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富裕層の相続を成功させるポイント4選

資産を多く持つ人ほど、相続対策の必要性は高まります。しかし相続対策のつもりでやったことが、かえって悪影響を及ぼすことも少なくありません。そこで今回は富裕層の相続を成功させるための4つのポイントや、相続の良し悪しの見分け方などについて解説します。

良い相続・悪い相続の見分け方

そもそも相続対策をする際、良い相続と悪い相続というものはあるのでしょうか。結論からいえば相続の良し悪しは、人によって異なります。故人と相続人の少なくとも2人以上の登場人物がいるため、それぞれの視点によっても異なるでしょう。「相続対策」の良し悪しをシンプルに見分ける方法は、その対策の目的を達成できるかどうかです。

多くの富裕層がとる相続税対策であれば、目的は税額を抑えて引き継ぐ資産を増やすことではないでしょうか。対策をとることによって資産を減らしてしまえば、その相続対策は失敗に終わったことになり、悪い相続対策となります。遺産分割で遺族がもめないことを強く願うのであれば、相続対策として遺言書の作成が有効です。

しかし遺言書に形式的な不備があり、相続人が裁判で争うようになってしまうのであれば、これも悪い相続対策といえます。最大の失敗は、事前にできる対策をとらないことです。結果的に多額の税金が必要になるだけでなく、兄弟姉妹など相続人同士でもめたり納税資金が足りなくなって困窮したりするという可能性もあります。

悪い相続は相続人にとって人生を変えるほどの大きなストレスになるかもしれません。最も身近な人たちの幸せを願うのであれば、相続人同士でしっかりとコミュニケーションをとり対策にベストを尽くすことが「良い相続」といえるのではないでしょうか。

相続で失敗した人はどうなる?

相続対策における極端な失敗例を見てみましょう。故人は数億円の資産を持つ中小企業のオーナーです。相続税を圧縮するため、数年前からマンションやアパートなどの不動産を購入しています。他にも株式や仕組み債と呼ばれる複雑な金融商品などを保有し、生命保険にも加入など相続の対策をしました。「日本はいずれ破綻する」「日本円の価値は下がる」と信じており、現金や預金はほとんど持っていません。

また相続対策の一環として念のため自分で遺言書を作成し、配偶者と3人の子どもたちに分割方法を指示しました。しかし実際に相続後はマンション経営が低迷して7割ほどが空室になっており、団信にも加入していなかったためローン返済が家賃収入を上回る「持ち出し」が発生していたのです。相続した配偶者は不動産に関して素人なため、管理会社から言われるままに空室対策をしたものの効果は出ず、わずかに相続した預金は管理費や修繕費用などで減る一方になりました。

結局売却することにしたもの、不動産業者に足元を見られて二束三文でしか売れません。同様に長男が相続した金融商品の価格は下がり続け、我慢できずに売却してしまいました。この経験で投資に興味を持った長男は、残ったお金と生命保険の保険金でFX(外国為替証拠金取引)に挑戦し、あえなく撃沈。相続財産のほとんどを失うことに。

長女は不動産のみを相続したせいで納税資金を工面できず、延納(納税期限の延期)を税務署に相談しています。結局20年かけて相続税を納税することにしました。利子税は一見年0.7%と少ないように見えますが、元の税額が大きいのでそれなりの金額です。故人の介護を中心的に担っていた次男は、「自分の相続割合が少なすぎる」と遺言書の無効を裁判所に訴えることに……まさに血で血を洗う戦いがはじまりました。

相続対策で押さえておきたい8つの注意点

上記の失敗例を踏まえて相続対策の注意点を8つ取り上げてみます。

1相続人が管理できる資産か?

失敗例では配偶者や長男が投資商品をうまく管理できず、安い価格で「投げ売り」することになりました。管理方法が分かりにくい相続財産や、相続人の金融リテラシーが低い場合は管理していくにあたり大きなストレスを与えてしまいます。

2資産を手に入れることにより財産を増やすことができるか?

節税対策で買ったマンションに見込んだ入居者を獲得できず、赤字になる例は少なくありません。節税効果だけでなく経営として成り立つかどうかを真剣に考える必要があります。また相続後にローンが残らないよう「不動産を購入時に団信の加入ができるかどうか」についても検討しておくことが大切です。金融商品についてもリスク管理を行えないような商品は買うべきではありません。

3納税資金は確保できるか?

相続税の申告・納税期限は、相続が発生したことを知った次の日から10ヵ月以内です。節税になるからといって資産を不動産へシフトしすぎてしまうと現預金が手元にないため、納税資金が捻出できない可能性があります。そのため期限内に相続税を現金で納められるよう生命保険や預金などを活用して納税資金分は別途分けて考えておきたいものです。

4遺言書に形式的不備はないか?

遺言書が有効に成立するためには、民法で定められた要件を満たしていることが必要です。自分で記載する自筆証書遺言は不備があると法的な効力がなくなります。万が一遺言書の内容に不満があり裁判をする場合、不備がある遺言書ではより一層もめる原因になりかねません。そのため遺言書を作成するときは、公正証書遺言を活用するのが賢明です。ただし2019年1月13日から法改正により自筆証書遺言に関して財産目録をパソコンで記入することができるようになりました。また2019年7月10日からは遺言書を法務局で保管できる制度もはじまっているので、うまく活用してみるのも対策の一つになります。

5遺言や贈与は相続人が納得するようなものか?

遺言の内容に対して「相続分が少ない」「故人のために尽くしたのに、他の相続人と同じ割合は納得できない」など不満を感じる相続人は、遺産分割訴訟を提起するかもしれません。2019年7月1日からは法改正により特別寄与分や配偶者の居住権、遺留分などの取り扱いが変わっています。そのため遺言書を作成する際は「特別枠」にも配慮することが必要です。

6判断能力はあるか?

認知症が進んでから作成した遺言書は、有効に成立しないことがあります。判断力の確保という点でも若く元気なうちに対策をはじめたほうがよいでしょう。

7財産や相続人を網羅しているか?

相続人の誰も知らない財産が後から明るみに出たり、実は前配偶者との間に相続権を持つ子どもがいたりすると相続分割がやり直しになる可能性があります。財産の一覧はもれなく作成し、なるべく家族に隠しごとをしないようにしましょう。また相続対策の対象となる人の戸籍謄本を事前に取得して他に相続人がいないかどうかを確認しておくことも大切です。

8次世代の相続にも注意

節税対策は、1回の相続だけではなく相続を受けた相続人が亡くなったときのことも視野に入れて考えたほうがよいでしょう。例えば「配偶者の税額の軽減」により、配偶者は1億6,000万円まで非課税となる優遇措置があります。しかしこの上限額まで相続すると、この配偶者から子どもへ相続する際に、より多くの相続税がかかることもあるため、目先だけの相続対策にならないように心がけましょう。

相続対策を成功させる4つのポイント

上記の注意点を踏まえてまとめると相続を成功させる主なポイントは以下の4つです。

1可視化する

「どのような財産を持っているか」「相続人になりそうな人は誰か」「相続人への要望」などを紙に書き、相続人が見られるようにします。エンディングノートを活用するのもよいでしょう。上述したように財産目録は本人の署名と押印こそ必要なものの、パソコンで作成することも可能です。

2専門家の力を借りる

「生兵法は大けがのもと」といいます。相続における法律関係や相続税、財産の取り扱いなど中途半端な知識だけで話を進めてしまわず、場合によっては税理士など専門家へ相談して対策の間口を広げておくことも有効です。特に2次相続のような専門性の高い話は、素人には手が負えません。相談で専門知識や対策方法が増えることで、より正確な可視化ができるようにもなります。投資商品の運用方法など、セカンドオピニオン的な立場で相談することも可能です。

3相続人になる人とコミュニケーションをとる

遺言書は独断ではなく相続人と十分にコミュニケーションとりながら作成することが重要です。相続人それぞれの要望は異なる可能性が高く、何度も話し合ったうえで相続人同士が納得できる遺言書を作成することがトラブル回避につながります。また財産の活用方法について希望があれば、伝えることも可能です。お互いの意向を確認しあうためにも普段からさりげなく話題にするなどフォローできるとよいでしょう。

4正確な判断ができる時期から相続対策をはじめる

相続対策は正確な判断ができる時期から行うことがおすすめです。なぜなら病気や老化で認知が衰えてから考えると、できる対策が減っている可能性があるからです。一般的に知られている相続対策として1年間に110万円までの贈与は非課税になるという暦年贈与があります。しかし例えば余命宣告されてから贈与しても亡くなる3年前に贈与したものは相続財産となってしまい相続対策となりません。

また認知症をわずらいはじめた場合は、後見人を立てるなどしないと法律行為は行えなくなります。これらは現預金に限らず、不動産や株式など他の金融資産に関しても同様です。人間の寿命はいつまでかは誰にも分かりません。そのためできるかぎり気力も判断力も充実しているうちに相続対策をはじめることで、理想の相続へ近づけていくことが期待できます。

相続対策は専門家へ相談して可視化しておこう

相続対策を自分1人で行おうとすると中途半端な知識や思い込みで適切な対策が取れなかったり、相続人への配慮が足らなくなったりすることがあります。相続対策は自分が亡くなった後の話ですので、元気なうちは後ろ向きに感じてしまい、あまり話題にしたくない人も多い傾向です。しかし富裕層であれば多くの人は相続税がかかります。

急病を患ったり、判断能力が低下したりする可能性は誰にでもあるため、正確な判断ができる時期から相続対策をはじめておくことが賢明です。そのためには相続人を集めて話をする機会を何度も設けることが理想といえます。しかし「どうしても気が引ける」と感じる場合は税理士や司法書士など専門家に相談して「どんな対策があるのか」を確認するところからはじめてもよいでしょう。

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