AI(人工知能)や5Gなど様々な先端技術が注目される中、自動運転車の実現で重要な役割を担う、レーザーセンサー技術の開発が活発化しています。LiDARのトップメーカー米Velodyne Lidar社による、小型・軽量・低コスト製品の発売も予定されており、自動運転車以外の一般車にも搭載出来る可能性が浮上しています。
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安全な自動運転を実現するために、人間の目に代わって周囲の物体を察知するという重要な役割を果たしているのが、リモートセンサー(遠隔感知)技術です。
宇宙や航空から地球科学まで、多様な分野で活用されているリモートセンサー技術は、様々な種類の感知器を利用して、離れた場所にある対象物からの反射や放射を測定し、特定の領域の物理的特徴を検出・監視することが可能です。
自動運転車では、対向車や自転車、人、障害物といった事故の原因となる周囲情報の収集に、活用されています。
「Light Detection And Ranging(光による検知と測距)」の頭文字であるLiDAR(ライダー)は、自動運転(AD)の開発で最も広範囲に導入されているリモートセンサー技術です。
高速のパルスレーザー(短時間で点滅を繰り返すレーザー)を物体に照射して跳ね返ってくるまでの時間を計測することで、物体までの距離や密度、形状、位置などを測定し、2D・3D画像として取得できる仕組みです。
高解像度で長距離の物体も検知できるため安全性が高く、レベル3~5(運転の主体が人間ではなくシステム)までの高度なADに向いています。
これに対し、自動緊急ブレーキや死角検出、車線維持機能が付いた先進運転支援システム(ADAS)は、電波を利用するミリ波レーダー(RADAR)とカメラが主流です。レーダーはLiDARより低コストで距離や角度、速度などを計測出来、長距離走行に向いているというメリットはあるものの、正確な形状や位置の検知は難しいため、高度なADには不向きとされています。
しかし、ADにも搭載出来る高性能なLiDARは非常に高価であるため、「生産コストの高さが、AD普及の最大の障害となる」との見方が多いようです。部品コストの高さが販売価格に反映するため、必然的に購入層が限定されてしまいます。
高性能なLiDARの低コスト化が実現すれば、量産や販売価格の引き下げにもつながるほか、ADより低価格な先進運転支援システム(ADAS)搭載車に採用し、さらなる安全性の向上に役立てることも可能になります。
このような背景を踏まえ、既に多数のLiDARメーカーが、ドローンへの搭載など様々な用途で、小型・軽量・低価格のLiDAR開発に乗り出しています。
米Velodyne Lidar社は2020年中旬に、同社のLiDARとしては最小の「Velabit」の発売を予定しています。100ドルという低価格で、2.4インチ×2.4インチ×1.38インチというコンパクトさにも関わらず、最長100メートル先の対象も測定可能なため、ADの搭載に向いています。
小型LiDARの開発が加速すれば、いずれ一般車やバイクや自転車などにも、搭載可能になるかもしれません。
LiDARの普及により、事故が劇的に減ると期待される反面、レーザーセンサーが広範囲で日常的に利用された場合、どこまで安全性を確保できるかは現時点において不透明です。
また、レベル5(完全無人)自動運転車を開発中であるTeslaのイーロン・マスクCEOは、既存のLiDARが高価で大型であることを理由に、レーダーとカメラにAIソフトを組み合わせたシステムを推奨しています。この点に関しては、小型化・低コスト化されたLiDARが普及すると共に、解決されるものと推測されます。
独大手自動車部品メーカーBOSHのように、LiDAR とレーダー、カメラを併用し、独自の「長距離LiDAR」を開発しているメーカーもあり、LiDARの小型化や低コスト化だけではなく組み合わせを模索することで、自動走行の安全性を追求できるのではないでしょうか。
米Velodyne Lidar社による小型・軽量・低コスト製品の発売により、一般車にも自動運転装置を搭載できる時代到来となるか、今後さらに注目のトピックです。