〔要旨〕
- 市場のドライバー:市場は、短期的なナラティブ(市場ストーリー)と基礎的ファンダメンタルズの絶え間ない相互作用によって影響を受ける
- 人工知能(AI):AIをめぐって感情的な動きが高まっているが、決算データやアナリストの利益予想は大幅に悪化していない
- 米国外株式:新興国、日本、欧州では、ナラティブの改善と構造的ファンダメンタルズの強化が進んでいる
AIをめぐる市場の反応には感情が影響している
米国外株式については、ナラティブとファンダメンタルズが改善
イラン情勢はどのように展開し得るか?
注目の日程
市場は、短期的なナラティブ(市場ストーリー)と、長期的な結果を左右する基礎的ファンダメンタルズとの絶え間ない相互作用によって影響を受けます。これらのナラティブが、何年にもわたって市場リターンを形作る真の構造的な追い風または逆風へと定着する場合もあれば、注目が別のものへと移り変わり、ファンダメンタルズが再び前面に出るにつれてナラティブが薄れてゆき、一時的なものにとどまる場合もあります。
現在市場では、ナラティブに対する過剰反応と、一部領域におけるナラティブと構造的動向との明確な一致の両方の兆候が見られます。長期の投資家が報われる可能性があるのは、後者に関連してです。感情的な部分が大きい前者については、投資家は慎重になる必要があるかもしれません。
AIをめぐる市場の反応には感情が影響している
最近の特定銘柄・セクター・国別株価指数の激しい値動きは、AIの進展によって事業の最終価値(ターミナル・バリュー)が毀損される、あるいは破壊される可能性を、投資家がどう織り込むべきか格闘していることを反映しています1。 多くのソフトウェアやテクノロジー銘柄が深刻な打撃を受けており2、 これはAIツールがビジネスモデルを損ない、知識労働者を代替するというストーリーに対する反応だと報じられています。とはいえ、こうした懸念に根拠がないと言いたいわけでも、一部の結論が最終的に正しくないことが判明するだろうと言いたいわけでもありません。そうではなく、これらのナラティブに内在する不確実性を認識し、これらを確固たる予測として扱うことに抗う必要があるということです。
感情が影響するのは、理解できます。変化のスピードは並外れており、多くの人にとって極めて個人的な問題でもあります。知識労働者として(そして我々執筆者のうち一人は、ティーンエイジャーの親として)、これが感情的になりやすいテーマであることは認識しています。しかし、決算データ、さらにはアナリストの利益予想でさえ、大幅には悪化していません。先週水曜日、エヌビディアは第4四半期決算シーズンを好調な結果で締めくくり、データセンター、チップ、関連インフラへの需要が依然として堅調であることを改めて示しました。それにもかかわらず、エヌビディア株は翌日に下落しました3。
米国外株式については、ナラティブとファンダメンタルズが改善
経済学者ジョン・メイナード・ケインズの言葉が示すように、「市場は、あなたの資金が尽きるよりも長く、非合理的であり続けることがあります」。英雄になろうとしても得るものはほとんどありません。私たちは、いま米国外の地域により高い確信を持っています。新興国、日本、さらには欧州さえもが、際立っていると考えています。これらの地域では、ナラティブが改善し、構造的ファンダメンタルズが強まっており、また重要な点として、バリュエーションの過熱が相対的に小さく、ポジショニングの混雑もはるかに少ない状態にあります4。
日本株は引き続き力強いパフォーマンスを示しています5。短期のナラティブでは、強力な多数派を有する新政権による政策的支援の拡大に焦点が当てられています。より重要なのは、構造的な投資根拠が依然として説得力を持つ点です。企業統治改革と株主還元、特に株式リターンは6、安倍晋三元首相が改革アジェンダを打ち出して以降、改善してきました7。国内外の投資家による参加も、引き続き増えています。
新興国について私たちは、ボラティリティが高いとはいえ、長らく説得力のある成長ナラティブを伴ってきたと考えています。現在、米ドル安や企業統治の改善といった主要な構造要因が相まって8、追加的な下支えとなりつつあります。新興国の中で、パフォーマンスを主導している国は明確です。新興国株は先週もアウトパフォーマンスを継続しましたが、中でも韓国が際立っていました9。韓国総合株価指数(KOSPI)は2025年に75%以上上昇し、今年に入って最初の2カ月でさらに50%近く上昇しています10。韓国は今や、世界で9番目に大きい株式市場となっています11。
韓国株は、半導体とメモリ需要の持続的なブームに支えられてきました。現時点で、明らかな懸念材料はほとんど見られません。輸出の伸びが依然強く12、国内インフレが安定していることは、韓国銀行が政策金利を当面据え置くことが可能であることを示唆しています。
市場はナラティブに左右されます。私たちの仕事は、ナラティブと事実が最も収れんしていると確信できる領域を見極めることです。その観点から見ると、私たちがここ数カ月にわたり伝えてきたストーリーは、依然として有効です。私たちは、新興国、日本、欧州を含む米国外の市場が、引き続き投資家に利益をもたらす可能性があると考えています。
イラン情勢はどのように展開し得るか?
まだ2カ月しか経っていないにもかかわらず、2026年は既に多くの紆余曲折がありました。米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃で、最高指導者であったハメネイ師が死亡しました。この先の展開は現時点では極めて不透明ですが、歴史的に見れば、こうした地政学的ショックや急展開は当初、株式を含むリスク資産にとってマイナスとなり得ることが示唆されています。しかし中期的には、地政学的リスクがピークを付けた後、市場は反発する傾向にあることから、投資を継続することが最善の対応となり得ると私たちは考えています。
注目の日程
| 公表日 | 国・地域 | 指標等 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 3月2日 | 米国 | 購買担当者景気指数(PMI)製造業(2月、確報値) | 製造業の業況 |
| 3月2日 | 米国 | ISM製造業調査(2月) | 産業の健全性 |
| 3月2日 | 日本 | 失業率(1月) | 労働市場 |
| 3月2日 | 英国 | ネーションワイド住宅価格指数(2月) | 住宅の動向 |
| 3月3日 | 米国 | 国内自動車販売(2月) | 消費需要 |
| 3月3日 | ユーロ圏 | CPI(2月) | インフレ指標 |
| 3月4日 | 米国 | ADP雇用統計(2月) | 労働指標 |
| 3月4日 | 米国 | ISM非製造業総合指数(2月) | サービス業の業況 |
| 3月4日 | ユーロ圏 | 失業率(1月) | 労働市場の状況 |
| 3月5日 | 米国 | 貿易価格指数(1月) | 貿易価格 |
| 3月5日 | ユーロ圏 | 小売売上高(1月) | 消費活動 |
| 3月6日 | 米国 | 雇用統計(2月) | 主要労働データ |
| 3月6日 | ユーロ圏 | 国内総生産(GDP)(第4四半期) | 経済成長 |
- 1.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、S&P 500のエネルギーセクター(+23.16%)および情報技術セクター(-3.41%)、韓国総合株価指数(KOSPI)(+46.42%)、日経平均株価(+13.41%)、S&P 500ソフトウェア産業(GICSレベル3)指数(-17.55%)の年初来リターンに基づく
- 2.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、S&P 500ソフトウェア産業(GICSレベル3)指数の年初来リターン(-17.55%)に基づく
- 3.出所:CNBC、”Nvidia’s blowout earnings report disappoints Wall Street as stock sinks 5%”、2026年2月26日
- 4.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、MSCIオール・カントリー・ワールド指数(米国を除く)構成企業の利益成長率および株価収益率(PER)とS&P 500種指数構成企業の利益成長率および株価収益率(PER)の比較に基づく
- 5.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、日経平均株価の年初来リターン(+13.41%)に基づく
- 6.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、日経平均株価の構成企業の年初来リターン(+16.79%)に基づく
- 7.出所:IPE、”Corporate reform underpins Japan’s record equity run”、2026年2月10日
- 8.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、貿易加重通貨バスケットに対する米ドルの価値を測定する、米ドル指数に基づく
- 9.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、MSCIエマージング・マーケット指数およびS&P 500種指数に基づく(2026年2月26日までの4日間のリターンはそれぞれ+3.36%、0.00%)
- 10.出所:ブルームバーグL.P.、2026年2月26日、韓国総合株価指数(KOSPI)の年初来リターン(+46.42%)に基づく
- 11.出所:韓国産業通商資源部、2026年1月31日
- 12.出所:ブルームバーグL.P.、韓国の一般的なブレークイーブン・レート(名目国債とそれに最も近い満期の物価連動債の利回り差)に基づく
ブライアン ・レヴィット
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
ベンジャミン ・ジョーンズ
ヘッド・オブ・グローバル・リサーチ
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MC2026-029