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目次
新型コロナウイルスのワクチン、米大統領選挙、ブレグジット交渉などの見通し
〔要旨〕
●新型ウイルスのワクチン開発、米国大統領選挙など、多くの問題における見通しが改善
●不確実性の後退は、金融市場への追い風となるだろう
5つの問題で不確実性が後退
①新型コロナウイルスのワクチン、②米大統領選挙、③ブレグジット交渉、④税制改革、⑤米国の外交政策—で不確実性が後退
いくつかの問題では不確実性が残る
欧米での感染者数の急増、米国の財政刺激策の議会通過の可能性などは懸念材料。ただし、全体としては、先行きがより見通せる状況に向かっている
多くのトピックで不確実性が後退
英国の哲学者バートランド・ラッセルは、「人が欲するものは、知識ではなく確実性だ」との名言を残しました。私はここ数週間、彼の言葉を考えてきました。特に、現在のような不確実性が高い時期において私たちが前に進むためには、知識より確実性が大切かもしれません。
金融市場でも、同様に、確実性が求められます。幸いなことに、多くの問題において、現在は数週間前よりも不確実性が大きく後退しています。
1. 新型コロナウイルスのワクチン
新型ウイルスワクチンの治験で90%を超える有効性を確認
2021年に供給可能なワクチンの開発に向けて、有意義な進展が見られています。米大手製薬会社ファイザーは前週、新型コロナウイルスワクチンにおける臨床試験で、90%を超える有効性が確認されたと発表しました。そして16日、米製薬会社のモデルナは、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて94.5%の有効があるとする暫定的な結果を発表しました。広範な供給には多くの段階が残っていますが、これらは大きな進展であり、今回挙げる5つのトピックにおいて最も重要です。私は、2021年にはワクチンが広く供給されることを期待しています。それは、2020年初より、世界が切望している正常な生活に戻るきっかけとなるはずです。
2. 米大統領選挙
バイデン氏の勝利がほぼ確定
ようやく、2020年の米国大統領選挙の勝者が決まりました。11月に入り、投資家が最も恐れたことは、大統領選で裁判が起こされ、米国が混乱に陥ることでした。一部の州では投票の有効性に関する訴訟が起こりましたが、勝者が変わる可能性は非常に低いと考えられ、選挙に関わる大きな不確実性は排除されました。
3. ブレグジット(英国の欧州連合(EU)からの離脱)交渉
交渉決裂は回避されると見込む
「ブレグジット交渉の決裂」の可能性は低下しているようです。最近の交渉では大きな進展が見られており、バイデン次期米国政権からの圧力と英国首相の上級顧問であるカミングス氏の突然の辞任の発表により、交渉はさらに進むと思われます。カミングス氏はブレグジットを強力に推進していましたが、彼の辞任により、ジョンソン首相は、交渉に対してより現実的なアプローチを採ることができます。EU大使級会合の開催が11月18日に予定されており、そこで大きな進展が見られる可能性があるとみています。
4. 税制改革
バイデン氏の増税・税制改革は回避される見込み
2021年の米国の増税の可能性は非常に低いでしょう。多くの企業は、バイデン政権下での法人税の引き上げを懸念していました。大統領選挙活動中、バイデン氏は、自身の財政支出の計画を賄うため、法人税、年収40万米ドル以上の世帯の所得税、年収100万米ドル以上の世帯のキャピタルゲイン税などへの増税を政策として掲げていました。しかし、議会選挙の結果、上院で共和党が過半数を維持し増税案は阻止されると考えられることから、バイデン氏の税制改革が実現する見通しは非常に低いと考えられます。投資家が11月に大統領選において訴訟の可能性の次に懸念していたのは、税率の引き上げにつながる米大統領選挙・議会選挙での「民主党の圧勝」だったため、増税の可能性の後退は、投資家にとって朗報となるでしょう。
5. 米国の外交政策
米国の外交政策は伝統的な方法に回帰するだろう
2021年は、貿易政策を含む米国の外交政策が、より伝統的な方法に戻ると予想しています。バイデン次期大統領は、米国のパリ協定や世界保健機関(WHO)への復帰の意向を表明していますが、最も重要なことは、貿易政策の大きな転換でしょう。バイデン氏は関税の幅広い引き上げには反対しており、貿易紛争については特定の貿易問題に着目した中国との交渉に移行すると考えます。これにより、貿易政策の先行きは見通しやすくなるでしょう。
ただし、いくつかの問題で不確実性は残る
欧米では感染者数が急速に増加しており、経済活動が再び制限される可能性も浮上
一方で、不確実性はまだ残っています。最大の不確実性の1つは、ユーロ圏、米国および新興国の一部で急速に増加している新型コロナウイルスの感染者数です。ユーロ圏では最近、感染者数の増加が落ち着いてきているようですが、その傾向が続くかを判断するには時期尚早です。そして、米国が感染の波を制御できるかは定かではなく、状況がさらに悪化する可能性もあります。また、政府の指導者や一般市民がどのように反応するかも不透明です。前週、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が述べたように、「記録的な数の新規感染者により、多くの州で活動の制限が再び課され、人々が安心して外出できなくなる 1 」可能性があります。しかし、この不確実性は、トンネルの終わりに見える明かり、つまりワクチンの存在によって緩和されるはずです。
2021年の財政刺激策の議会通過の可能性は残るものの、その規模は縮小する見込み
不確実性を高めるもう1つの要因は、米国の財政刺激策です。トランプ大統領は13日の記者会見で、大規模な財政刺激策の議会通過を求めましたが、政権交代により、前回の財政出動の実現で重要な役割を果たしていたムニューシン財務長官が交渉の場から離れることを考えると、年末までに追加の財政出動が成立する可能性は低い見込みです。バイデン次期大統領が数人の穏健派の共和党員からの同意を得ることにより、財政刺激策が実現する可能性は十分にありますが、その規模は1.5兆米ドル程度と見込まれます(2020年春に可決されたCARES法は2.2兆米ドルと、より大規模でした)。
先行きがより見通せることで、企業は設備投資を増やし、金融市場を支えるだろう
しかし、全体として、現状は不確実性が後退し、先行きがより明確になっている状況です。経済において確実性が高まるとは何を意味するのでしょうか?それは、企業と消費者の自信の高まりを意味します。先行きがより見通せるようになれば、企業は設備投資を増やすと考えられます。よって、新型コロナウイルスの感染者数が増加したとしても、私たちは未来に希望を持つことができるでしょう。
そして、これが市場に意味するものは何でしょうか?先が見渡せることで、株価はより明確になった未来を折り込みにいくでしょう。要するに、不確実性の後退は重要な意味をもつのです。
1.出所:ロイター、“U.S. data suggests economic recovery may be weakening”、2020年11月12日。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2020-173