学資保険(こども保険)とは、子どもの教育資金準備を目的として加入する貯蓄型の保険です。つみたて・ジュニアNISAなど、選択肢が増えた今だからこそ、改めて学資保険の仕組みやメリット・デメリットについて理解を深めましょう。
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そもそも、なぜ、教育資金準備を早めに始める必要があるのでしょうか。それは、教育費用が住宅費用、老後費用に並ぶ「人生の三大資金」と呼ばれるほど、高額になるものだからです。
文部科学省が行っている「子供の学習費調査」によると、1年間に必要な教育費用(学校授業料・給食費・行事費など)の平均額は次の通りです。国からの助成金や無償化制度などもありますが、親の収入によっては受けられないこともあります。また、この他に、塾や習い事などの費用がかかる場合もあります。
学校費用(授業料等) | 1年度分 | 卒業までに必要な金額 | ||
幼稚園 | 公立 | 13万9,752円 | 3 年間 | 41万9,256円 |
私立 | 36万2,258円 | 3 年間 | 108万6,774円 | |
小学校 | 公立 | 10万6,830円 | 6 年間 | 64万980円 |
私立 | 95万1,802円 | 6 年間 | 571万0,812円 | |
中学校 | 公立 | 18万1,906円 | 3 年間 | 54万5,718円 |
私立 | 107万5,169円 | 3 年間 | 322万5,507円 | |
高校 | 公立 | 28万487円 | 3 年間 | 84万1,461円 |
私立 | 71万9,051円 | 3 年間 | 215万7,153円 |
出典:文部科学省「平成30年子供の学習費調査の結果について」
教育費用の中で、最も高額になるのが大学進学費用です。塾の月謝だけでなく、受験にかかる費用も高額になるため、実際には下記の金額プラス数十万円の準備が必要です。
授業料・設備費など | 入学料 | 初年度費用 | |
国立大学 | 53万5,800円 | 28万2,000円 | 81万7,800円 |
公立大学 | 53万8,734円 | 39万2,391円 | 93万1,125円 |
私立大学(文化系学部) | 93万6,925円 | 22万9,997円 | 116万6,922円 |
私立大学(理科系学部) | 129万654円 | 25万4,309円 | 154万4,963円 |
私立大学(医歯系学部) | 374万9,311円 | 107万3,083円 | 482万2,394円 |
出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」平成30年度分
教育費用の負担は、子どもの成長と共に大きくなっていきます。そして、ほとんどの場合、支払期日が決まっています。いざというときに慌てないためにも、子どもが小さいうちから計画的に貯蓄しておくことをおすすめします。
準備期間は、15年から18年と長期にわたります。そのため、強制的あるいは自動的に毎月一定額を貯蓄し続け、教育資金が必要なタイミングで引き出せる方法が適しています。
学資保険は、その名の通り教育資金準備に特化した「保険」です。中には組み合わせを変更できるものもありますが、一般的には「貯蓄」と「子どもの生命保険」、それから「親(契約者)が死亡した場合の保障」がセットになっています。
多くの自治体で、子どもの医療費に対する助成制度が実施されています。また、親として個別に生命保険に加入している人も多いでしょう。そのため、「保険」部分は不要だと考えるかもしれません。しかし、学資保険が「保険である」ことで、次のようなメリットが得られるのです。
万一、契約者である親が死亡してしまった場合でも、学資保険は続けることができます。保険料の払い込みは不要です。保険会社が代わりに積み立てを続け、約束通りの金額を用意します。契約内容によっては、さらに一時金や年金型の育英資金を受け取れるものもあります。もしものときでも、教育資金を確保する「多面的な子どもの保障」が学資保険なのです。
また、学資保険では、高校・大学進学時など教育費用が必要なタイミングで満期保険金を受け取ることができます。満期保険金だけでなく複数回の給付金(祝い金)を受け取れるタイプもあります。高校・大学進学費用は、卒業年度の秋頃から受け取れるものが多く、推薦入学などにも対応できるように設定されています。
また、出生前でも加入できるものが多く、産後の多忙時に契約を交わす煩わしさがありません。加入時期にもよりますが、払込期間を15歳までに設定することで、教育費の負担が重くなる前に保険料の払い込みを完了することも可能です。
外貨建て保険やつみたて・ジュニアNISAでは、運用結果によっては資金を増やせる可能性がありますが、学資保険では予め設定した金額以上に増える期待はできません。満期を迎える前に解約した場合の「解約返戻金額」は、ほとんどの場合で保険料払込総額を下回るため、途中でやめることはおすすめできません。
また、学資保険の保険料は「貯蓄部分」と「保障部分」を含んだ金額です。そのため、特約などを付加し保障を手厚くすると、「保障部分」の保険料が増え、満期金額よりも保険料払込総額が多くなってしまう可能性があります。
まず「目的」を明確にすることが重要です。保障よりも「教育資金を準備すること」を重視するのなら、「学資保険」以外にも次のような選択肢が考えられます。
コツコツと貯めることが苦手ではない人は、預貯金で準備してもいいでしょう。各銀行の「自動積立サービス」やネット銀行の「定額自動入金サービス」など、毎月一定額を貯蓄用口座に移動させるサービスを利用する方法もあります。
・預貯金のメリット
預貯金のメリットは、利便性の高さです。現金化もしやすく、カード決済や引き落としなどさまざまな支払方法にも対応できます。また、「元本割れしない」点も安心です。万が一銀行が破綻してしまった場合でも、預金保険機構により1金融機関ごとに1,000万円まで保護されています。
・預貯金のデメリット
現在の金利が低いため「増えない」ことがデメリットに挙げられます。また、いつでも換金できるため、他の目的や緊急時の資金に使ってしまうかもしれません。
最近は、学資保険代わりとして、「外貨建て終身保険」や「外貨建て養老保険」なども選ばれています。
外貨建て保険とは、保険料の払い込みや保険金の受け取りに、円ではなく外貨(米ドルや豪ドル、ユーロなど)を用いる保険で、為替相場の変動により満期保険金や解約返戻金額が変わります。扱う商品や外貨の種類などは、保険会社によって異なります。
・外貨建て保険のメリット
メリットは、利率の良さでしょう。円では運用利率が低く、ほとんど増えません。しかし、外貨は運用によって増える可能性があります。保険会社によっては、最低保障予定利率を定め、運用による元本割れを防ぐ工夫をしているところもあります。
また、満期保険金を外貨のまま受け取ることで、留学費用などに使いやすい利点もあります。
・外貨建て保険のデメリット
第一のデメリットは、為替リスクです。為替相場がどのように変動するかは、誰にもわかりません。結果的に利益になる場合もあれば、損失となる場合もあります。仮に運用結果がプラスになっていたとしても、為替相場によっては、円に両替することで元本割れする可能性もあります。
第二のデメリットは、タイミングを合わせることが難しい点です。例えば、老後のゆとり資金ならば、満期金を外貨で受け取って、相場の好転を待つこともできます。しかし、教育費用は「使うタイミング」が決まっています。為替の変動を待つ余裕はありません。
また、保険料を円から外貨にする場合も、受け取った保険金を外貨から円にする場合も、為替手数料がかかる点も注意が必要です。
NISAとは、個人投資家のための税制優遇制度です。通常、投資による利益には約20%の税金がかかりますが、NISAを利用すると毎年一定金額内の投資利益が「非課税」になります。
つみたてNISAは、非課税枠が年間40万円、非課税期間が20年間で、長期の積立・分散投資に適した投資信託を扱っています。ジュニアNISAは、利用者が0~19歳に限定されており、二親等以内の親族(親・祖父母など)が運用管理を行います。非課税枠は年間80万円、非課税期間は5年間です。
(※ジュニアNISA制度は、2023年に終了。利用者が20歳までは、投資商品を非課税で保有し続けることが可能)
・つみたてNISA・ジュニアNISAのメリット
投資によって、資金を増やせる可能性があります。つみたてNISAの場合は、販売手数料がかからず、信託報酬も低く設定されている投資信託が対象のため、低コストでの運用が可能です。また、非課税期間が20年と長いため、必要なタイミングまで積立投資を続けられます。
ジュニアNISAは、利用者が18歳を迎える年度まで払い出しができません。そのため、他の目的で使ってしまうことを避けられます。また、子どもの名義で投資運用を行うため、子ども自身が興味を持ち、金融リテラシーを身につけるきっかけになることもあるでしょう。
・つみたてNISA・ジュニアNISAのデメリット
元本保証がないのはデメリットといえるでしょう。状況によっては、投資した金額よりも運用結果が下回る可能性があります。
また、ジュニアNISAでは、非課税での払い出し可能時期を「18歳を迎える年度内の1月1日から」としています。多くの大学では、推薦入試合格者に対する入学手続きを12月までの期間で設定しているため、タイミングが合わない場合が考えられます。
学資保険とは、「多面的な子どもの保険」です。親にもしものことがあった場合でも、子どもの教育費用を守ることができます。「増やしたい」という期待に応えることは困難ですが、「確保する」という点ではとても有効な手段です。
預貯金に加えて、外貨建て保険、つみたて・ジュニアNISAなど、選択肢が増えた今だからこそ、目的や考え方次第で複数を混ぜて教育資金の準備をしてみてはいかがでしょうか。