2020年4月から、東京都や奈良県など複数の自治体で自転車保険への加入が義務付けられました。自転車の利用者や自転車に乗る子どもを持つ保護者が対象です。具体的にどのような保険に入っていればいいのかを解説しますので、加入を検討している人は参考にしてください。
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自転車保険への加入を義務付ける自治体は増えている
2020年4月1日時点で自転車事故に対応する保険への加入を義務付けている自治体は15都府県と8市にのぼります。東京都や神奈川県、大阪府、仙台市、福岡市など、大都市圏が中心です。努力義務としているところを含めると、合計36ヵ所が同様の条例を施行しています。
現在暮らしている自治体で加入義務がなくても、上記の自治体に引っ越すことがあるかもしれません。自身や子どもの身を守るうえでも、自転車事故と保険に関する知識を持っておいたほうがよいでしょう。
自転車保険への加入は以前から促進されてきました。その理由は、自転車事故による高額賠償事例がたびたび発生しているためです。例えば、小学生の乗った自転車が高齢者にぶつかりケガをさせた事故で、裁判所は加害者である児童の保護者に9,520万円の支払いを命じました。その他にも数千万円以上の賠償金を求める事故が複数発生しています。
このような高額賠償に問題なく対応できる人はほとんどいないでしょう。被害者にとっても取り返しのつかない損害であることは、賠償額の高額さからうかがえます。自転車は日常的に利用する乗り物で、いつ事故の当事者になるかわかりません。加害者と被害者のどちらにもなりうることを想定して備えておく必要があります。
加入義務となった「個人賠償責任保険」とは
多くの自治体で義務づけられている「自転車保険」は、加害者になったときの賠償責任に対して補償される保険です。該当する一般的な保険商品としては個人賠償責任保険があります。日常生活で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしたときに発生する損害賠償責任に備える保険です。
商品の破損や飼い犬の噛み付きなど広範囲をカバー
補償の対象となる事故は自転車に乗っているときに限りません。買い物中に商品を壊してしまった、キャッチボールをしているときに通行人に当てて転倒・骨折させてしまった、飼っている犬が噛み付いてケガをさせてしまった、などの場面が挙げられます。実際の補償内容は保険の約款やしおりを確認する必要がありますが、日常生活で発生する賠償責任のほとんどに対応しています。
月額約100円で、補償額は1億円程度
特徴は低い保険料で高額な補償が受けられることです。取り扱っている会社や保険商品の内容にもよりますが、保険料は月額100〜150円程度、補償額の相場は1億円です。賠償額が1億円近くにのぼる事例があることを考えると、補償額3億円や無制限といったタイプでも決して多過ぎるとはいえません。
補償額と保険料の関係を見ると、生命保険や火災保険と比べて非常に割安に思えるかもしれません。その理由は、個人賠償責任保険が利用されるケースは滅多にないからです。だからといって加入が無駄かというと、そんなことはありません。上記の事例からわかるように、発生したときに多大なインパクトを持っているのが賠償責任です。
基本的に個人賠償責任保険は、世帯のうち1人でも加入すれば家族全員が補償を受けられます。年間2,000円以下で家族の生活を守れるなら、とても安い金額といえるのではないでしょうか。
どんな保険に加入する?取り扱っている会社は?
個人賠償責任保険は単独でも加入できますが、自動車保険や火災保険などの特約として付けるのが一般的です。最近ではクレジットカードに付帯されていることもあります。新規加入を検討している人は重複がないか確認してください。
被害者となったときに備える保険には、傷害保険があります。自分がケガをしたときに入院費や治療費などを補填してくれる保険です。条例で義務付けられているわけではありませんが、万が一事故にあったとき、迅速かつ確実に補償を受けられます。
傷害保険の加入方法も個人賠償責任保険と同様、単独で加入したり、生命保険や自動車保険などの特約として付帯したりします。また、自転車搭乗時の賠償責任保険とセットになった商品もあります。
自転車保険や個人賠償責任保険を販売しているのは保険会社だけではありません。銀行や携帯電話キャリアなどが取り扱っていることもあります。保険商品としての内容にほとんど差はありません。いちばん手軽な方法で加入するとよいでしょう。
個人賠償責任保険に加入しているか今一度確認を
自転車事故による高額賠償事例が相次いだことを背景に、多くの自治体が個人賠償責任保険への加入を義務付けています。火災保険や自動車保険の特約としてすでに付帯されているかもしれないので、一度確認してみましょう。自転車保険は、月額100円程度で単独でも加入できます。
万一の大きな損害に対処するのが保険の役割です。上手に活用して、資産の保全と安心を手に入れましょう。