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潜在的な成長機会:規制緩和と減税
潜在的な成長課題:関税と移民規制
政権が始まるまで政策の行方は分からない
米国が第2次トランプ政権に向かう中、新政権に誰が入り、どの選挙公約が実現するのか、世界中が注目しています。このテーマについて多くの質問がありましたので、本稿では、ノイズを排して、経済と市場に最も大きく影響し得る政策に焦点を当てたいと思います。
これらの問題を台帳の構造に置き換えて捉えると分かりやすくなります:プラスの影響を与えそうな政策を1つの列に、マイナスの影響を与えそうな政策をもう1つの列に分類するのです。実際の影響は、政策のタイミングと範囲次第となる点に留意することが重要です。これは複雑で微妙な計算であり、あくまでざっくりした見積もりにすぎないことを前置きさせていただきます。
規制緩和:政治的環境が規制緩和に好意的であれば、企業が投資を行う可能性が高まります。トランプ政権は、新たな規制ルール1つにつき10の規制ルール撤廃を行うとの目標を掲げており、これにより大幅な規制緩和環境が生まれる可能性が高いと考えられます。これは、経済成長にとってプラスに働く可能性が高いでしょう。
例えば、ある規制と投資に関する研究結果では、技術革新が急速に進んだ1990年代に米国に比べて欧州の市場規制が厳格化された結果、欧州よりも米国の方が急成長を遂げたとされました1。この研究は、(特に市場参入の自由化を促進する)規制改革が投資を促進する可能性が高い一方、産業への規制強化は投資を抑制する可能性が高いことが分かったとしています。さらに、規制緩和環境は心理的な影響を与え、経済だけでなく市場においても「アニマル・スピリット」を解き放つ可能性があります。最近の市場の動きは、既にそうしたアニマル・スピリットの証左となっているのかもしれません。
減税:トランプ政権は、第1次政権下で導入した減税・雇用法(TJCA)の延長と拡大に重点を置くでしょう。TCJAが失効した場合に財政が成長の足を引っ張る可能性がありますが、これを回避できることから、これは経済にとってプラスに働く可能性が高いでしょう。財政乗数の違いから、一部の減税政策は、他の減税政策に比べてプラスの影響をもたらす可能性が高いという点に留意することが重要です。(財政乗数は、財政支出の増加や減税が国の経済生産に及ぼす効果を測定するものです)。例えば米国議会予算局(CBO)の試算によると、低・中所得者に対する2年間の減税の乗数効果は0.3~1.5であり、高所得者に対する1年間の減税の乗数効果(0.1~0.6)を大きく上回っています2 。
トランプ政権の政策綱領には、国内製造業の法人最高税率を21%から15%に引き下げる計画も含まれており、実現すれば米国は、大国の中でも最も法人税が低い国の1つとなります。しかし私たちは、この提案は、TCJAが投票権を持つ家計に直接影響すること、既に多額の連邦赤字を抱えていること、国防費引き上げへのプレッシャーがあること等を考慮すると、TCJAの延長よりも実現が難しいだろうと考えています。とは言え、TJCAが更新されるだけでも減税の環境が整うことになるため、規制緩和と同様、経済と市場に「アニマル・スピリット」を解き放つ可能性があります。
減税が財政赤字に与える影響についても考慮に入れねばなりません。当初のTCJAには、充分な財源がありませんでした(つまり政策当局が、税収減を歳出削減やその他の税収によって完全に相殺することをしていませんでした)。そのため財政赤字が拡大し、政府債務全体の増加につながりました。ブルッキングス研究所の説明で、「減税の財源は、減税が長期の成長に与えるインパクトに大きな影響をもたらす。非生産的な政府支出の即時削減により賄われる減税はGDPを増加させ得る一方で、政府投資の削減により賄われる減税はGDPを減少させ得る」とある通りです3。しかし、トランプの経済アドバイザー達は、減税(及び規制緩和)が投資、生産性、経済成長を促進し、最終的には間接的に減税分を賄うことになるだろうと主張してきました。いずれの見方が正しいかは時間が教えてくれると思いますが、減税に関連した高揚感が、短期的には米国市場を引き続き押し上げる可能性があります。
関税:トランプ次期大統領は、中国製品に対する関税を60%以上に引き上げ、他国製品に対しては一律の関税10%を導入すると約束しました。トランプ氏が財務長官に指名したスコット・ベッセント氏は、関税は歳入を増やし、戦略的に重要な米国産業を保護するためのツールであるだけでなく、トランプ氏の外交政策目標を達成するための交渉ツールでもあると述べました。
関税をめぐっては、それが単なる脅しに過ぎないのか、あるいは実際に導入されるのか―またそれがどの程度の期間導入されるのか(それに応じて経済への影響が変わる)は不透明です。
一般的に、保護主義的な措置は最適な経済成長をもたらさない傾向にありますが、株式市場にとっては必ずしも長期的なハードルとはなっていません。私たちは、これらの関税が短期的にインフレをもたらし、長期にわたって維持されれば、総需要を減退させる可能性が高いと予想しています。米中貿易戦争のさなかだった2018年12月、米連邦準備理事会(FRB)の地区連銀経済報告(ベージュブック)は、「関税によりコストが上昇したとの報告が、製造業、土木業から小売業や飲食業まで、より広範囲に広がっている」と指摘しました。また関税戦争は(あるいは関税の脅威だけをとっても)、企業投資の抑制につながる、政策の不確実性を生み出す可能性があります。例えば2018年の貿易戦争による不確実性は、米国の企業投資の停滞につながりました。
移民抑制政策:トランプ次期政権が打ち出した移民政策には、2つの重要な要素が含まれます:アメリカ南部国境の実質的な閉鎖、そして既に米国内に居住している不法滞在者の強制送還です。
最悪のシナリオは、大量の強制送還が「スタグフレーション」環境につながることです。このシナリオでは、労働力人口の減少や伸びの鈍化が、経済活動の水準や潜在成長率の低下につながり、景気減速や景気後退を引き起こす可能性があり、同時に企業の賃金コスト上昇を通じてインフレを押し上げることが考えられます。
しかし、それほど劇的ではない強制送還措置及び、または国境がしっかり守られているとみなされた場合に、労働者の一時的な滞在ステータスを認める新しい移民ルールに軸足を移すことによって、こうした政策の影響が緩和される可能性があります。
まとめると、トランプ次期政権の政策の中には、トランプ政権の掲げる他の政策と相殺し合うような働きをするものが含まれることを認識しなければならない、ということです。つまり、私たちはこれら4つの観点について、政権がまだ始まっていない状態で分析を行いましたが、現実にはこれら全てが同時に起こり、経済に異なる影響をもたらす可能性があるということです。すなわちトランプの主要政策の中には、経済成長と市場にプラスの影響を与える可能性があると楽観的に見られるものがある一方で、経済成長と市場にマイナスの影響を与える可能性があると懸念される政策もあるということです。私たちは今後も状況を注視し、定期的に最新情報を提供してまいりたいと考えています。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
アンディ ブロッカー
グローバル・ヘッド・オブ・ パブリック・ポリシー/戦略的パートナーシップ
(執筆協力:アーナブ・ダス)
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