新型コロナワクチンの開発・接種状況はワクチン銘柄だけでなく、さまざまなセクターに大きな影響を与えています。市場は期待感で変動するため、ワクチンに関するポジティブなニュースが流れると経済回復への期待感が高まり、株価が上昇します。
今回は最新のワクチン開発・普及状況とともに、ワクチンの普及によって2021年に急回復が期待されているセクターを予想します。
2月のワクチン開発・実用化動向
2021年3月1日現在、米ファイザー・独バイオンテック、米モデルナ、英アストラゼネカのワクチンが多くの国で実用化されています。それを追うように、次々と新たなワクチンが実用化に向けて開発されています。
2月に入り、1回の投与で72%の有効性が期待できる米ジョンソン・エンド・ジョンソンのウイルスベクターワクチンが米国やバーレーンで緊急使用の承認を受けたほか、ロシア科学アカデミー、チュマコフセンターが開発した不活化コロナウイルスワクチンが、ロシアで早期使用の承認を得ました。
また、中国のシンセン・カンタイ・バイオロジカル・プロダクツ、仏サノフィのワクチン開発が、安全性および免疫原性のチェック段階であるフェーズ2(フェース3が最終段階)に移行しています。
ブルームバーグのデータによると、現在最もワクチン接種が進んでいるのはイスラエルで、100人中88.47人が1~2回のワクチンを接種しています。次いで、東アフリカのセーシェル(78.23%)、アラブ首長国連邦(56.01%)、英国(31.27%)、モルディブ(29.95%)と続きます。一方で、ワクチン接種を開始したばかりの日本は0.02%。ギニアやアルジェリア、エジプトのように接種率が0%の国もあります。
急回復が期待されている3つのセクター
コロナの影響で経済の低迷が長引く中、一部のセクターでは回復の兆しが見えています。以下の3つのセクターは、ワクチンの普及とともに急回復が期待されています。
1 航空・観光産業
世界の航空産業は、厳しい入国規制や隔離措置で深刻な打撃を受けています。国際民間航空機関(ICAO)の発表によると、2020年の世界の航空産業の経済的損失は約3,700億(約39兆5,442億円)ドル。観光産業の経済的損失は、1兆3,000億ドル(約138兆 9,317億円)と推定されています。
ICAOは世界各国でワクチン接種が順調に進んでコロナが収束に向かった場合、2021年6月までに乗客数は2019年の水準の71%(国際線53%、国内線84%)に回復すると予想しています。ただし専門家の間では、人の移動は国内を中心に復活するとの見方が強く、観光産業の本格的な回復は2023年以降になりそうです。
このような経済活動再開への期待感から、アメリカン航空グループやユナイテッド航空ホールディングスなど一部の航空銘柄は、回復基調に転じています。
2 石油産業
新型コロナの感染拡大以降、ロックダウンや外出自粛から石油の需要は著しく低下しています。国際エネルギー機関(IEA)は2021年2月に発表したレポートの中で、依然として移動や経済活動が制限されていることを理由に、「需給バランスの脆弱姓」を指摘しました。しかし、経済の回復とともに2021年下半期には需要が拡大し、日量9,640万バレルに回復するとのポジティブな見通しも示しています。
一方、米国エネルギー情報局(EIA)は、2021年と2022年のブレントおよびウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の石油価格予測を引き上げました。ブレントは2021年の平均が53.20ドル、2022年55.19ドル、WTIのスポット価格は2021年の平均が50.21ドル、2022年51.56ドルと予測しています。
3 商業用不動産
2020年は感染症対策として、リモートワークを導入する企業や、一時休業する店舗が世界中で増えました。これにより大きな打撃を受けていた商業用不動産ですが、ワクチン接種の拡大とともに回復が見え始めています。
リモートワークを定着させ、オフィス業務を縮小する企業が増えている一方で、オフィス勤務の再開を急ぐ企業も少なくありません。全米産業審議会の調査では、リモートワークを一時的に実施している雇用主の約40%が、早ければ3月には従業員をオフィスに復帰させる意向を示しています。
商業用不動産銘柄は、ワクチンの実用化の目途が立った2020年11月頃から回復の兆しを見せています。
日本でも、12月には事業用不動産のテナント物件の問い合わせ数が前年比170%増と大きく伸びていることが、テナントショップのデータから明らかになっています。
しかしながらパンデミックはいまだ収束しておらず、ワクチン接種の状況も国によって大きな差があります。変異種拡大への懸念もあり、まだ油断できない状況です。景気や特定のセクターの急回復を期待するのは時期尚早と考えて、中長期的な視点で投資戦略を立てましょう。
※上記は参考情報であり、特定のファンド/銘柄売買を推奨するものではありません。