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サラリーマンの退職金相場 退職金はいくらもらえるのか?

退職金について日頃から考えている人は、多くはないでしょう。ほとんどの人は定年が近づいてきたときに「そういえば、退職金額はどのくらいだろう」と考えるのではないでしょうか。

今回は退職金の相場や受け取るときの税金、自分の退職金を確認する方法について詳しく解説します。

退職金額の相場はどのくらい?

厚生労働省では、常時30人以上の労働者を雇用する民営企業を対象に「就労条件総合調査」を行っています。ここでは、そのデータを基に退職金の相場を見ていきましょう。

従業員数が多い会社ほど退職金額も多い

定年退職で支払われる退職金の平均額は、以下のとおりです。従業員が30~99人の会社では997万円、1,000人以上の会社では1,964万円と、約2倍の開きがあります。

<平均退職給付額(定年)>

従業員数 退職金額
1,000人以上 1,964万円
300~999人 1,464万円
100~299人 1,215万円
30~99人 997万円

学歴別の退職金平均額

学歴による定年退職金額の差を見てみましょう。高校を卒業して30~99人の企業に勤めた場合の退職金額は、大学を卒業して1,000人以上の企業に勤めた場合の約3分の1です。

<平均退職給付額・学歴別>

従業員数 大学・大学院卒 高校卒
1,000人以上 2,125万円 1,858万円
300~999人 1,764万円 1,216万円
100~299人 1,544万円 1,026万円
30~99人 1,367万円 768万円

「就労条件調査」では、月収平均額についても調査しています。勤続35年の平均月収は、「高校卒・30~99人の企業」では約30万円、「大学卒・1,000人以上の企業」では約53万円です。学歴によって、退職金算出基準となる月収にも大きな差があることがわかります。

退職理由による退職金額の違い

退職金額は、退職理由によっても変わってきます。定年を迎える前に自分の都合で退職した場合は「自己都合退職」となり、退職金額は定年退職の場合と比べて3割ほど少なくなります。

<平均退職給付額・退職理由別>

退職理由 退職金額
定年 1,605万円
自己都合 1,115万円
会社都合 1,844万円
早期優遇 2,087万円

-会社都合と早期優遇の違い

会社都合退職とは、経営破綻や業績悪化に伴う人員整理などで労働契約を解除されるケースや、勤務地移転やハラスメント被害を受けるなどの理由で退職を余儀なくされたケースなど、自分の意志に反して退職するものを指します。ただし、懲戒処分の対象となるような問題を起こして解雇された場合は、自己都合退職として扱われます。

早期優遇には恒常的な制度と緊急募集があり、どちらも割増退職金などの優遇措置があります。恒常的な制度では、あらかじめ定められた勤続年数や年齢、役職などの条件を満たした従業員が、勤続または早期退職を選択できます。

緊急募集は、経営状況の悪化などに伴う人員整理などの理由で、期限や人数を決めて退職者を募るものです。この場合は、必ず会社から対象者や退職金優遇の条件が提示されます。提示がない場合は早期優遇に該当せず、会社都合退職となります。

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退職一時金以外の退職給付

「退職金」と聞くと、まとまった金額を一括で受け取る「退職一時金」をイメージする人が多いと思いますが、中には毎年定額を受け取る年金タイプの退職金を支給する企業もあります。

厚生労働省の調査によると、退職金制度の形態として「退職金一時金のみ」は73.3%、「年金のみ」が8.6%、「一時金と年金を併用」が18.1%と、年金制度を併用している企業が2割近くあることがわかります。

退職年金の主流は「確定拠出年金」

退職年金を導入している企業では、「企業型確定拠出年金」を利用している企業が最も多く47.6%、次いで「確定給付企業年金」が43.3%です。これらの企業年金制度は、条件が合致すれば転職先の企業年金制度や個人で加入する「個人型確定拠出年金(iDeCo)」などに年金資産を移すこともでき、使い勝手がよいことも特徴です。

社外で退職金を準備する退職金共済

退職金の準備形態は、企業規模によって大きく異なります。従業員数の多い企業では社内準備が一般的ですが、従業員数が少ない企業ほど外部利用率が上がります。

<退職金準備形態>

社内準備 中小企業退職金共済制度 特定退職金共済制度 その他
1,000人~ 91.4% 0.5% 2.6% 8.9%
300~999人 81.6% 15.1% 9.0% 7.6%
100~299人 67.9% 36.5% 9.5% 9.7%
30~99人 49.8% 50.8% 12.7% 11.1%

※複数回答

-退職金共済制度とは

「中小企業退職金共済」は、社内で退職金を準備することが難しい企業でも外部で積み立てることで、確実に退職金を準備できる仕組みです。退職金額は、積立金額と期間によって決まります。

「特定業種退職金共済」は建設業、清酒製造業、林業などに向けた制度で、「退職するとき」ではなく「その業界で働くことを辞めたとき」に支払われます。

退職金が支払われるタイミング

退職金の支払い方法や支払い時期は、企業によって異なります。一般的に社内で準備するものは退職後数ヵ月以内に支払われますが、外部で準備するものは時間がかかる傾向があります。

例えば企業型確定拠出年金は、原則60歳以降でないと受け取ることができません。他の企業年金やiDeCoに資産を移して運用を続けながら、受給開始年齢を待つことになります。

退職金共済は、退職後に従業員自身が請求手続きを行います。支払われた退職金は、企業を通さず直接受け取ることができますが、多少のタイムラグは我慢しなければならないでしょう。

退職金にかかる税金の計算

退職金にも税金がかかります。中でも、一時金で受け取るものは税額が大きくなるため注意が必要です。

退職金を受け取る前に「退職所得の受給に関する申告書」を退職する企業に提出すると、課税金額を減らして税負担を軽減するための「退職所得控除」が適用されます。また源泉徴収も行われるため、原則として確定申告をする必要がなくなります。

-課税額の計算式

退職金の課税額は「(退職金額-退職控除額)×1/2」で算出します。退職控除額は、勤続年数によって異なります。

<退職所得控除額>

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

-手取額の計算例 

勤続30年で退職金2,500万円を受け取った場合の退職控除額を計算してみましょう。

①退職所得控除額:800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円

この場合、退職金が1,500万円以下ならば課税されません。1,500万円を超えた部分について、さらに計算を進めます。

②課税退職所得金額:(2,500万円-1,500万円)×1/2=500万円

この500万円が、課税対象です。税率はそのときの課税所得金額によって異なり、500万円の場合は「課税所得額×20%-42万7,500円」です。

③所得税額:500万円×20%-42万7,500円=57万2,500円

この他に「復興特別所得税」や「住民税」がかかります。

復興特別所得税の目安は、源泉徴収すべき所得税の2.1%相当(1円未満端数切り捨て)とされています。

④復興特別所得税額:57万2,500円×2.1%=1万2,022円

住民税については、居住地域によって税率が異なります。目安としては、課税所得金額に対しておよそ10%と考えるといいでしょう。

⑤住民税額:500万円×10%=50万円

この「③所得税」「④復興特別所得税」「⑤住民税」を合計すると次の通りです。

【税金合計額】57万2,500円+1万2,022円+50万円=108万4,522円

つまり、退職金額が2,500万円の場合、手取り額は2,400万円弱になるわけです。

ただし、税金は、年度ごとに計算をします。そのため、退職所得以外にも通常の給与やその他収入があった場合は税率が変わる可能性もある点に注意が必要です。

退職金制度がなくても、違法ではない

ところで、自分の勤め先に退職金制度があるかどうかご存じでしょうか。実は、企業には退職金制度を設ける義務がありません。

労働基準法には「退職金制度を必ず設けること」という定めはなく、制度の有無については各企業に任されています。ただし、退職金制度を設けた後で廃止や変更を行う場合は、就業規則の改訂や労働者との合意が必要です。

退職金制度を設けている企業の割合

厚生労働省の調査によると、退職金制度を設けている企業の割合は80.5%です。

従業員数1,000人以上の会社では92.3%ですが、30~99人の会社では77.6%と、従業員数が少ない企業ほど退職金制度がないことがわかります。「勤めていれば、退職金がもらえる」のは、当たり前ではないのです。

<退職給付(一時金・年金)制度がある企業(企業規模別)>

1,000人~ 92.3%
300~999人 91.8%
100~299人 84.9%
30~99人 77.6%

-退職金制度の有無は業種でも異なる

退職金制度の有無を業種別に見ると、業種間で大きな差があることがわかります。「複合サービス事業」では96.1%の企業が退職金制度を設けていますが、「宿泊業、飲食サービス業」では59.7%と大きな開きがあります。

<退職給付(一時金・年金)制度がある企業(業種別)>

複合サービス事業 96.1%
鉱業、採石業、砂利採取業 92.3%
電気・ガス・熱供給・水道業 92.2%
金融業、保険業 88.6%
製造業 88.4%
建設業 87.5%
医療、福祉 87.3%
学術研究、専門・技術サービス業 86.8%
教育、学習支援業 86.5%
情報通信業 86.1%
不動産業、物品賃貸業 81.5%
卸売業、小売業 78.1%
運輸業、郵便業 71.3%
サービス業(他に分類されないもの) 68.6%
生活関連サービス業、娯楽業 65.3%
宿泊業、飲食サービス業 59.7%

-退職金制度の有無を確認する方法

退職金制度の有無は、就業規則で確認できます。就業規則には、退職金適用者の範囲や支給条件、計算基準などを記載することが定められているため、目安を知ることができるでしょう。

就業規則の配布や保管の方法は企業によって異なるため、それぞれの勤め先に問い合わせてください。

退職金制度の有無を早めに確認することが大切

求人情報における退職金制度についての表記は任意であるため、入社前から退職金の有無を知っている人は少ないでしょう。しかし、「退職金はもらえるもの」と思っていたのに制度そのものがなかったとしたら、人生の資金計画にも影響が出ます。退職金制度がないことがわかった場合は、早めの資産運用が必要となってくるでしょう。また、退職金制度があることがわかった場合でも、退職金の相場を知ることで将来のために追加で備えるべき老後資金がいくらになるのか知り、準備することができます。

まずは、退職金制度の有無を確認することが先決です。就業規則の閲覧は従業員として当然の権利ですから、まずは担当部署に問い合わせてみましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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