2019年12月に公表された政府与党の「2020年税制改正大綱」において、少額投資のための非課税制度の1つ「ジュニアNISA」が2023年で廃止されることが盛り込まれました。しかし、じつはその一方で、この制度のネックと言われてきた点も見直される見通しです*。
ジュニアNISAの利用しにくい部分が見直されるとなると、制度の廃止前に駆け込みで始めることに妙味がありそうです。このジュニアNISAのおさらいと、どういったところが見直されたのかについて見てみましょう。
*注記:2020年4月28日現在では正式決定しておりません。大綱に沿った内容で税制改正が実施されるのが通例ですが、昨今の新型コロナウイルス対策により審議が遅れる可能性があります。
目次
ジュニアNISAは、子どもの名義で有利に資産を蓄える制度
ジュニアNISAの正式名称は「未成年者少額投資非課税制度」で、子どもの名義で開設した専用口座に親や祖父母など(二等親以内の親族)がお金を出し、投資信託や株式などで運用するというもの。子どもの教育資金など、将来に向けた資産形成をサポートする非課税制度です。運用によって発生した利益に対して税制優遇措置が設けられています。
日本に住んでいて、口座を開設する年の1月1日時点で0歳~19歳の子どもなら、誰でも利用できます。毎年80万円以内の投資で得られた配当金や分配金、売却益といった利益が最長5年間にわたって非課税となります。
極端な例を挙げれば、80万円で買った株式が5年後に2倍の株価になり、その時点で売って80万円の利益が得られたとしても、まったく税金が発生しません。このケースの場合は、通常の投資だと復興特別所得税も含めて20.315%の税金が課され、手取りは約64万円に減るわけですから、この差は軽視できません。
同制度は2016年にスタートし、2023年まで継続して利用できるようになっています。その期限が訪れるまでの毎年、利益が非課税となる80万円の投資枠が得られるのです。
大きなネックだった「払い出し制限」が撤廃されることに
このように、子どもの将来のために資産形成を行ううえで非常の有利な制度だったのですが、なかなか利用者が増えなかったのが実情でした。大きな要因として考えられるのは、「原則として名義人が18歳に達するまで払い出しできない」という制約が設けられていたことです。
たとえば、子どもが私立高校への進学を選び、その入学金などに充てたいと考えても、現行のジュニアNISAではそれが適いません。こうしたネックが不評で利用者があまり増えなかったことから、2023年以降は同制度を延長せず、そのまま廃止してしまうことが決定したようです。
ただし、「2020年税制改正大綱」には制度の廃止とともに、払い出し制限の撤廃も盛り込まれました。2023年の時点で名義人が18歳に達していなかったとしても、今後は払い出しが可能となる模様です。大綱では2024年1月1日以降、源泉徴収なしで払い出しができる、とされています(2020年4月28日時点ではまだ正式決定ではありません)。
19歳以下の子どもがいるなら、ジュニアNISAの駆け込みスタートも検討しよう
払い出しのタイミングにも制約がなくなるのであれば、ジュニアNISAは利用価値が一気に高まると言えるでしょう。制度が廃止されるまでには、まだ3年の猶予がありますので、いまから駆け込みでジュニアNISAを始めても、合計で最大240万円分(最大80万円×3年分)の非課税枠を得ることができるのです。年間110万円までなら贈与税がかからない制度を利用して、その中から最大年間80万円を、祖父母から援助を受けてジュニアNISAで運用するというのも一考でしょう。なお、今回の税制改正大綱によれば、ジュニアNISAにおける2023年までの投資分については、子どもが18歳になるまで非課税枠として保持することが可能になるとされています。
すでに早耳の人は、ジュニアNISAの魅力がアップしそうであることに気づいているようで、駆け込み需要が高まる可能性が考えられます。19歳以下の子どもがいる家庭なら、使い勝手がよくなるジュニアNISAに注目しない手はなさそうです。
この記事を読んだのを機に、子どもの教育資金づくりをあらためて検討をしてみてはいかがでしょうか。類似の制度として他にも一般NISAとつみたてNISAが設けられており、それぞれに税制優遇の特典があるので、それらにも目を向けて、一家そろって有利な運用の仕方を考えてみましょう。
【NISA iDeCoについても詳しく解説】