コロナショックによって、期初の時点で2021年3月期の業績予想を未定とする企業が続出しています。また、公表している企業の間でも前期比減収減益の見通しが相次いでいます。しかし、そのような状況下でも好調を維持している企業が多数あります。コロナ禍でも業績拡大が期待できるビジネス領域とは?
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大半が厳しい経営環境に晒されている中で、2021年3月期の業績に対して強気の予想を打ち出している企業は実は意外と多いのです。約2,400社に上る3月決算の上場企業において80社超が最高益の更新を見込んでおり、単に前期比で増収増益予想の企業まで含めるとその数はいっそう増えることになります。
では、具体的にどういった企業の業績が好調なのでしょうか?
臨床検査薬・研究用試薬を製造している医学生物学研究所がその一例で、新型コロナウイルスの抗体を測定する試薬の取り扱いも開始していることが好調の理由といえます。また、ヤフー傘下のイーブックイニシアティブジャパンは電子書籍事業の2ケタ成長が続く模様で、「ステイホーム」に伴う“巣ごもり消費”で需要が拡大していることも奏功しているようです。
さらに、ペーパーの書類や決裁業務を電子化するソフトの開発を手掛けるエイトレッドは、テレワーク導入企業の急増に伴って受注が拡大中。最高益更新予想とともに増配の方針を打ち出しています。
おそらく、ここまで読んだ人の多くは、「新型コロナが特需をもたらした企業ばかりではないか?」と思ったのではないでしょうか?もちろん、そういった企業も含まれていますが、必ずしもすべてではありません。
確かにテレワークは新型コロナ感染拡大が否応なく導入を促した恰好で、それ以前は二の足を踏む企業が少なくなかったのが実情であるものの、先述したエイトレッドは今期も期初予想通りの業績を達成すれば、4期連続の2ケタ増収増益となります。つまり、テレワークの本格普及前から業績の拡大トレンドが続いていたのです。
また、ヤクルト本社や明治ホールディングスも最高益更新予想となっています。その事実を知ると、「新型コロナの感染予防で免疫力を高める乳酸菌が注目されているからだろう」と推察するかもしれませんが、ヤクルト本社は4期連続、明治ホールディングスは8期連続で過去最高益を更新する見通しで、新型コロナ以前から業績拡大が続いています。
このように、今期最高益予想となっている企業の多くは、かねてより業績好調なのです。そしてコロナショック下においても、安定した事業経営を維持し続けているのです。
電子コミックでトップクラスの実績を誇るインフォコムに至っては、10期連続で過去最高益を更新する見込みで、それを果たせば11期連続の増収、13期連続の増益となります。
一方、株式市場で特に有望視され、中長期的にも革新がもたらされることが期待されるテーマに関連する企業が目立つのも、今期最高益更新組の特徴だと言えそうです。そして、AI(人工知能)やIoT、ロボット、サブスクリプションなどと細分化するよりも、ここではDX(デジタル・トランスフォーメーション)という大きな括りのテーマで捉えたほうが無難かもしれません。
DXは「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよき方向へと変化させていく」という概念で、大手企業を中心にその推進のための設備投資に予算が投じられています。こうした背景を受けて、ソフト・システム開発を手掛けるSBテクノロジーや、社内にDX事業推進室を設立したシステムインテグレーターのキューブシステムも過去最高益を更新する予想となっています。
IoTプラットフォームや遠隔作業支援テクノロジーなどを手掛けるオプティムも然りです。DXという大きな潮流が存在する中で、足元では新型コロナによって遠隔医療・遠隔診療といったニーズも顕在化しつつあり、より広範な関連ビジネスに成長期待を寄せられそうです。
コロナの超逆風下でも業績好調の企業が、実は多いことがわかりました。新型コロナが特需をもたらした企業もありますが、今期最高益予想となっている企業の多くは、かねてより堅調な業績だったことが共通項として見えてきました。また、DXに代表されるような未来の有望テーマ関連企業への期待度が高いことからもわかるように時代の波を捉えて邁進する企業こそ、コロナ不況の中でも強く生き延びていくのでしょう。
*上記は当記事作成時点のものであり、個別銘柄の勧誘あるいは、売買を推奨するものではありません。