資産運用では、さまざまな場面で「長期投資を心がけよう」といわれます。その名の示すとおり金融商品を長期にわたって保有し続ける投資方法です。長期保有には、どのような特徴があるのでしょうか。
今回は、長期投資のメリットとデメリット、長期投資を行う際に活用したい制度などについて解説します。理解が深まることで、資産形成の方法や行動がさらに明確になるはずです。
目次
長期投資のメリット
まずは、長期投資のメリットから見ていきましょう。
リスクが抑えられ、収益が安定しやすい
投資期間が長いため、価格変動リスクが小さくなり安定した収益が期待できます。長期投資を行えば必ず利益が出るわけではありませんが、平均収益率は安定する傾向があり、リスクの低減につながります。
複利効果を高めやすい
運用で得た利益を再び投資することで利息が利息を生み、雪だるま式に資産が増えていく効果のことを「複利効果」と呼びます。投資期間と複利効果には相関性があり、投資期間が長くなるほど複利効果が高くなります。長期投資を行えば、資産運用において重要な複利効果を高めやすいというわけです。
値動きに翻弄されにくい
デイトレードなどの短期投資は、金融市場の動向を頻繁に確認する必要があります。しかし、「この資産は長期で保有する」と決めていれば頻繁に確認する必要はありません。日々の騰落に一喜一憂しなくて済みますし、多くの時間を割く必要もありませんので、心理的負担の軽減にもつながります。
短期投資に比べてコストがかからない
長期投資であれば、取引手数料などのコストがかかるのは「買い付けるとき」「将来売却するとき」の2回のみです。一方、デイトレードなどの短期投資では、売買のたびに手数料がかかる場合があります。金融商品の中には保有中にもコストがかかるものもありますが、基本的に長期投資は短期投資に比べてコストを抑えられます。
長期投資のデメリット
次は、長期投資のデメリットを見てみましょう。
すぐに利益を得るのは難しい
金融市場の動向によっては、長期投資であっても短期で利益が発生することもありますが、一般的にはすぐに利益を得るのは難しいでしょう。長期投資を行う場合は、その前提で投資に取り組むことが大切です。
将来の予測が難しい
将来の予測は、期間が長くなるほど難しくなります。例え期間が短くても将来のことを正確に予測することはできませんが、期間が長くなるほど予測の精度が落ちることは理解しておきましょう。
若いときから始める必要がある
長期にわたって資産を保有し続ける投資方法ですので、若いときから始め、投資期間を確保する必要があります。例えば、現在60歳の人が20~30年の長期投資を行うのは、リスク許容度や寿命の観点で難しいでしょう。
長期投資を行うときに活用したい「つみたてNISA」
長期投資を行うときに活用したい制度に、「つみたてNISA」があります。
つみたてNISAは、2018年1月にスタートした少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。新規投資額は毎年40万円が上限で、非課税投資期間は20年間(最大800万円)です。保有している間に得た分配金と、値上がりした後に売却して得た利益について、購入した年から数えて20年間は課税されません。
つみたてNISAが長期投資に向いている理由は2つあります。
1つ目は、利益が非課税なので複利効果を高めやすいことです。本来税金は運用パフォーマンスを圧迫しますが、非課税なので再投資に回せる金額が大きくなり、複利効果が高まるのです。
2つ目は、つみたてNISAで購入できる投資信託は、金融庁が長期の積立・分散投資に適していると認めたものだけであることです。金融庁のお墨付きだからといって必ず利益が出るわけではありませんが、販売手数料はゼロ、信託報酬は一定水準以下、分配頻度が毎月でないことなどが選定条件となっており、長期投資に適している(複利効果を高めやすい)投資信託が厳選されています。
ただし、つみたてNISAではまとまった金額を一括投資することはできません。したがって、定期的にコツコツ投資していきたい人に向いている制度といえます。
一般的な個人投資家は、長期投資を軸に資産形成していこう
ここまで、長期投資のメリットとデメリット、長期投資を行う際に活用したい制度などについて解説してきました。
一般的な個人投資家は、長期投資を軸に資産形成を進めていくのがおすすめです。まとまった投資資金がない人は、つみたてNISAで非課税メリットを享受しながら長期投資を実践していくとよいでしょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。