あらゆる業界がクロステックによって変化を遂げる現代。法律分野も例外ではありません。今回は、法律×IT「リーガルテック」について、市場規模や具体的なサービスを紹介しながら詳しく解説していきます。
目次
「X-Tech(クロステック)」とは、既存の業界に最新テクノロジーを組み合わせることで、これまでの常識を打ち破る新しい価値を提供するサービスのことです。
現在、AI・ビッグデータ・VRといった最新テクノロジーの進歩によって、金融や医療、不動産などさまざまな業界でクロステックが進んでいます。たとえば、金融×IT「フィンテック」の事例として、AIに資産運用を任せるロボアドバイザーなどがあります。
変革の波は、比較的保守的といわれる法律分野にも押し寄せています。最新テクノロジーと法律を掛け合わせた新たなサービスを法律×IT「リーガルテック」といいます。
フィンテックや不動産テックが比較的メディアなどで華々しく取り上げられているのに対し、リーガルテックは一般的な知名度があまり高くありません。しかし、アメリカで始まったリーガルテックは今後日本でますます拡大していく分野だと見込まれています。
リーガルテックの市場規模は、世界で約1.8兆円、国内で約300億円といわれています。リーガルテックは2010年ごろに訴訟大国のアメリカで始まりました。その後、2014年ごろから日本でもスタートアップ企業が登場し始めます。
2019年6月4日付の「日本経済新聞」では、リーガルテックを事業とする企業が英語圏では約1,000社あるのに対し、日本ではまだ数十社しかないことが取り上げられました。
他のクロステックと比べてリーガルテックを事業とする企業が増えにくいのは、法律分野への参入障壁の高さです。サービス開発にはテクノロジーへの理解とともに法律に関する専門知識が必要とされます。そのため、現在は若手弁護士が企業するケースが多くあります。
しかし、英語圏でニーズが高まりを見せていることからも、今後リーガルテックのサービスを提供する企業は徐々に増加し、国内市場規模も拡大していくと予想されます。
続いて、リーガルテックの具体的なサービスを紹介します。
まず、2019年前半に比較的よくメディアで取り上げられたのが、AIが契約書をチェックするサービスです。代表的なサービスは「LegalForce」で、既にサントリーホールディングスをはじめとした上場大企業の法務部門を中心に100社(2019年8月時点)で導入されています。
他に、クラウド型の電子署名サービスを提供するドキュサインは、企業のペーパーレス化の波に乗って好調にサービスを展開。AIサムライが提供する類似特許を数十秒で検索してくれるサービスも人気です。
また、リーガルテックが対象とするのは企業向けサービスだけではありません。ジーヴァテックは「契約における法務格差の解消」をかかげ、契約内容の有利・不利をAIが判定してくれる個人向けのサービスを開始。
オンライン登記書類作成支援サービス「LegalScript」を提供するサンプルテキストは、個人向けにクーリングオフの書類を自動作成できる「LegalScriptPersonal」の提供を開始しました。今後、個人を対象としたサービスもより増加していくと見込まれます。
「弁護士ドットコム」「弁護士トーク」といった弁護士による無料相談、弁護士とのマッチングを提供するサービスも見逃せません。弁護士ドットコムの登録弁護士数は1万5,000人(2019年9月時点)にものぼります。
さらに、2020年2月からは民事裁判の争点整理でWEB会議が導入されることが決定しました。WEB会議は最高裁と全国の8地裁、知財高裁で先行的に実施されます。WEB会議によって出頭する必要がなくなり、裁判期間が短縮されることが期待されています。
さまざまなサービスが登場しているリーガルテックですが、現状ではまだ知名度が低いという課題があります。
大企業で導入される事例が増えているものの、FRONTEOが2019年7月に発表した調査では「リーガルテックを知っている」と答えた法務担当者は大企業で58%、中堅・中小企業では32%にとどまっています。
また、リーガルテックの導入状況については大企業で17%、中堅・中小企業で12%と、いまだ導入が進んでいるとはいえない状態です。
ただし、逆にいうと今後ますます成長が見込める分野だと考えることもできます。リーガルテックが始まった英語圏では企業数が日本よりはるかに多いことから、今後日本での起業が激化することも予想されます。
リーガルテックによって、法律の分野は今後大きく変わっていくことでしょう。