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(画像=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)

新型コロナで注目される「パンデミック保険」とは?

新型コロナウイルスの影響で、世界的な感染病による損害を補償する「パンデミック保険」への注目が高まっています。

今回、パンデミック保険の恩恵を受けられる企業は、ほんの一握りだと言われており、パンデミックの再来に備え、将来的な補償の可能性を模索する企業が増えています。

パンデミックは利益保険の補償外?

多くの企業は、事故や災害などにより通常の事業活動が不可能になった場合に備え、逸失利益やビジネス復興の費用を補償してくれる「利益保険」に加入しています。

しかし一般的な利益保険では、感染病による損害は補償対象外であり、追加オプションで補償されている場合も、今回のような世界規模の感染症は対象外になる可能性が指摘されています。

英国保険会社協会のヒュー・エヴァンス事務局長など一部の保険関係者いわく、感染病に対する補償は、あくまで組織内部で生じた比較的小規模の損害を対象とするためです。例えば、レストラン内で食中毒が発生した、あるいは従業員間でノロウィルスが流行したといった理由で休業した場合、その間の損失などが補償されるという仕組みです。

このような背景から、「感染病による損害は利益保険の補償対象外」という保険会社の主張と、「(いかなる理由があろうとも)ビジネス中断の補償のために、高額な掛け金を支払ってきた」とする企業側の主張が、真っ向から対立しています。

注目度が高まる一方提供企業は少ない

利益保険や追加オプションの盲点が明るみに出るにつれ、パンデミックに特化した保険が存在感を増しています。

カナダの保険会社マーシュ(Marsh)は、パンデミック保険を提供している数少ない保険会社の一つです。同社は2018年、独保険サービス大手のミュンヘン再保険会社による契約査定の元、米国とアジア圏の企業を対象とするパンデミック保険、「PathogenRX 」の発売を開始しました。

パンデミックによる損害をカバーする保険会社が少ないのは、保険会社にとっても加入者(企業)にとっても、正確な被害規模の予想が困難なためです。自然災害や事故などとは異なり、パンデミックやエピデミック(特定のエリアおよび集団で症例数が増加している状態)の経済的損害が表面化するまでには一定の時間を要し、リスクが定量化しにくいという難点があります。

「PathogenRX 」はデータアナリティクスを提供する米メタバイオータ(Metabiota)社と提携し、感染症に関するデータベースに基づき、パンデミックとエピデミックによるリスクのモデル化・予想を実現しています。同社はこの革新的な商品で、「ビジネス保険イノベーションアワード」を受賞しています。

高い掛け金を払う価値はある?

保険の掛け金は加入条件によって異なりますが、補償額が大きくなると推測される保険商品ほど掛け金は高額です。パンデミックの頻度が災害や事故と比べて少ない点を考慮すると、「高額な掛け金を払う価値があるのか」という疑問が浮上します。

20年間近くにわたりパンデミック保険をかけていた、テニスの4大国際大会「ウィンブルドン選手権」を例に見てみましょう。

2020年6月下旬から7月上旬にかけて開催が予定されていた、「ウィンブルドン選手権2020」の中止による損害は、約2億5000万ポンドと推定されています。これに対し保険会社から支払われる補償額は推定1億1400万ポンドと、米スポーツメディア、アクション・ネットワークは報じています。ウィンブルドンの主催団体は過去17年間にわたり、総額約2721万ポンドの掛け金を払っていたため、差し引き約1億6321万ポンドの損失という計算になります。

ビジネス、個人向けのパンデミック保険が増える?

ウィンブルドンの例では、掛け金や損害を全額カバーすることは出来ませんでしたが、「安心」を買うと同時に損害を少しでも抑えるという意味で、パンデミック保険に加入する価値を見いだす企業も多いでしょう。

実際、ミュンヘン再保険いわく、新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以来、保険会社や法人顧客から問い合わせが数百件に急増していると言います。

今後、ビジネスだけではなく、個人向けのパンデミック保険商品が市場に続々と登場するかも知れません。

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