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(画像=sommart sombutwanitkul/Shutterstock.com)

医療と食生活をトータルで考える 病食宅配サービスの未来

バランスのとれた献立に必要な食材や調理済みの食品が、必要な分だけ自宅に届く、ミール(料理)キット宅配サービス。将来的な市場拡大が期待されている米国では、「テクノロジー×医療×フード」をコンセプトに、医療と食生活をトータルでケアする病食宅配サービスが注目されています。

栄養士が考えた献立で安心の病食宅配サービス

日本でも利用者が年々増加傾向にあるミールキット宅配サービスは、買い物や献立を考える時間が短縮され、食材の無駄を防ぐため、ビジネスパーソンや育児で忙しい主婦、外出が困難な高齢者、時間をかけずに家庭料理を楽しみたいという単身者などに人気です。

近年は有機野菜などこだわりの原材料を使ったものや、保存料・着色料不使用のものもあり、健康志向の人や生活習慣病が気になる人の間でも注目されています。

ミールキットのメニューを、糖尿病や肝臓病など食事療法が必要な人向けにアレンジしたものが「病食宅配サービスです。利用者の症状に合わせて糖分、塩分、カロリー、タンパク質などを制限することができます。食事療法には厳密な栄養計算が必須ですが、病食宅配サービスならば栄養士による献立から好みの物を選べるので手軽で便利です。

人口の1割以上が糖尿病の米国で注目される病食

ミールキット大国の米国では、「食は健康維持の基本」という既存の概念が、「食生活は治療・予防の一環」という新たな概念へと広がりつつあります。こうした概念とテクノロジーを融合させた病食宅配サービスが注目されており、特に米国の10大死亡原因の一つである糖尿病用の食材やミールキットの需要が拡大しています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告書によると、米国の成人(18歳以上)の糖尿病患者数は2008年をピークに減少傾向にあるものの、2018年は同国の人口の13%に相当する3,410万人が糖尿病と推定されています。発症率は年齢と共に高くなり、65歳以上では26.8%に及びます。

糖尿病の治療および予防は、食事療法が重要なカギを握っています。食事から体内に摂取するブドウ糖の量を制限することで、悪化しにくいあるいは発症しにくい体質を作ることができます。

ドイツの統計サイトStatista は、生鮮食品のミールキット宅配サービス市場規模(米国)が、2016年から2017年にわたり300%という凄まじい速度で成長し、2022年には116億ドルに成長すると予想しています。

糖尿病食のイメージを一新するコラボレーション

生活習慣病と言われる2型糖尿病の改善・予防に特化した減量プログラムを提供する米Fruit Street社は、「テクノロジー×医療×フード」の領域を強化する目的で、新たに米ヴィーガン・ミールキットブランドPurple Carrot と提携。登録栄養士お墨付きのヘルシーな献立の食材を、簡単に入手出来る環境をユーザーに提供しています。

Fruit Streetのユーザーはインターネットやアプリから、専属の栄養士がコーチを務めるビデオチャットクラスに参加し、健康的な食生活の基本ルールからストレス管理まで、様々なウェルネス関連の知識を深めることができるほか、自分の食事を撮影して栄養士に送信して、適切なアドバイスを受けられます。

また、FitbitやApple Healthといったウェアラブルデバイスやフィットネスアプリとも同期化して、健康状態を記録・分析できるほか、ユーザー同士のコミュニケーションを通して、お互いのモチベーションを高めることができるなど、健康管理や食事療法が楽しくなる工夫が凝らされています。

Purple Carrot は2019年10月、食材宅配サービス「Oisix」を運営するオイシックス・ラ・大地株式会社と提携するなど、日本でも知名度が高まっているブランドです。病食というと味気のないメニューを想像してしまいますが、同社のヴィーガンメニューは、味も見た目も既存の病食のイメージを180度変えるクオリティーの高さが高評価を得ています。

ヘルステックの未来はトータルケア?

Fruit StreetとPurple Carrotのコラボレーションは、ヘルステックの未来を切り開く一例かもしれません。

ヘルステック業界では、既にiPhoneやiPad、Apple Watchを医療業務の効率化や医療記録・データへのアクセス、医療関係者と患者間のコミュニケーションに活用したり、米Empatica社が開発したてんかん患者用のウェアラブル・ブレスレットから収集したデータを、医師と共有したりすることで発作の予測に役立てるといった動きが見られます。

将来的には病院と患者、ヘルスケアアプリ、宅配サービスなどを一括して管理するプラットフォームが開発され、医者による診断やアプリから収集した最新データを元に、食材宅配サービス会社が患者の症状に合わせた献立を宅配することも可能になるのではないでしょうか。

またこのようなサービスが増えることにより、「医療とともに、食事や睡眠を含む生活を総合的にケアする」という概念が、今後ますます広がるものと予想されます。

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