コロナ禍2年目の現在、人々の働き方は大きく変化しています。ワークライフバランスの重要性がますます高まる中、「with/afterコロナ時代の新しい働き方」として注目されているのが、リモートワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク(Hybrid Work)」です。
4大会計事務所から大手テクノロジー企業まで、すでにハイブリッドワークを採用している企業はたくさんあります。
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日本のリモートワーク定着率は2割
経済活動の再開に伴い、リモートワークからオフィスワークに回帰する企業が増える一方で、リモートワークを継続する企業も多数存在します。
リモートワークに特化した求人サイトWe Work Remotely(WWR)が2020年の求人広告を分析したところ、リモートワーク先進国の米国では1.5万件の求人広告の7割に、リモートワーク可能とする内容が掲載されていました。日本生産性本部が2021年10月に実施した調査では、日本企業のリモートワークの定着率は2割ほどであることが明らかになりました。
リモートワークがさまざまな産業で普及している今、メリットとデメリットの両方が指摘されています。「時間が節約できてライフワークバランスが取りやすい」といったポジティブな声がある反面、「オンとオフの切り替えが難しい」「(社員同士の)コラボレーションやコミュニケーションが減った」「孤独感がある」との声も少なくありません。
また、Microsoftの従業員約6万人を対象にした調査では、リモートワークへの移行で社内のコミュニケーションに悪影響が起きたという結果が出ました。
注目の「ハイブリッドワーク」とは?
リモートワークの利点を活かしつつ生産性や業績を向上させるためには、従業員のフィードバックに耳を傾け、柔軟に対応する必要があります。
ロックダウン(都市封鎖)下における完全型リモートワークの経験を経て、現在多数の企業が採用している働き方が、ハイブリッドワークと呼ばれる働き方です。毎日遠隔で仕事をするのではなく、週に数日など定期的に出勤することで、業務の効率化やコミュニケーションの向上を図ると同時に、リモートワーク疲れや職務怠慢を回避するのが狙いです。例えば、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は4〜6割をオフィス勤務、残りをリモートワークに振り分けています。
単にリモートワークと出勤を組み合わせるだけではなく、2つの働き方からベストなパフォーマンスを引き出せるよう工夫を凝らしている企業もあります。オンラインストレージサービスのDropbox(ドロップボックス)は「Virtual First(バーチャル第一)」をスローガンに、独自のハイブリッドワークモデルを実践しています。同社ではリモートワークを推進する一方で、必要に応じて対面で共同作業やミーティングができるスペース「Dropbox Studio(ドロップボックススタジオ)」を設置しています。Dropbox Studioが通常のオフィスと異なるのは、従業員同士のコラボレーションやコミュニティーづくりをテーマに設計されている点です。個人での作業には利用できません。同社はコロナ前からコラボレーションスペースを設けていましたが、コロナ時代の需要に対応すべく、ハイブリッドワークに適したデザインに一新しました。
問題点とソリューション
一方で、完全型・ハイブリッドにかかわらず、リモートワークの継続がもたらす問題点が指摘されており、そのソリューションとして次のような革新的ツールが開発されています。
従業員のスケジュール管理の最適化
ハイブリッドワークのデメリットのひとつに、従業員のスケジュール管理が複雑かつ非効率的になることが挙げられます。個々の従業員の出勤・遠隔スケジュールを把握し、それに合わせてタスクを割り振ったり、会議や打ち合わせの予定を組んだりと、マネージメントが細部に注意を払う必要があります。
こうした問題を解消し、ハイブリッドワークの効率を最大化しようと、ハイブリッドワーク向けのスケジュール作成・管理ツールの活用が進んでいます。例えば、英スタートアップのCommon Surfaceは、オフィススペースと従業員のスケジュールを効率的に管理するためのプラットフォームを提供しています。
サイバーセキュリティー対策
リモートワーク環境ではオフィスのように高度なセキュリティレベルを維持することが難しく、情報漏洩などのリスクが高まります。実際、コロナ禍でリモートワーク環境を狙ったサイバー攻撃(パスワードや機密情報の盗難、詐欺など)が急増しており、雇用主側の悩みの種となっています。
イスラエルを拠点とするReSec Technologiesは特許取得済みの「Content Disarm and Reconstruction(コンテンツの武装解除と再構築/CDR)」という技術を活用して、従来のマルウェア対策検出ソフトでは回避不能だった脅威から、重要なデータや情報を保護することに成功しました。すでに軍事・防衛、金融、政府、電気通信、石油・ガス企業など、さまざまな業界が同社のサービスを利用しています。
その他、バーチャルオフィスを提供する英Laduma(ラドゥマ)、遠隔用リクルートプラットフォームを展開するHinterview(ヒンタビュー)など、個性的なスタートアップがハイブリッドワーク環境を劇的に向上させるツールを開発しています。
コロナ時代の成長株?可能性に期待
アクセンチュアが「未来の働き方」について実施した調査では、9,000人を超える労働者の83%が「ハイブリッドワークこそが未来の働き方だと思う」と答えました。このような需要拡大に応えて、今後も革新的な商品やサービスが次々に生まれるでしょう。ハイブリッドワークは、投資対象としてもさらなる成長が期待されている領域です。
Wealth Roadでは、大きな可能性を秘めた領域として引き続きハイブリッドワーク市場の動向をレポートします。
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。