新NISAの成長投資枠では、1年間に240万円までの金融商品を購入できます。さまざまな投資手法がある中で、240万円の一括投資は有効といえるのでしょうか。本記事では、新NISAで240万円を一括投資する効果や、損失リスクなどの注意点について解説します。
目次
積立投資などと比べて、新NISAでの一括投資はどのような点が異なるのでしょうか。以下では、成長投資枠で240万円を一括投資する3つの効果を解説します。
金融商品が値上がりしたときの利益幅は、投資金額に比例して増えます。そのため、新NISAで240万円を一括投資すると、相場状況によっては大きなリターンを期待できるかもしれません。参考として、以下では保有商品の価格が10%上がったケースを想定して、投資資金で利益幅がどれくらい変わるのかをまとめました。
投資資金 | 10%値上がりしたときのリターン |
---|---|
80万円 | 8万円 |
120万円 | 12万円 |
160万円 | 16万円 |
200万円 | 20万円 |
240万円 | 24万円 |
(※上記のリターンは、手数料や税金などを考慮しない場合)
単純計算をすると、同じ条件で投資資金を2倍増やした場合は、期待できるリターンも2倍になります。
一括投資と積立投資では、短期間で期待できるリターンにも違いがあります。
たとえば、240万円分の金融商品が1%値上がりすると、売却時には2万4,000円のリターンを得られます(※手数料などは除く)。一方で、毎月少額ずつを購入する積立投資では、数百円から数千円のリターンになることが予想されます。つまり、240万円の一括投資は値動きの影響を受けやすくなるため、数日や数週間でまとまったリターンを期待できるかもしれません。
新NISAの対象商品には、1月時点での一括投資が有利な傾向にある金融商品も含まれます。ニッセイ基礎研究所のレポート(※)によると、2000年1月から2023年11月にかけては、下記の投資対象で1月での一括投資が有利というデータが紹介されています。
・TOPIX(東証株価指数)
・S&P500(スタンダード・アンド・プアーズ500種指数)
・MSCI-ACWI(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス)
比較対象は毎月1万円の積立投資であり、いずれの投資対象でも1月一括投資が有利な結果となりました。最も資産効率が高いのはS&P500であり、年平均では7.5%の利回りを記録しています。
ただし、投資対象が下落傾向にある時期は、積立投資のほうが有利になることもあります。相場状況によって適した手法は変わるため、上記のデータはあくまで参考程度に留めてください。
(※)参考:ニッセイ基礎研究所「新NISA、「毎月投資」か「1月一括投資」か 基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.323]」
新NISAで240万円を一括投資すると、相場状況によってはリスクを抱えることもあります。どのような点に注意すればよいのか、ここからは主な対策とあわせてご紹介します。
一般的に投資のリスクとリターンは比例するため、一括投資によって期待できる利益幅を増やすと、その分だけ損失幅も拡大します。前述では1%値上がりした場合のリターンをご紹介しましたが、反対に1%値下がりをした場合は同額の損失が生じます。さらに積立投資と比べても、より早く損失を出してしまう可能性もあります。
損失によって資産が大きく減ると、もとの資産額に戻すまでには時間がかかります。損失分を無理に取り戻そうとして、さらに資産が減ってしまう状況も考えられます。一度の取引で多くの資産を失わないためには、投資対象を慎重に見定めるだけではなく、損切り(※)の基準を決めておくなどの対策が必要です。
(※)損失を抱えている状態で金融商品を売却し、損失を確定させること。
新NISAの非課税保有限度額(総枠)は最大1,800万円ですが、そのうち成長投資枠の総枠は1,200万円です。1,800万円の総枠を使い切りたい場合は、少なくとも600万円分をつみたて投資枠で購入しなければなりません。
たとえば、毎年240万円を投資すると、成長投資枠の総枠は5年間で埋まります。総枠が埋まっていると新たな金融商品を購入できないため、成長投資枠で保有している金融資産を売却して総枠を回復させる必要があります。ただし、新NISAの総枠は再利用できますが、年間の非課税投資枠は成長投資枠とつみたて投資枠どちらも翌年にならないと復活しない点には注意してください。
新NISAで240万円を一括投資すると、効率的な資産形成を期待できます。積立投資にはないリスクを抱える場合もあり、事前に許容できる損失幅を設定するなどの対策が必要です。成長投資枠の非課税保有限度額(総枠)も踏まえて、目的を達成するための運用計画を立ててみてください。
※過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。
※本記事は、2024年4月9日現在のものです。今後制度が変更になる場合もあります。