者ともに薬価の値下げに関心を持っているようですが、私たちが回答を得たい重要な疑問とは次のものです。①トランプ政権が計画しているオバマケア(医療保険制度改革法)の代替案とは何ですか?②バイデン氏はオバマケアの再構築と強化を目指すのか、それとも国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」を推進するのでしょうか?これらの疑問への回答は、ヘルスケアセクターに大きな影響を与えます。

●気候変動:カリフォルニアとオレゴンで山火事が猛威を振るい、湾岸地域ではハリケーン「ローラ」と「サリー」からの回復を目指す中、気候変動に関する議論が活発になっています。国立ハリケーンセンターは今シーズンのハリケーンに対して承認された名称を全て使用したため、今後ハリケーンが発生した場合、その名称は24のギリシャ文字のリストから順に用いられます。これは2005年以降、初めてです。両候補者は、特に2015年のパリ気候協定(トランプ氏が脱退をし、バイデン氏は再加入することを約束しています)など、気候変動の問題にどのように対処するでしょうか?もちろん、これは短期的および長期的に重大な経済的影響を及ぼします。

まとめ

討論会で両候補者の最優先事項が明らかになることに期待

4年ごとに、各大統領候補者はさまざまな戦略を備えた政策を展開します。そして各候補者の政策から影響を受ける特定のセクターは、短期的に不安定となります。ただし、実際に署名がなされ実行される法案は、通常、ごくわずかです。上記で挙げたトピックに関する詳細も確認したいと思いますが、より重要なのは各候補者の政策の優先順位を聞くことです。立法化される政策は1つか2つだけであり、彼らの最優先事項を知りたいところです。

1.出所:USA Today、2020年9月15日。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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