長期の資産形成が目的で始めた投資でも、投資にリスクがある以上、運用がプラスにならなかったり元本割れしたりすることはあり得ます。投資信託への投資で失敗を避けられるよう、ありがちな7つの失敗例とその回避方法を紹介します。
目次
投資信託への投資は、短期の売買差益を追求する場合と長期の資産形成を狙う場合が考えられます。長期の資産形成のために投資信託を考える場合に大事なのは費用(コスト)です。
投資信託における費用は3つあります。
1つ目:最初に投資するときにかかる販売手数料
2つ目:投資している期間に運用してもらうためにかかる信託報酬
3つ目:解約時に払う手数料である信託財産留保額
投資信託で失敗を避けるため、商品を選ぶ際にはこの3つの費用を考慮しましょう。特に、2つ目の信託報酬は投資信託を保有している間にずっとかかる費用なので重要です。
長期の投資では複利効果が大きいという話は聞いたことがあると思いますが、同じように費用が高いことはマイナス効果が複利で効いてくることになります。信託報酬は一般的には、0.5〜2.0%程度です。例えば、毎月2万円の積み立てを30年続けると、想定利回りが5%だと約1,665万円貯まる計算になります。もし信託報酬が1%高いとすると想定利回りがネットで4%になるわけですから、30年後の積立額は約1,388万円です。信託報酬1%の違いが30年では約277万円の違いになってきます。
ただ、信託報酬で気をつけなくてはいけないのが、投資信託のタイプにより水準が違うことです。信託報酬は、運用会社や販売会社などによる運用・管理にかかる業務への対価です。一般的に、日経平均や東証株価指数(TOPIX)に連動するようなパッシブ型の投資信託の費用は安く、ファンドマネージャーが個別銘柄で運用するアクティブ型の投資信託は会社訪問などの調査に費用がかかるので高めになります。また、国内資産よりも海外資産で運用するほうが高めになります。信託報酬が安いほどいいというわけではなく、自分の取れるリスクに対する見合いだと考えるべきです。
投資信託を買う時に、「人気ランキングを参照する」「金融機関がすすめるファンドを買う」という人は多いと思います。ただ、ランキングやおすすめを鵜呑みにするのは危険です。最低でも、購入する投資信託の運用方針、投資対象、ファンドが指標としている株価指数などは理解しておきたいところです。
ランキングが上位、おすすめの投資信託は、その時点で、「パフォーマンスが優れている」「テーマが時流に乗っている」、もしくは「金融機関が販売に注力している、新しく設定したファンドである」ことが多いのです。
長期投資で考える場合は、「そのファンドが自分の投資に求める銘柄であるか」「自分の分散投資にふさわしい銘柄であるか」のほうが大切です。また、その投資信託のリスクについても知るべきでしょう。ランキングと銘柄の良し悪しは比例しません。あくまでも参考程度にしておくべきです。よくわからないまま人気の投資信託やおすすめの投資信託を保有し続けた結果、失敗してしまうという人は意外と多いのです。
テーマ型の投資信託というものがあります。例えば、「ロボティクスファンド」「バイオファンド」「AIファンド」「5Gファンド」など、その時に旬なテーマで株価の動きも目立っているテーマに投資するものです。
ただ、そのテーマが10年後、20年後、30年後も続いているとは限りません。短期的な値上がり益狙いでテーマ型ファンドを買うのは悪くはありませんが、長期投資にふさわしいかどうかはわかりません。今が旬のテーマは、継続することもあり得ますが、その時がピークで短命に終わることも多いからです。
投資信託は、その時の旬のテーマで新規設定されることが多いのです。そのほうが販売する金融機関にとって売りやすいからです。しかし過去の例では、旬のテーマで大型の投資信託が設定されるとその時がピークとなることもありました。
投資信託で長期投資するなら、ドルコスト平均法の発想で下げている時に多く買えることが将来の好パフォーマンスに繋がります。今が旬である必要はなくて、安い時にしっかり買っておくことが正解になることも多いわけです。テーマ型の投資信託を買うときも、自分のポートフォリオの中での分散投資が効くかどうかなどを判断材料に投資を考えてみましょう。
投資信託は基本的には長期投資で資産を形成する金融商品です。しかし、最近は上場投資信託であるETFなどの手数料が安い投信も増えてきており、ETFを株と同じように短期の売買差益狙いで売り買いする投資家も増えてきています。基本的には公募投資信託はETFとは性格が違います。投資信託は長期の分散投資で効果がでるように設定してあります。短期で投資信託の売り買いをして失敗するケースも多くみられます。分散投資をしている分、短期的には大きな値上がりを狙いにくい仕組みだとも言えるからです。短期で勝負するのなら個別銘柄やETFで勝負したほうが明らかに効率的ですし、コスト面でも投資信託の買付時の手数料や売却時の手数料は株式手数料に比較すると高いことが多いはずです。
投資信託への投資の王道は、日々の基準価格の動きにばかり気を取られることよりも、ドルコスト平均法で安い時にしっかり買い、将来優れたパフォーマンスを出すことです。タイミングではなく、時間に投資することがポイントです。
>>投資信託の正しい売買タイミングを詳しく知りたい方はこちら
投資信託には定期的に分配金を出すものと分配金を出さないものがあります。かつて、日本では毎月分配型の投資信託が圧倒的に主流でした。それは、投資信託を購入する年齢層が高く、投資信託を月々の年金を補助する金融商品として捉えている層が多かったためです。
日本の投資信託では、運用益以外にも元本の一部を分配金として払い戻すことが認められているため、運用益が出ているときは運用益から分配金を出しますが、利益が出ない場合は運用資金の元本を戻して分配金に回すというケースがあります。特に高分配のファンドでは、基準価格を確認しておきましょう。
分配型のファンドでも、再投資できます。ただ、その場合、利益から分配金がでていると、その利益に税金がかかり、再投資による複利効果が減ってしまいます。決算時に分配金を出すタイプか、分配金を出さないタイプかを購入時に確認しましょう。
投資信託を購入するときに、必ず過去のパフォーマンスをチェックすると思います。資産運用では、短期であれ、長期であれ、そのリターンが一番重要なのは間違いありません。過去の実績のいい銘柄さえ見つければ、資産運用の成功だと考えがちです。しかし、実際は過去の実績と今後の予想リターンは全くの別物です。
投資では、アセットアロケーションが重要だと言います。日本株の中の投資信託でどれを選ぶかよりも、日本株を選ぶか、米国株を選ぶか、新興国の株を選ぶか、はたまた債券を選ぶかといった資産クラスを選ぶことのほうが長期のパフォーマンスを決定する要因としては大事だというものです。
長期運用の金融商品として投資信託を考えるのなら、まずは分散投資の見地からアセットクラスを選び、その上で投資するファンドの運用方針、投資対象、ファンドが指標としている株価指数、費用などを優先して比較するべきです。過去のパフォーマンスはあくまでも参照データと考えましょう。
値動きが日経平均などの指数より大きくなる「レバレッジ型」の投資信託の人気が出ています。指数が上がったら利益が出る「ブル型」と下がったら利益が出る「ベア型」があります。レバレッジ型のETFは売買代金のランキング上位を占める人気商品となっており、通常の投資信託でも2〜5倍程度のレバレッジをかける投資信託があり、ハイリスク・ハイリターン商品として注目されています。
こういったレバレッジ型の投資信託は、例えば「ブル2倍」の場合、日経平均が翌日1%上がれば、そのファンドの基準価格が2倍の2%上がるように設定されています。しかし、長期で日経平均が10%上がれば、基準価格が20%上がるという設定ではないのです。そのため、相場が一方通行で上がるようなときにはまだいいのですが、指数のボラティリティが大きい局面や、長く揉み合いが続く場合、投資期間が長い場合などは、指数の上昇率に対して基準価格の上昇率が劣後する傾向が出てきます。つまり、レバレッジ型の投信は長期投資には適さない金融商品だということを理解しておきましょう。
プロ野球の監督として活躍した故野村克也氏は、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」という松浦静山(江戸時代の大名、肥前国平戸藩主)の名言を好んで使っていました。成功には色々なパターンがありますが、失敗には共通したものが多いのでその典型的な例をきちんと把握しておくことが重要だと言えます。
投資信託を活用した資産運用で陥りがちな落とし穴と、その回避法について解説しました。失敗を避けることで、投資で成果を上げることを目指したいですね。
※本記事は投資に関